表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
お食事会、してみました。
PR
92/127

8

料理がすべて並び終わると、母さんが満足そうに手を叩いた。

「よーし!」

「みんな、席について!」

それぞれが「はーい」と返事をしながらちゃぶ台を囲む。

俺は自分の席へ。

その隣には神白さん。

反対側には黄瀬と緋乃。

神白さんの隣には夕奈が嬉しそうに座り、向かいには小紫さんと青嶌さん。

そして、ちゃぶ台の一番奥に宗一郎さん。

母さんは台所と食卓を行き来しやすいよう、出入口に一番近い席へ腰を下ろした。

少し窮屈ではあるものの、不思議と誰一人嫌な顔はしない。

「なんか修学旅行みたいだな!」

黄瀬が笑いながら辺りを見渡す。

「確かに。」

青嶌さんもくすっと笑う。

「これだけ大人数で一つのちゃぶ台を囲む機会なんて、なかなかありませんからね。」

宗一郎さんも部屋を見回し、穏やかに微笑んだ。

「とても賑やかな食卓ですね。」

その一言に母さんは照れくさそうに笑う。

「狭くて申し訳ないですけど、その分みんなの顔がよく見えるでしょう?」

「私は、こういう食卓が好きなんです。」

その言葉に、宗一郎さんは静かに頷いた。


全員が席に着いたことを確認すると、母さんは最後の料理をちゃぶ台の中央へ並べた。

湯気の立つ唐揚げ。

肉じゃが。

照りのいいハンバーグ。

色鮮やかなポテトサラダ。

そして、神白さんが気に入ってくれたマヨネーズ入りの卵焼き。

家庭料理ばかりではあるが、ちゃぶ台いっぱいに並んだ料理は思わず目を奪われるほどだった。

「おぉー!」

黄瀬が目を輝かせる。

「すげぇ!」

「こんな豪華なご飯、久しぶりに見た!」

「まだ手を出しちゃダメよ?」

母さんが笑いながら黄瀬をたしなめる。

「みんな揃ってから。」

「へへっ、すみません。」

黄瀬は照れ笑いを浮かべながら箸を置いた。

神白さんは料理を一品一品見つめ、どこか感動したように呟く。

「……すごい。」

「全部、お母様がお作りになられたんですか?」

「ええ。」

「特別な物じゃないけどね。」

母さんは少し照れくさそうに笑う。

「みんなで食べるご飯って、それだけで美味しくなるものだから。」

宗一郎さんは静かに料理へ視線を向ける。

「……どれも本当に美味しそうだ。」

その穏やかな表情を見て、俺は少しだけ意外に思った。

テレビで見るような"神白グループ会長"ではなく、今日はただ、一人の父親としてこの場を楽しんでいるように見えた。

「さぁ。」

母さんが手を合わせる。

「冷めないうちにいただきましょう。」

「「「いただきます。」」」

みんなの声が重なり、賑やかな食事会が始まった。

「いただきます。」

全員が箸を手に取る。

「じゃあ、まずは……。」

黄瀬は目の前の唐揚げへ一直線だった。

一口頬張った瞬間――。

「うっっま!!」

思わず立ち上がりそうな勢いで叫ぶ。

「なにこれ!」

「外カリッ、中ジュワッじゃん!」

「店より美味い!」

「ちょっと黄瀬君。」

青嶌さんが苦笑する。

「まだ一口目だよ。」

「いや、これは叫ぶって!」

「緋乃も食ってみ!」

「……。」

緋乃は静かに唐揚げを口へ運ぶ。

数回噛むと、小さく頷いた。

「……美味い。」

「ご飯が進む。」

「だろ!」

黄瀬はなぜか得意げだ。

「俺が作ったわけじゃないけど!」

「ふふ。」

小紫さんも卵焼きを一口食べる。

「とてもまろやかで優しい味ですね。」

「ありがとうございます。」

母さんは照れ臭そうに笑う。

その隣では神白さんが、そっと卵焼きを箸で持ち上げていた。

一口。

ゆっくり味わうように口へ運ぶ。

「……。」

次の瞬間、ふわりと表情が緩んだ。

「やっぱり……。」

「この卵焼き、とても美味しいです。」

「前にいただいた時から、また食べたいと思っていました。」

「まあ。」

母さんは嬉しそうに笑う。

「そんなに気に入ってくれたの?」

「はい。」

神白さんは嬉しそうに頷く。

「この味、大好きです。」

「それなら今日はたくさん作ったから、おかわりもいっぱいあるわよ。」

「本当ですか?」

神白さんの声が少し弾む。

その様子を見ていた夕奈が、にこっと笑った。

「お姉ちゃん!」

「いっぱい食べてね!」

「え?」

神白さんは自分を指差した。

「私?」

「うん!」

「お兄ちゃんのお友達でしょ?」

「いっぱい食べてくれる人、お母さん好きなんだよ!」

「そうなんですね。」

神白さんは優しく笑い返した。

その微笑ましいやり取りを見て、宗一郎さんは静かに箸を置く。

そして部屋をゆっくり見渡しながら、小さく呟いた。

「……賑やかで、温かい食卓ですね。」

その横顔は、どこか羨ましそうにも見えた。

食事も終わりに近づき、みんながお茶を飲みながら一息ついていた。

「ふぅ~!」

黄瀬が満足そうにお腹をさする。

「ごちそうさまでした!」

「めちゃくちゃ美味かった!」

「それは良かったわ。」

母さんが嬉しそうに微笑む。

しばらく談笑していると、黄瀬が何かを思いついたように俺を見た。

「なぁ、朝陽。」

「ん?」

「朝陽のアルバムとかないの?」

「は?」

嫌な予感しかしない。

「なんでだよ。」

「見たいじゃん!」

「絶対ちっちゃい頃かわいいって!」

「私も少し興味があります。」

小紫さんが上品に微笑む。

「黒鉄君の幼少期、ぜひ拝見してみたいですね。」

「私もー。」

青嶌さんも笑いながら頷く。

「神白さんは?」

突然話を振られた神白さんは少し戸惑いながらも、小さく頷いた。

「……はい。」

「私も、少し見てみたいです。」

「緋乃は?」

「……興味はな…。」

そう言った緋乃だったが、

「……少しは…。」

と小さく付け加える。

「ほら!」

「全員一致!」

黄瀬が勝ち誇ったように笑う。

「却下。」

即答した俺だったが、母さんは楽しそうに立ち上がった。

「あら、アルバムならあるわよ。」

「母さん!」

俺の制止も聞かず、母さんは押し入れから何冊ものアルバムを抱えて戻ってくる。

そして、ちゃぶ台とは別に立て掛けて置いてあった小さな丸いテーブルをリビングの隅へ運び、その上へアルバムを丁寧に積み重ねた。

「さぁ。」

「みんな、こっちへどうぞ。」

母さんが一冊目のアルバムをゆっくり開く。

「うわぁ!」

黄瀬が真っ先に駆け寄り、その後ろから神白さん、小紫さん、青嶌さん、緋乃も自然と集まってきた。

俺だけが少し離れた場所で頭を抱える。

(終わった……。)

そんな俺の気持ちなどお構いなしに、黄瀬は楽しそうに最初のページをめくった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ