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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
お食事会、してみました。
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4

それからは何事もなく授業が進み、気付けば放課後になっていた。

「よーし、帰るか!」

黄瀬の一声で、俺たち五人は教室を後にする。

いつものように他愛のない会話をしながら昇降口を抜け、正門へ向かう。

すると――。

「朝陽!」

聞き覚えのある声が、校門前に響いた。

「ん?」

振り向いた俺は思わず足を止める。

そこに立っていたのは、他校の制服に身を包んだ一人の少女だった。

長い黒髪の内側だけを鮮やかな緑色に染めたインナーカラー。

その髪を後ろでひとつに結んだポニーテールが風に揺れている。

両手を腰に当て、仁王立ちでこちらを睨みつける姿は、昔から何ひとつ変わっていなかった。

「……夏穂?」

思わず声が漏れる。

「どうして、うちの学校に?」

夏穂はズカズカと俺の目の前まで歩いてくる。

「どうしてじゃないわよ!」

そのまま勢いよく俺の額を人差し指で突く。

「お父さんから聞いたんだから!」

「黒天狗と揉めたんでしょ!」

「いや……それは……。」

「『それは』じゃない!」

夏穂はぷくっと頬を膨らませた。

「心配したんだから!」

「学校を途中で早退して、わざわざ会いに来たのよ!」

その言葉に、俺は頭を掻きながら苦笑する。

「……うん。」

「ごめんって。」

俺が素直に謝ると、夏穂は小さく鼻を鳴らした。

その様子を見ていた黄瀬が、不思議そうに首を傾げる。

「えっと朝陽。」

「そちらの方は?」

「あぁ。」

俺は夏穂へ視線を向けて答えた。

「幼馴染の緑山夏穂。」

「昨日いた緑山署長の娘だよ。」

「ちなみに今回の件で、少し協力してもらってたんだ。」

その言葉を聞いた夏穂は、さっきまで怒っていたのが嘘みたいに表情を和らげた。

「そっか!」

「朝陽のお友達なんだね!」

そう言うと、夏穂はみんなへ向かってぺこりと頭を下げる。

「紹介に預かりました、緑山夏穂です!」

「朝陽と仲良くしてくれて、本当にありがとう!」

「おい。」

思わずツッコミを入れる。

「保護者みたいな言い方やめろよ。」

「だって、本当じゃない。」

夏穂は悪戯っぽく笑うと、ニヤニヤしながら俺の頬を人差し指でつついてきた。

「昔なんて、私しか友達いなかったくせに。」

「いてっ。」

「だから、それを今言うなって。」

「事実でしょ?」

「……否定できないのが悔しい。」

俺が肩を落とすと、夏穂は満足そうに笑った。

二人のやり取りを見ていた小紫さんが、くすっと笑みをこぼし。

「ふふ。」

「お二人、とても仲が良いんですね。」

「もしかして……。」

「恋人同士だったりするんですか?」

「「違います!」」

俺と夏穂の声がぴったり重なった。

夏穂は少し頬を赤くしながら俺の腕を軽く叩き。

「恋人じゃないけど……。」

「小さい頃に結婚する約束はしたかなぁ…。」

「は?」

俺は思わず夏穂を見た。

「おい。」

「それ、お前が勝手に『約束ね!』って言って、無理やり指切りさせただけだろ。」

「いいじゃない。」

夏穂は悪びれる様子もなく胸を張る。

「約束は約束なんだから。」

「どこの世界に一方的な約束があるんだよ……。」

俺が呆れてため息をつくと、黄瀬がニヤニヤしながら肩へ腕を回してきた。

「朝陽〜。」

「お前、隅に置けねぇなぁ。」

「幼馴染と結婚の約束とか、青春してんじゃん。」

「してねぇよ。」

「全部こいつの一方的な約束だから。」

「一方的って失礼な言い方ね!」

夏穂はぷくっと頬を膨らませる。

「私はちゃんと覚えてるんだから!」

そんな俺たちを見て、小紫さんは意味ありげに微笑み、神白さんは静かに視線を落とした。

その後、俺たちは校門を後にし、家へ向かって歩き始める。

夏穂も自然と俺たちの輪へ加わり

「ねぇねぇ。」

青嶌さんが興味津々といった様子で夏穂へ顔を向けた。

「昔の黒鉄君って、どんな感じだったの?」

「ふふ。」

小紫さんも微笑みながら続ける。

「私も少し興味がありますね。」

「昔の朝陽?」

夏穂は少し考えるように空を見上げた。

「ん~……。」

「よく泣いてたイメージかな。」

「え?」

黄瀬が目を丸くする。

「朝陽が?」

「うん。」

「転んでは泣いて、武術の練習が嫌で泣いて、お母さんの後ろに隠れてたし。」

「虫も苦手だったよね。」

「おいおい。」

俺は思わず顔をしかめる。

「そんな昔の話、今さら聞いてどうするんだよ……。」

「え~。」

「可愛いじゃん。」

夏穂は楽しそうに笑う。

みんなもつられて笑い出した。

そんな中――。

ふと、神白さんへ目を向ける。

さっきまで笑っていたはずなのに、どこか表情が晴れない様子で後を歩いている。

「……神白さん?」

俺が声を掛けると、神白さんはハッとしたように顔を上げた。

「は、はい。」

「どうかした?」

少しだけ言い淀んだ後、神白さんは俺を真っ直ぐ見つめる。

「黒鉄くん。」

「少し、お尋ねしたいことがあります。」

「俺に?」

「いいけど……何かな?」

神白さんは一度だけ小さく息を吸う。

そして、静かに口を開いた。

「仮に……のお話になるのですが。」

「もし私に、将来決まったお相手がいると言ったら――」

「黒鉄くんは、どうしますか?」

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