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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
お食事会、してみました。
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1

翌朝――。

「……ん。」

重たい瞼をゆっくりと開く。

全身が鉛のように重い。

腕を動かすたび、昨日の痛みが鈍く身体を走った。

「いてて……。」

苦笑いを浮かべながらベッドを降りる。

カーテンの隙間から差し込む朝日が、いつもと変わらない一日の始まりを告げていた。

部屋を出てリビングへ向かうと、食卓にはすでに朝食が並べられている。

焼き鮭に味噌汁。

炊きたての白いご飯と、母さん特製の卵焼き。

どこか懐かしく、安心する匂いが部屋いっぱいに広がっていた。

「朝陽。」

「夕奈を起こしてきてくれる?」

キッチンから母さんの声が飛ぶ。

「分かった。」

俺は夕奈の部屋へ向かい、眠そうに布団へ潜っている小さな身体を優しく揺すった。

「夕奈。」

「朝だぞ。」

「んぅ……。」

「お兄ちゃん……。」

寝ぼけ眼をこすりながら起き上がった夕奈は、小さくあくびをすると、俺の手を握ってリビングまで歩いてくる。

二人で椅子へ腰を下ろすと、母さんが湯気の立つ味噌汁を運んできた。

「はい、お待たせ。」

テレビでは、いつもの朝のニュース番組が流れている。

テレビから、ニュースキャスターの落ち着いた声が流れてくる。

『まずは、昨日発生した監禁・傷害事件に関する続報です。』

『警察は昨日、県内を拠点に活動していた半グレ集団「黒天狗」の構成員十二人を逮捕したと発表しました。』

『また、同日夜には、同組織の幹部三人と首謀者一人が自ら警察へ出頭し、自首したということです。』

『首謀者の男性は、出頭時に背中を鋭利な刃物で刺された重傷を負っており、現在も病院で治療を受けています。警察は、傷害事件として負傷に至った経緯についても詳しく調べています。』 


画面が切り替わる。

『続いてのニュースです。』

『本日未明、都内の高級マンションの一室で、御影グループ役員・香取大輔さんが倒れているのを同じマンションの住人が発見しました。』

『香取さんは全身に鋭利な刃物、あるいは鉤爪状の凶器で切り付けられたとみられる複数の傷があり、その場で死亡が確認されました。』

『警察は殺人事件として捜査本部を設置し、犯人の行方を追うとともに、事件との関連について慎重に調べを進めています。』

テレビには、昨日の事件現場の映像が次々と映し出されていた。

規制線の張られたナイトクラブ。

何台ものパトカー。

そして、現場検証を行う警察官たち。

昨日まであの場所に自分がいたとは思えないほど、どこか現実味のない光景だった。

「昨日の事件ね……。」

母さんがテレビを見つめながら、小さく呟く。

「本当に、朝陽もお友達も大きな怪我がなくてよかったわ。」

「うん。」

俺は味噌汁を一口飲み、静かに頷いた。

「そうだね。」

母さんは立ち上がると、俺の前まで歩いてくる。

そして――。

「よしよし。」

ぐしゃぐしゃになるくらい強めに俺の髪を撫で回した。

「ちょ、母さん!」

「髪ぐちゃぐちゃになるって!」

「いいの。」

母さんは安心したように笑う。

「無事だったんだから。」

その笑顔を見ていると、不思議と昨日の疲れが少しだけ軽くなった気がした。

母さんは時計を見ると、慌ただしくバッグを肩へ掛ける。

「それじゃ、お母さん会社へ行ってくるわ。」

「戸締まり、よろしくね。」

「うん。」

「気を付けて。」

「いってらっしゃい。」

「いってきます。」

母さんは夕奈の頭を優しく撫でると、家を後にした。

朝食を食べ終えた俺たちも制服へ着替え、ランドセルを背負った夕奈と一緒に玄関を出る。

「お兄ちゃん!」

「今日は遅刻しないでね!」

「誰に言ってるんだよ。」

思わず笑みがこぼれる。

玄関の鍵を閉め、俺たちはいつもの通学路へ向かって歩き始めた。

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