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「オラァッ!!」
天宮が床を蹴る。
踏み込みと同時に右腕を大きく振りかぶり、顔面目掛けて拳を叩き込む。
あまりにも大きなモーション。
俺には、その一撃が力任せの大振りにしか見えない。
(もらった。)
懐に入ると天宮の右前腕部分に左前腕を押し当て、拳を受け止める。
そのまま、がら空きになった鳩尾へ右拳を叩き込む――。
はずだった。
「なっ……!?」
止められたはずの右腕が、不自然な軌道を描く。
天宮は無理やり肩を回し、受け止められた拳をそのまま横薙ぎへ変化させた。
まるでラリアット。
「どけぇ!!」
ドゴォッ!!
左腕ごと胴体へ衝撃が突き抜ける。
体勢を崩し、そのまま勢いよく床へ叩きつけられた。
「ぐっ!」
息が詰まる。
だが、天宮は追撃の手を緩めない。
倒れた俺の腹を踏み潰そうと、右足を大きく振り上げる。
咄嗟に身体を横へ転がした。
ドンッ!!
天宮の踵が床を踏み抜き、鈍い音が店内へ響く。
転がった勢いのまま右膝を立て、素早く上半身を起こす。
しかし――。
「まだ終わりじゃねぇ!!」
天宮は間髪入れずに踏み込んできた。
立ち上がる暇すら与えてくれない。
サッカーボールを思い切り蹴り飛ばすように、右足を豪快に振り抜く。
「っ!」
反射的に両腕を胸の前で交差させた。
クロスガード。
次の瞬間――。
ドゴォォォンッ!!
凄まじい衝撃が両腕から全身へ突き抜ける。
ガードごと吹き飛ばされた身体は宙を舞い、そのまま背中から壁へ激突した。
バゴォンッ!!
壁が大きく揺れ、砂埃が舞い上がる。
店内にいた全員が、その圧倒的な一撃に息を呑んだ。
砂埃がゆっくりと舞い落ちる。
壁にもたれ掛かった俺を見下ろし、天宮はゆっくりとしゃがみ込んだ。
「どうした?」
ニヤリと口角を吊り上げる。
「まだ終わりじゃねぇだろ?」
荒い息を吐きながら天宮を見返した。
全身が痛む。
両腕は痺れ、呼吸も浅い。
それでも――。
「……当たり前だろ。」
壁へ手をつき、ゆっくりと立ち上がる。
もう一度、静かに構え直した。
その姿を見た天宮は嬉しそうに笑う。
「いいねぇ。」
「喧嘩はこうじゃねぇとな!」
次の瞬間、床を蹴る。
「もう一丁いくぜぇ!!」
再び右拳を大きく振りかぶる。
先ほどと同じ豪快な一撃。
だが、今度は違う。
真正面では受けない。
左足を一歩踏み出し、天宮の外側へ身体を滑り込ませる。
同時に右前腕を使い、振り下ろされる拳を外側へ受け流す。
ゴッ――。
拳は俺の肩をかすめ、そのまま空を切った。
「ここだ!」
身体を沈め腰を鋭く回転させる。
全身の力を左拳へ乗せ、一気に突き上げた。
狙うのは右脇腹。
肝臓。
ドスッ!!
鋭い左拳が、天宮の肝臓へ深々と突き刺さった。




