12
全員が同時に地面を蹴った。
俺も静かに腰を落とし、天宮へ正対する。
「小紫さん!神白さんをお願いします。」
「わかった…。」
小紫さんは神白さんの腕を引き自分の元へと引き寄せた。
その瞬間だった。
「おいおい。」
天宮が笑いながら片手を上げる。
「俺らは最後でいいだろ。」
「アイツらの喧嘩を見てからでも遅くはねぇ。」
そう言うと、天宮は腕を組み、その場から動こうとしなかった。
「好きにしろ。」
俺も構えを解かず、緋乃たちへ視線を向ける。
最初に動いたのは緋乃だった。
「シュッ!」
鋭い踏み込み。
左ジャブが一直線に鷹取の顔面を射抜く。
しかし。
パシッ。
鷹取は左手で軽く払い落とす。
パーリング。
鷹取は弾いた勢いのまま身体を踏み込み、今度は右ストレート。
一直線に緋乃の顔面を狙う。
緋乃は膝を柔らかく使い、上半身を沈める。
拳は頭上を掠めるだけで空を切った。
「もらった!」
沈んだ姿勢のまま左拳を突き上げる。
緋乃の左ボディーだ。
ドスッ!
鈍い音が響く。
だが、鷹取は身体をわずかに捻りながら右肘を畳み、その一撃を受け止めた。
「教科書通りで……。」
鷹取は表情一つ変えない。
「つまらない人ですね。」
緋乃は口元を吊り上げた。
「ボクシングの一ラウンドはな。」
「相手の出方を見るもんだ。」
「そうですか。」
鷹取は静かに頷く。
「なら、今度はこちらから。」
一歩踏み込む。
右肩が前へ出る。
右ストレート。
そう見えた。
緋乃は反射的に重心を後ろへ移す。
スウェー。
完璧な回避だった。
――だが。
「だから。」
鷹取の口元がわずかに歪む。
「教科書通りなんですよ。」
次の瞬間。
鋭い右足が唸りを上げる。
バシィッ!!
ローキックが緋乃の左太腿を正確に叩き抜いた。
「ぐっ……!」
緋乃の身体がわずかによろめく。
鷹取は眼鏡を押し上げ、淡々と言い放つ。
「どうですか?」
「蹴りの痛みは。」
緋乃は脚をさすりながら、不敵に笑った。
「……うるせぇよ。」




