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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
SOSに、こたえてみました。
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9

俺たちは学校を抜け出し、駅へ向かって歩き始めた。

駅の近くまで来ると、小紫さんはメイン通りから一本外れた路地へ入っていく。

「こちらです。」

俺たちは無言のまま、小紫さんの後を追った。

しばらく歩くと、一軒の潰れたナイトクラブの前で小紫さんが足を止める。

「ここです。」

店の看板には、大きく英字で店名が書かれていた。

『Black Candy』

俺はその店名を小さく読み上げた。

黄瀬が店の外観を見渡し、口を開く。

「どう見ても潰れた店だね。」

確かに、その通りだった。

窓ガラスにはベニヤ板が打ち付けられ、入口のシャッターは半分ほど錆び付いている。

人の気配など、まるで感じられない。

青嶌さんが不安そうに周囲を見回した。

「本当にここなの?」

小紫さんは静かに頷く。

「今は店として機能していません。」

「ですが、黒天狗の構成員が、この場所を拠点として利用しているという情報があります。」

俺は足を止め、周囲を注意深く見渡した。

店の前には砂埃がうっすらと積もっている。

その上には、真新しい車のタイヤ痕が何本も残されていた。

さらに入口付近には、何人もの靴跡が踏み重なるようについている。

潰れた店にしては、人が出入りした形跡が多すぎた。

「……間違いなさそうだ。」

皆が俺を見る。

俺は地面を指差した。

「タイヤ痕も靴跡も新しい。」

「最近まで、いや……今も誰かが出入りしてる。」

「本当ね。」

青嶌さんの表情が強張る。

「当たりみたい。」

その瞬間だった。

カタン――。

建物の裏手から、小さな物音が聞こえた。

全員の視線が、一斉に音のした方へ向く。

俺は拳を軽く握り、皆へ小さく目配せをした。

「……行こう。」

俺たちは息を潜めながら、建物の中へ足を進る。

俺たちは顔を見合わせ、小さく頷いた。

ゆっくりと正面入口へ近付く。

シャッターは完全には閉まっておらず、人ひとりが身を屈めれば通れるほどの隙間が空いていた。

「入れるな。」

緋乃が小声で呟く。

俺は先頭に立ち、慎重にシャッターをくぐった。

中へ足を踏み入れた瞬間、むっとした空気が肌へまとわりつく。

酒と煙草。

そして長い間掃除されていない埃の臭い。

薄暗い店内には、赤や紫の照明だけがぼんやりと灯っていた。

営業を終えた店とは思えない。

いや――。

営業を終えた店を、無理やり別の用途で使っている。

そんな異様な空気だった。

ホールには丸テーブルがいくつも並び、割れたグラスや空き缶が無造作に転がっている。

奥にはステージ。

その手前に、一人の少女が立っていた。

「……神白さん。」

神白さんだった。

制服姿のまま、真っ直ぐ前を見つめている。

その正面には、十人近い男たち。

金髪。

坊主。

タトゥー。

見るからに堅気ではない男たちが、神白さんを取り囲むように立っていた。

そして、そのさらに奥。

ソファへ腰を掛ける四人の男。

一人は黒いドレッドヘアーにサングラス。

腕や首筋にはトライバル柄の刺青が覗いている。

その隣には、黒髪のオールバックに眼鏡を掛けた男。

さらに金髪パーマの男がテーブルへ足を投げ出し、退屈そうにガムを噛んでいる。

最後の一人。

銀髪のセンターパート。

まだ高校生ほどの年齢にしか見えない少年が、楽しそうに足をぶらつかせていた。

四人の視線が、一斉にこちらへ向く。

俺は神白さんだけを見つめた。

「神白さん!」

その声に、神白さんが勢いよく振り返る。

「黒鉄くん……!」

驚きと安堵が入り混じった表情。

そして俺たち全員を見た瞬間、顔色が変わる。

「皆さん……!」

「どうして来たんですか!」

その声には、喜びよりも焦りが滲んでいた。


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