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「……一つだけ。」
静まり返った廊下で、小紫さんがゆっくりと口を開いた。
全員の視線が彼女へ集まる。
「心当たりがあります。」
「本当に?」
俺が尋ねると、小紫さんは静かに頷いた。
「はい。」
「黒天狗が最近出入りしている場所があります。」
「どこだ?」
緋乃が真剣な表情で問い掛ける。
「黒天狗の構成員が頻繁に集まっている場所を知っています。」
「そこへ行けば神白さんがいるのか?」
「……断言はできません。」
「ですが、現時点では最も可能性が高いと思います。」
黄瀬が首を傾げた。
「ちょ、待った。」
「なんで小紫さんがそんな場所知ってんの?」
その一言で、小紫の表情がわずかに曇る。
言葉を探すように視線を落とし、静かな沈黙が流れた。
やがて小紫さんは、小さく頭を下げる。
「……申し訳ありません。」
「その理由は、お話しできません。」
「え?」
黄瀬が目を丸くする。
青嶌さんも驚いたように小紫さんを見つめていた。
小紫さんはゆっくりと顔を上げる。
その瞳には迷いがあった。
それでも、真っ直ぐ俺を見つめて言う。
「ですが。」
「この情報に嘘はありません。」
「信じていただけるのであれば、ご案内します。」
再び静寂が流れた。
黄瀬は困ったように俺を見る。
青嶌さんも緋乃も何も言わない。
全員が、俺の判断を待っていた。
俺は小紫さんの目を見つめる。
怯えているわけじゃない。
隠し事はある。
だが――。
嘘をついている目じゃない。
俺は小さく息を吐いた。
「……分かったよ。」
静かにそう告げる。
「俺は、友達の小紫さんを信じる。」
その言葉に、小紫の瞳が大きく揺れた。
「黒鉄くん……。」
かすかに震えた声。
俺は小さく笑う。
「話せない理由があるなら、それでいい。」
「今は神白さんを助けることが先だ。」
小紫さんはしばらく俯いていたが、やがて小さく頷いた。
「……ありがとうございます。」
緋乃が腕を組みながら口を開く。
「朝陽がそう言うなら、俺も信じる。」
「俺も!」
黄瀬が勢いよく親指を立てる。
「小紫さんが嘘つくようには見えねぇし!」
「私も同感。」
青嶌さんも穏やかに微笑んだ。
「案内、お願いします。」
小紫さんは四人を見渡し、胸の前でそっと拳を握る。
「……はい。」
「こちらです。」
そう言って歩き出した小紫の背中を、朝陽たちは迷うことなく追い掛けた。




