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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
SOSに、こたえてみました。
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8


「……一つだけ。」

静まり返った廊下で、小紫さんがゆっくりと口を開いた。

全員の視線が彼女へ集まる。

「心当たりがあります。」

「本当に?」

俺が尋ねると、小紫さんは静かに頷いた。

「はい。」

「黒天狗が最近出入りしている場所があります。」

「どこだ?」

緋乃が真剣な表情で問い掛ける。

「黒天狗の構成員が頻繁に集まっている場所を知っています。」

「そこへ行けば神白さんがいるのか?」

「……断言はできません。」

「ですが、現時点では最も可能性が高いと思います。」

黄瀬が首を傾げた。

「ちょ、待った。」

「なんで小紫さんがそんな場所知ってんの?」

その一言で、小紫の表情がわずかに曇る。

言葉を探すように視線を落とし、静かな沈黙が流れた。

やがて小紫さんは、小さく頭を下げる。

「……申し訳ありません。」

「その理由は、お話しできません。」

「え?」

黄瀬が目を丸くする。

青嶌さんも驚いたように小紫さんを見つめていた。

小紫さんはゆっくりと顔を上げる。

その瞳には迷いがあった。

それでも、真っ直ぐ俺を見つめて言う。

「ですが。」

「この情報に嘘はありません。」

「信じていただけるのであれば、ご案内します。」

再び静寂が流れた。

黄瀬は困ったように俺を見る。

青嶌さんも緋乃も何も言わない。

全員が、俺の判断を待っていた。

俺は小紫さんの目を見つめる。

怯えているわけじゃない。

隠し事はある。

だが――。

嘘をついている目じゃない。

俺は小さく息を吐いた。

「……分かったよ。」

静かにそう告げる。

「俺は、友達の小紫さんを信じる。」

その言葉に、小紫の瞳が大きく揺れた。

「黒鉄くん……。」

かすかに震えた声。

俺は小さく笑う。

「話せない理由があるなら、それでいい。」

「今は神白さんを助けることが先だ。」

小紫さんはしばらく俯いていたが、やがて小さく頷いた。

「……ありがとうございます。」

緋乃が腕を組みながら口を開く。

「朝陽がそう言うなら、俺も信じる。」

「俺も!」

黄瀬が勢いよく親指を立てる。

「小紫さんが嘘つくようには見えねぇし!」

「私も同感。」

青嶌さんも穏やかに微笑んだ。

「案内、お願いします。」

小紫さんは四人を見渡し、胸の前でそっと拳を握る。

「……はい。」

「こちらです。」

そう言って歩き出した小紫の背中を、朝陽たちは迷うことなく追い掛けた。

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