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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
SOSに、こたえてみました。
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3


カフェを出た俺たちは、そのまま栞さんを駅前まで送ることにした。

夕暮れの駅前は仕事帰りの人や学生で賑わっている。

「本当にここまでで大丈夫?」

神白さんが心配そうに尋ねる。

栞さんは少しだけ笑顔を見せた。

「うん。」

「家まで歩いて十分くらいだから。」

「今日はみんなが一緒にいてくれたから安心できた。」

「ありがとう。」

「何かあったら、すぐ連絡してくださいね。」

「うん。」

「約束する。」

栞さんは小さく手を振ると、人混みの中へ歩いていった。

その姿が見えなくなるまで、俺たちはその場で見送った。

栞さんの姿が見えなくなり、俺達もそれぞれの自宅へ向かい歩き始める。

しばらく歩いていると

ブルルルッ――。

神白さんのスマートフォンが震える。

画面には、

尼ヶ崎栞の文字。

「栞さん?」

神白さんはすぐに電話へ出た。

「もしもし?」

電話の向こうから聞こえてきたのは、荒い息遣いだった。

『……い、伊吹ちゃん……。』

「栞さん!?どうしたんですか!」

『助けて……。』

『誰か……。』

『追わ―』

ガタンッ!!

何かが倒れるような音とともに、男の怒鳴り声が聞こえた。

『逃がすな!』

「きゃあっ――!」

ブツッ。

通話は切れた。

「栞さん!!」

神白さんは何度も呼び掛けるが、もう繋がらない。

「黒鉄くん……。」

神白さんの声が震えていた。

「栞さんが……。」

「神白さん。」

「すぐ一一〇番。」

「え……。」

「早く!」

「は、はい!」

神白さんは震える手で一一〇番へ電話を掛ける。

その横で俺は栞さんから聞いていた住所を思い出した。

「みんな!」

「栞さんの家の方向へ行くぞ!」

俺たちは駅前を飛び出した。

夕暮れの住宅街を全力で駆け抜ける。

神白さんは警察へ事情を説明しながら必死に走っている。

数分後。

「……ここです!」

神白さんが立ち止まる。

辺りは静まり返り、道路には学生鞄とスマートフォンも落ちていた。

だが肝心の栞さんの姿だけが、どこにもない。

「そんな……。」

神白さんはその場へ崩れ落ちた。

「栞さん……。」

遠くからサイレンの音が近付いてくる。

パトカーが到着し、制服警官が現場を規制し始めた。

事情を聞かれた俺たちは、電話の内容やカフェでの出来事をすべて話した。

しかし、現場に残っていたのは落ちた荷物だけで、犯人を示す決定的な手掛かりは何一つなかった。

「黒鉄くん……。」

事情聴取が終わり、神白さんが不安そうに俺を見る。

「警察なら……栞さんを助けてくれますよね?」

俺はすぐには答えられなかった。

もちろん警察は動いてくれる。

だが、あの男たちが普通の誘拐犯ではないことだけは確信していた。

(少しでも早く情報が欲しい。)

その時、一人の顔が頭に浮かぶ。

――緑山夏穂。

警察署長の娘であり、俺の幼馴染。

「……神白さん。」

「俺にも、できることをやってみる。」

「少しだけ、心当たりがある。」

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