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教室に残っていた生徒も少なくなり、窓の外では運動部の掛け声が聞こえている。
俺たちはいつものように机を寄せ、神白さんの言葉を待った。
神白さんは膝の上で両手を重ね、小さく息を整える。
「実は……。」
少しだけ言葉を選ぶように視線を落とした。
「私、中学校の頃にとても仲の良かった友達が二人いるんです。」
「今でも時々連絡を取り合っていて……。」
俺たちは静かに耳を傾ける。
「でも、2日くらい前から、そのうち一人と急に連絡が取れなくなってしまったんです。」
「既読も付かなくて、電話も繋がらなくて……。」
教室が静まり返る。
「警察には?」
俺が尋ねる。
神白さんは頷いた。
「ご家族が捜索願を出しているそうです。」
「でも、まだ何も分かっていなくて……。」
黄瀬も表情を引き締める。
「それ、普通にヤバくないか……?」
神白さんは小さく頷き、続けた。
「今日、もう一人の友達から電話がありました。」
「凄く怯えた声で『直接会って話したいことがある』って。」
青嶌さんが心配そうに聞く。
「その子は大丈夫なの?」
「分かりません。」
「でも……。」
神白さんは少しだけ表情を曇らせた。
しばらく沈黙が流れたあと、神白さんが静かに立ち上がる。
「今日はその子と会う約束をしています。」
「事情を聞いてきます。」
そう言って鞄を持とうとした、その時だった。
「一人で行くの?」
思わず俺は声を掛けていた。
神白さんは少し困ったように笑う。
「はい。」
「これは私の友達の問題ですから。」
「皆さんを巻き込むわけには……。」
「何言ってんだよ。」
黄瀬が立ち上がる。
「友達が困ってるなら放っておけねぇだろ。」
「そうそう。」
青嶌さんも頷く。
「それに、一人で行かせる方が心配。」
神白さんは戸惑ったように俺たちを見る。
「でも……。」
俺は神白さんの言葉を遮るように言った。
「神白さん。」
「俺たち、友達だろ。」
その一言に、神白さんの目が少し見開かれる。
やがて、ふっと力が抜けたように微笑んだ。
「……ありがとうございます。」
「それじゃあ、お言葉に甘えさせてください。」
その様子を見ていた小紫さんも静かに口を開く。
「私も、ご一緒します。」
「何かあった時は、人が多い方が安心ですから。」
こうして俺たちは、神白さんの友達が待つ待ち合わせ場所へ向かうことになった。
この時はまだ誰も知らなかった。
その出会いが、俺たちを"黒天狗"という半グレ組織との事件へ巻き込んでいくことになるとは――。




