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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
中間テスト、やってみました。
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13


それから数日が過ぎた。

放課後の勉強会はすっかり日課となり、昼休みになれば自然と五人で机を囲む。

黄瀬の騒がしい声に青嶌さんが笑い、神白さんが優しく微笑む。その輪の中には、今では当たり前のように小紫さんの姿もあった。

「黒鉄くん、この問題なんだけど。」

「ここなら、この公式を使えば分かりやすいよ。」

「なるほど……ありがとう。」

そんな何気ないやり取りも、いつしか自然になっていた。

小紫さんも最初の頃のような遠慮はなくなり、時折冗談に笑ったり、自分から話しかけたりする姿が増えていた。

そんな穏やかな時間は、あっという間に過ぎていく。

そして――。

いよいよ中間テスト当日を迎えた。

教室には、いつもの賑やかさはほとんどない。

参考書を開く者。

単語帳を見返す者。

机に突っ伏して現実逃避をする者。

その最後に該当するのは、もちろん黄瀬だった。

「終わった……。」

開始十分前だというのに、机へ額を押し付けたまま動かない。

「まだ始まってもないだろ。」

俺が呆れて声を掛ける。

「違うんだよ朝陽……。」

「始まる前から終わってるんだよ……。」

「毎日勉強してたじゃない。」

青嶌さんが苦笑する。

「そうだよ!」

黄瀬は勢いよく顔を上げる。

「だから今回は前よりマシなはずなんだ!」

「ここはさぁ…。」

「私が教えてたんだから、大丈夫って言って欲しかったな。」

「うっ……。」

教室に小さな笑いが広がる。

神白さんも口元を押さえながらくすっと笑った。

「きっと大丈夫ですよ。」

「勉強会の成果、出ます。」

「神白さん……!」

黄瀬は両手を合わせる。

「神白さんを拝んでおけば点数が上がる気がする!」

「気のせいだ。」

「最後まで朝陽はきびしぃ〜」

そんな他愛もない会話を交わしていると、教室の扉が開く。

「席に着けー。」

先生の声が響き、教室の空気が一変した。

全員が静かに席へ着くと、机の上には筆記用具だけになる。

やがて問題用紙が配られ始めた。

(さて……。)

俺は静かに深呼吸をし、配られた問題用紙へ視線を落とした。

試験開始の合図と同時に、教室には紙をめくる音とシャープペンシルの走る音だけが響く。

問題を一通り見渡す。


(……思ったより難しくないな。)


勉強会で何度も解いた問題と似たような内容がいくつもあった。

迷うことなく答えを書き進めていく。

ふと前を見ると、黄瀬が頭を掻きながら問題用紙を睨みつけていた。

(……頑張れ、大丈夫。)

心の中だけで応援し、俺は再び問題へ集中した。


□ □ □ □


「終わったぁぁぁー!」

最後の教科が終わると同時に、黄瀬が机へ突っ伏した。

「もう一生勉強したくない……。」

「まだ私達、高校1年の5月よ。」

青嶌さんが苦笑する。

「でも今回はどうだったの?」

神白さんが優しく尋ねると、黄瀬は胸を張った。

「今回は自信ある!」

「7割くらいは埋めた!」

「黄瀬にしては頑張った方だね。」

「でた!朝陽のトゲがある言い方!」

教室に笑いが広がる。

「皆さんはどうでした?」

神白さんが俺たちを見回す。

「普通かな。」

「私はそこそこ!」

「私は……大丈夫だと思います。」

小紫さんも静かに答える。

「私も問題なく解けました。」

勉強会の成果は、少なくとも全員に出ているようだった。

「よーし!」

黄瀬が勢いよく立ち上がる。

「テストも終わったことだし、今日は遊びに――」

「今日は帰って寝ろ。」

「なんでぇ!?」

また笑いが起きる。

そんな穏やかな空気の中、不意に神白さんのスマートフォンが震えた。


「……。」


画面を見た神白さんの表情が、わずかに曇る。

「どうした?」

俺が声を掛けると、神白さんは少しだけ困ったように笑った。

「ごめんなさい。」

「少し、電話に出てもいいですか?」

「もちろん。」

神白さんは教室の外へ出ていく。


数分後。


戻ってきた神白さんの表情は、さっきまでとは明らかに違っていた。

どこか落ち着かず、不安を押し隠しているような顔だった。

「神白さん?」

青嶌さんが心配そうに声を掛ける。

神白さんは少し迷ったあと、小さく息を吸った。

「皆さんに……少し相談したいことがあります。」

その一言で、教室の空気が静かに張り詰めた。


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