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道場を出る前。
「今日はありがとうございました。」
全員が深々と頭を下げる。
祖父は嬉しそうに笑った。
「またいつでも来なさい。」
「朝陽は、サボるでないぞ。」
「分かったよ。」
「また来ます!」
黄瀬が元気よく手を振る。
「次は俺も強くなってから!」
「まずは茶ばっか飲まずに体を動かせ。」
「うっ……。」
その一言に皆が笑う。
俺たちは祖父へもう一度頭を下げ、道場を後にした。
・・・
駅までの帰り道。
「今日は楽しかったね。」
青嶌さんが笑う。
「うん。」
神白さんも頷いた。
「黒鉄流のお話、とても勉強になりました。」
「また行きたいな!」
黄瀬が笑う。
「次こそ俺も稽古……」
「いや、やっぱ見学で。」
「だろうね。」
道中喋りながら歩いていると、あっという間に駅前へ着いた。
「じゃあ、また月曜日。」
「またね。」
「気を付けて帰れよ。」
それぞれ手を振り、帰路につく。
神白さんは迎えの車へ。
黄瀬と青嶌さんは駅の改札へ。
「それじゃ。」
小紫さんも俺へ微笑む。
「今日はありがとう、黒鉄くん。」
「こちらこそ。」
「また学校で。」
「ええ。」
そう言って小紫さんは静かに歩き出した。
その背中を見送り、俺も家路につく。
◇ ◇ ◇ ◇
数分後。
人気のない路地。
小紫は歩みを止める。
楽しげだった表情は消え、静かにスマートフォンを取り出した。
数回のコール音。
『……もしもし。』
落ち着いた声。
ロゼだった。
「報告します。」
『聞かせて。』
「黒鉄流古武術への接触は成功しました。」
「黒鉄天元とも直接会っています。」
『それで?』
小紫は淡々と続ける。
「黒鉄流は想像以上に実戦的です。」
「型を重視する古武術という印象でしたが、それだけではありません。」
「一つひとつの動きが、実戦を前提として組み立てられています。」
ロゼは黙って聞いている。
「稽古にも参加しました。」
「そこで感じたのですが……。」
ほんの少しだけ言葉を選ぶ。
「黒鉄流には、私たちの征砕流と通じる部分があります。」
『……それで。』
ロゼの声色が少し変わった。
「重心移動。」
「間合い。」
「相手の力を利用する考え方。」
「細かな違いはありますが、根本の理論に共通点を感じました。」
短い沈黙。
『面白い報告ね。』
ロゼは小さく笑う。
「あるいは……。」
小紫は静かに空を見上げる。
「征砕流の源流と、どこかで繋がっている可能性も否定できません。」
ロゼは数秒黙ったあと、静かに言った。
『そうね、念の為総司令には私から報告しておくわ』
『あなたは、引き続き頼んだわよ。』
『黒鉄流も。』
『そして黒鉄朝陽と神白伊吹との関係も。』
「承知しました。」
通話が切れる。
小紫はスマートフォンをしまうと、小さく息を吐いた。
「黒鉄流……。」
その名を静かに呟きながら、夕暮れの街へと歩き出した。




