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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
中間テスト、やってみました。
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5

◇  ◇  ◇  ◇

その日の夕方。

住宅街を一人歩く。

さっきまでの賑やかな笑い声が、まだ耳に残っていた。

小紫は足を止めると、人通りのない路地へ入る。

周囲を一度だけ見渡し、ポケットから一台のスマートフォンを取り出した。

画面に表示された名前を押す。

数回のコールの後。

『……遅かったわね。』

落ち着いた女の声。

ロゼだった。

「ごめんなさい。」

「少し長引いてしまって。」

『珍しいわね。』

『あなたが報告を後回しにするなんて。』

『何かあったの?』

小紫は少しだけ目を伏せる。

「いえ。」

「問題ありません。」

「任務は予定通り進んでいます。」

『それで?』

『報告を聞かせて。』

「はい。」

小紫の表情から感情が消える。

任務中の顔だった。

「神白伊吹を含むグループへの接触は成功しました。」

「現在は警戒されることもなく、自然に行動を共にしています。」

『思ったより早かったわね。』

「思っていた以上に受け入れてくれました。」

『黒鉄朝陽は?』

「勉強も教えてくれますし、警戒心もほとんどありません。」

「神白さんや青嶌さん、黄瀬くんとも自然に話せています。」

ロゼは数秒黙った。

『十分ね。』

『なら次の段階へ移りなさい。』

「次の段階……。」

『ええ。』

『黒鉄朝陽に接触を深めるの。』

『そして――』

ロゼの声が一段低くなる。

『黒鉄流について。』

『それと、神白家との関係。』

『その二つを探りなさい。』

小紫は静かに頷く。

「分かりました。」

『無理に聞き出す必要はないわ。』

『自然な会話の中でいい。』

『あなたならできるでしょう?』

「はい。」

短く答える。

電話の向こうで、ロゼがふっと笑った。

『……でも。』

『一つだけ気になることがあるわ。』

「?」

『あなた。』

『さっきから少し楽しそうな声をしているわね。』

その言葉に、小紫の瞳がわずかに揺れた。

「……気のせいです。」

『そうかしら。』

ロゼは意味深に笑う。

『まあ、いいわ。』

『任務に支障が出なければ、それでいい。』

『報告は以上ね。』

「はい。」

通話が切れる。

画面が暗くなる。

小紫はスマートフォンを見つめたまま、小さく息を吐いた。

(……楽しそう、か。)

否定した。

否定したはずなのに。

その言葉だけが、不思議と胸の奥に残り続けていた。

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