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◇ ◇ ◇ ◇
路地裏から少し離れたビルの屋上。
一人の少女が、戦いの終わりを静かに見下ろしていた。
長い髪が夕風に揺れる。
その瞳に浮かぶのは驚きでも焦りでもない。
ただ、黒鉄朝陽という存在を見定めるような静かな眼差しだった。
「……終わりましたか。」
少女――小紫は小さく呟くと、ポケットから携帯電話を取り出した。
数回の呼び出し音。
やがて電話が繋がる。
「お姉様。」
『どうだったの。』
落ち着いた声が返ってくる。
「申し訳ありません。」
「先に送り込んだ者は敗れました。」
わずかな沈黙。
だが、ロゼの声色は変わらない。
『そう。』
『彼でも駄目だったのね。』
「はい。」
「黒鉄朝陽は予想以上です。」
「訓練された相手にも対応し、最後は勝ち切りました。」
電話の向こうで、小さく笑う声が聞こえた。
『面白いわね。』
『ますます興味が湧いてくる。』
小紫は倒れた男へ一度だけ視線を送り、静かに目を閉じる。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「お姉様。」
『なに?』
「このままでは効率が悪いかと。」
『……。』
「私に、一つ考えがあります。」
その一言だけを残し、小紫は静かに口元を緩めた。
ロゼもまた、その笑みを見るように短く笑う。
『なるほど。』
『好きにやってみなさい。』
「ありがとうございます。」
通話が切れる。
小紫は携帯をしまい、夕暮れの街へ視線を向けた。
「さて……。」
意味深な笑みだけを残し、少女の姿は夕闇の中へ静かに消えていった。




