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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
初めての休日、遊んでみました。
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6

男は俺から数メートルほど離れた場所で足を止めた。

夕陽が沈みかけ、細い路地は半分ほど影に包まれ、辺りには人の気配はない。

聞こえるのは遠くを走る車の音だけだった。

男は無言のまま、じっとこちらを見ている。

その視線に敵意は感じない。

だが、それが逆に不気味だった。

俺は男から目を離さないまま口を開く。

「……何の用だ。」

男は少しだけ口角を上げた。

「随分落ち着いてるな。」

「普通なら逃げる。」

「逃げても無駄だろ。」

俺が返すと、男は肩をすくめる。

「まぁな。」

短い沈黙。

互いに一歩も動かない。

まるで、どちらが先に仕掛けるか探り合っているようだった。

俺はゆっくり息を吐く。

「一つ聞く。」

「神白さんを狙ってるのか。」

その言葉に男は一瞬だけ目を細めた。

だが次の瞬間には、小さく笑う。

「俺は、お前を試せと言われただけだ。」

「……俺を?」

予想外だった。

神白さんじゃない。

俺?

思わず眉をひそめる。

「理由は。」

男は鼻で笑う。

「さぁな。」

「俺みたいな下っ端には教えてもらえねぇよ。」

「言われたことは一つだけ。」

男は人差し指を一本立てる。

「黒鉄朝陽。」

「お前の実力を見てこい。」

俺の名前まで知っている。

背中を冷たいものが走る。

(誰だ。)

(何者なんだ。)

俺を調べている人間がいる。

そう考えた瞬間、昼間から感じていた違和感が一つに繋がった。

男は首を鳴らしながらゆっくり前へ出る。

「悪いな。」

「俺も仕事なんでね。」

その瞬間だった。

男の雰囲気が変わる。

空気が重くなる。

さっきまでの軽い笑みは消え、鋭い眼光だけが俺を射抜いていた。

自然体。

なのに隙がない。

これがコイツの構えなんだ。

俺もゆっくり重心を落とし、拳を握る。

男は小さく笑った。

「いい目だ。」

「少しばかり──」

「試させてもらう。」

夕陽が沈む。

次の瞬間。

男の姿が、一歩で間合いを詰めてきた。

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