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さすがの緋乃でも、この人数を一人で相手にするのは厳しい。
それは戦わなくても分かった。
俺は緋乃の隣へ並び、静かに拳を握る。
「俺も手を貸すよ。」
黄瀬もその横へ立つと、肩を回しながら軽く屈伸を始めた。
「さすがのチャンピオンでも、この人数はキツいでしょ?」
緋乃は小さく息を吐き、俺へ視線を向ける。
「お前ら…いつの間に。」
「正直助かるがいいのか?」
緋乃は俺らに確認する。
「こんなの見過ごせないでしょ」
「悪いな…。」
「それに昨日の動きを見て分かった。」
「黒鉄、お前は何かやってるだろ。」
「でも――。」
今度は黄瀬を見る。
「黄瀬の方は大丈夫なのか?」
「俺?」
黄瀬は親指で自分を指し、ニヤッと笑う。
「大丈夫、大丈夫!」
「朝陽と喧嘩に巻き込まれた日からさ、こんな時のために毎日MeTubeで勉強してるから!」
その言葉に、緋乃の表情が一瞬だけ固まる。
……たぶんだけど。
神白さんを助ける時に聞いた俺と同じ顔をしている。
「言いたいことは分かるよ。」
俺は苦笑しながら肩をすくめた。
「でも心配はいらない。」
「黄瀬、運動神経とセンスだけは本当にいいから。」
一緒に共闘した俺だから分かる。
こいつは喧嘩なんてしたことはない。
だけど、動体視力・反射神経・身体能力が飛び抜けていた。
「ちょ、ちょっと!」
「俺だけ勝手に話進めないでくれる!?」
黄瀬が慌てて割って入る。
そのやり取りを見ていた男たちが、苛立ったように怒鳴った。
「余裕かましてんじゃねぇぞ、このガキども!」
「二度と生意気な口きけねぇようにしてやれ!」
その一声を合図に、十人近い男たちが一斉に地面を蹴った。
土埃が舞い上がる。
俺は静かに腰を落とし、構えを取る。
隣では緋乃が拳を握り締める。
そして黄瀬は、小さく息を吐いた。
「……よし。」
戦いの火蓋が切って落とされた。




