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最初は登場人物の紹介が続きますが、第9話から物語が大きく動き出します。ぜひそこまで読み進めていただけますと幸いです。
慣れない電車の乗り継ぎと、入学初日の緊張のせいか、身体が妙に重い。
それも当然だ。中学時代を思い返せば、入学初日から「ガンをつけた」と先輩に因縁をつけられ、校舎裏へ連れて行かれた苦い記憶がある。
その記憶が頭の中を快速列車のように駆け抜ければ、不安にもなる。
校舎へと続く長い上り坂も、その不安を後押しするように足取りを重くしていた。
坂の頂上が見え始めると、すっきりと洗練された校舎が姿を現す。
周囲には、ブレザーのボタンをきっちり留め、スカートのプリーツはアイロンをかけたばかりのように整い、リボンまで一分の隙もなく結ばれた生徒がいる。
一方で、窮屈そうに校則を嫌い、ネクタイを緩めたり、スカート丈を短くしたりと、自分らしく制服を着崩す生徒たちも少なくなかった。
あの頃のように、高校へ上がってまで入学早々に因縁をつけられるのは御免だ。
同じ轍は踏むまいと、俺は視線を足元へ落とし、そのまま正門をくぐった。
学園へ足を踏み入れると、胸の中では緊張と、新しい高校生活へのわずかな期待が入り混じっていた。
その複雑な感情を押し込めるように足早に来賓者玄関へ向かい、掲示されたクラス分けで
自分のクラスと出席番号を確認する。
「一年B組……10番か」
小さく呟き、俺は教室へ向かって歩き出した。
来賓玄関を後にした俺は、B塔から教室のあるA塔へ向かうため、二階の渡り廊下を歩いていた。
暖かな春の日差しがガラス越しに差し込み、渡り廊下からは想像していたよりもずっと広いグラウンドが見渡せる。今日は入学式だからだろうか。そこには、まだ誰一人として生徒の姿はなかった。
視線を少し横へ向けると、中庭には赤レンガ造りの花壇が整然と並び、その中央では一本のハナミズキが穏やかな風に枝を揺らしている。
どこかゆったりとした時間が流れるその景色を眺めていると、さっきまで胸を締めつけていた緊張が、ほんの少しだけ和らいだ気がした。
A塔一階まで下りると、「一年B組」と書かれた表札が目に入る。
俺は一度だけ深呼吸をし、教室のドアの前で足を止めた。
一抹の不安を抱えながら、賑やかな話し声が漏れ聞こえる教室のドアに手を掛けた。
ガララ――。
重苦しい気持ちとは裏腹に、ドアは小気味よい音を立てながら滑らかに開く。
その瞬間。
教室中に響いていた笑い声や話し声が、まるで誰かがスイッチを切ったように止んだ。
何十もの視線が、一斉に俺へと向けられる。
今まで悪い意味で目立つことは何度もあった。だが、これほど大勢の視線を一度に浴びた経験はない。
喉が渇く。
心臓の鼓動だけがやけに大きく聞こえた。
「……お、おはようございます。」
全身の力を振り絞り、ようやく絞り出した一言だった。
「お、おはよう……」
「えっ、怖……」
「怒ってるのかな?」
「なんか睨んでない?」
小さな囁き声が、静まり返った教室に嫌というほど耳へ届く。
(……また、か。)
胸の奥で、小さくため息をついた。
本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。
まだまだ読者の方も少なく、皆様がどのように感じられたか、そわそわとした気持ちでおります。
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