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護衛対象は、お嬢様でした。  作者: 愚兎
文化祭、してみました。
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114/127

21

夕暮れに染まった公園を後にし、俺たちは歩き始めた。

誰も口を開かない。

さっきまで交わしていた話が重く胸に残り、それぞれが考え込んでいた。

駅前へ出ると、人の行き交う賑やかな景色が広がる。

笑い声。

電車のアナウンス。

仕事帰りの人たち。

そんな日常の音が、俺たちだけを現実から切り離しているように感じた。

「……。」

ふと隣を見る。

小紫さんは俯きながら歩いていた。

その横顔には、不安と覚悟が入り混じっている。

それでも。

もう一人で抱え込もうとはしていなかった。

そのことだけは、少し嬉しかった。

青嶌さんがスマートフォンを取り出し、どこかへ短く連絡を入れる。

「もしもし、お父さん?」

「今から帰るね。」

「うん。」

「話したいことがあるの。」

「それと……。」

「一緒に来てもらいたい子が二人いる。」

数秒、相手の話を聞いたあと、小さく微笑んだ。

「ありがとう。」

「もうすぐ着くよ。」

通話を切ると、俺たちへ振り返る。

「大丈夫。」

「お父さんには話を通したから。」

「二人とも安心して。」

そう言って微笑む青嶌さんに、俺と小紫さんは小さく頷いた。

駅を抜け、住宅街を十分ほど歩く。

やがて視界の先に、高い塀へ囲まれた大きな屋敷が姿を現した。

重厚な木製の門。

手入れの行き届いた庭木。

まるでテレビでしか見たことのないような立派な日本家屋だった。

思わず足が止まる。

「……すご。」

俺が思わず漏らすと、青嶌さんは照れくさそうに笑う。

「そう?」

「いや……。」

「想像してたより、何倍も大きい。」

「ふふっ。」

「じゃあ、入ろっか。」

そう言って青嶌さんが門へ近づく。

静かに門が開き、俺たちは青嶌家の敷地へ足を踏み入れた。

門をくぐると、外の喧騒が嘘のように静まり返った。

石畳の道が玄関まで真っ直ぐ伸び、その両脇には丁寧に手入れされた庭が広がっている。

風に揺れる木々の音だけが、静かに耳へ届いた。

「こっちだよ。」

青嶌さんの後を追いながら、俺は思わず辺りを見回す。

「……本当にすごい家だな。」

「そんなに?」

「うん。」

青嶌さんは少し照れくさそうに笑う。

小紫さんも青嶌家の広さに圧倒されたようで

「私も正直、緊張してきました。」

「ふふっ。」

「安心して。」

「お父さん、見た目ほど怖くないから。」

その言葉に小紫さんは少しだけ肩の力が抜ける。

玄関へ近づくと、扉がゆっくりと開いた。

「お帰りなさいませ、お嬢様。」

出迎えたのは、五十代ほどの執事だった。

黒の燕尾服を身にまとい、一分の隙もない所作で深く頭を下げる。

「ただいま、国守くにもりさん。」

「お父さんは?」

「旦那様は書斎にてお待ちです。」

「皆様もご一緒にとのことです。」

青嶌さんは小さく頷き、俺たちを振り返った。

「行こう。」

「きっと。」

「ここからが本番だから。」

俺と小紫さんは顔を見合わせ、小さく頷いた。

玄関へ足を踏み入れる。

磨き上げられた床に、自分たちの姿が映る。

静かな廊下を歩くたび、胸の鼓動が少しずつ速くなっていく。

やがて執事が、一枚の重厚な扉の前で立ち止まった。

「旦那様。」

「お嬢様と、お客様をお連れしました。」

扉の向こうから、落ち着いた低い声が返ってくる。

「……入りなさい。」

その一言に、俺は無意識に息を飲んだ。

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