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三人の男を見渡した。
スキンヘッド。
長髪。
金髪。
立ち位置、体格、重心、視線。
祖父に叩き込まれた癖で、無意識に相手を観察してしまう。
(武術経験者じゃない。)
喧嘩慣れはしているだろう。
だが、足運びは雑で重心も高い。
至る所に無駄な力が入っている。
(……いける。)
そう判断した。
「黄瀬。」
「あいよ。」
「金髪を頼めるか。」
「え、俺?」
「無理なら今言ってくれ。」
黄瀬は金髪の男をちらりと見ると、いつものように笑った。
「たぶん勝てるよ。」
「……根拠は?」
「自信!」
「分かった、信じるよ…笑。」
思わず苦笑が漏れる。
こんな状況でも、その調子か。
だけど、不思議と嫌な予感はしなかった。
「青嶌さん。」
「はい。」
「神白さんをお願いします。」
一瞬だけ青嶌さんのが驚きの表情を見せた。
けれど、それもほんの一瞬。
「……分かりました。」
短く返事をすると、神白さんの前へ半歩だけ出る。
その立ち姿に違和感を覚えた。
相手に対して正面を向けず、半身で立つ。
手は胸の高さで軽く開き、いつでも攻撃をガード・反撃できる態勢を作っていた。
まるで、対象者を守るそういう訓練を受けてきた人間みたいだった。
「高校生がカッコつけちゃって。」
スキンヘッドが肩を鳴らしながら笑う。
「漫画の読みすぎだろ。」
「痛い目見せりゃ――」
そこまでだった。
俺は軸足を力強く蹴り一歩踏み込む。
いや、踏み込むというより、腰を落とした勢いをそのまま前へ流す。
祖父が何千回も反復させた摺り足。
無駄なく間合いを詰める。
「ッ!?」
男の大振りな右拳が飛ぶ。
「無駄な力が入り過ぎ。」
見えている。
首をわずかに外すだけで軌道から外れた。
すれ違いざまに左手で男の手首を制し、重心の不安定な場所へ誘導し体勢を崩す。
そのまま浮いた顎へ、猿臂。
つまりは、肘打ちだ。
ガァッ!
乾いた音が響く。
男の瞳から一瞬、光が消えた。
膝が折れる。
倒れる前に胸ぐらと襟首を掴み、その勢いを利用して身体を回転させる。
「らぁッ!」
男の身体を長髪へ投げつけた。
「ぐあっ!?」
二人まとめて地面へ転がる。
そして残った金髪だけが、その場で呆然と立ち尽くしていた。
「黄瀬!」
「任せてん!」
金髪の男が舌打ちしながら距離を詰める。
「ガキが!」
右拳が飛ぶ。
黄瀬は飛んでくる右拳を半歩だけ後ろへ下がり、その拳を紙一重でかわした。
「えっと……」
こんな状況だというのに、黄瀬はどこか考え込むように呟く。
「昨日見た動画だと……。」
「まず軸足。」
左足をしっかり踏み込む。
「腰を回して。」
肩が開き、身体がしなる。
「最後に――」
右脚が鞭のように振り抜かれた。
パァンッ!!
乾いた破裂音。
足の甲が男の側頭部を正確に捉える。
「がっ!?」
男の首が勢いよく振られ、そのまま膝から崩れ落ちた。
「……あれ?」
蹴った本人が一番驚いていた。
「入った。」
男は白目を剥き、そのまま動かない。
黄瀬は自分の足と倒れた男を交互に見比べる。
「動画のおじさん、本当だった。」
「……。」
思わず言葉を失う。
(まさか。)
あれはテコンドーの回し蹴り。
初心者が見よう見まねで出せるような技じゃない。
それを、昨日動画で見ただけで。
「朝陽!」
黄瀬が満面の笑みを向けてくる。
「俺、できた!」
「……いや。」
俺は苦笑いを浮かべる。
「普通はできない。」
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