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護衛のバイト、してみませんか?  作者: 愚兎
護衛のバイト、してみませんか?
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10/14

2

三人の男を見渡した。

スキンヘッド。

長髪。

金髪。

立ち位置、体格、重心、視線。

祖父に叩き込まれた癖で、無意識に相手を観察してしまう。

(武術経験者じゃない。)

喧嘩慣れはしているだろう。

だが、足運びは雑で重心も高い。

至る所に無駄な力が入っている。

(……いける。)

そう判断した。

「黄瀬。」

「あいよ。」

「金髪を頼めるか。」

「え、俺?」

「無理なら今言ってくれ。」

黄瀬は金髪の男をちらりと見ると、いつものように笑った。

「たぶん勝てるよ。」

「……根拠は?」

「自信!」

「分かった、信じるよ…笑。」

思わず苦笑が漏れる。

こんな状況でも、その調子か。

だけど、不思議と嫌な予感はしなかった。

「青嶌さん。」

「はい。」

「神白さんをお願いします。」

一瞬だけ青嶌さんのが驚きの表情を見せた。

けれど、それもほんの一瞬。

「……分かりました。」

短く返事をすると、神白さんの前へ半歩だけ出る。

その立ち姿に違和感を覚えた。

相手に対して正面を向けず、半身で立つ。

手は胸の高さで軽く開き、いつでも攻撃をガード・反撃できる態勢を作っていた。

まるで、対象者を守るそういう訓練を受けてきた人間みたいだった。

「高校生がカッコつけちゃって。」

スキンヘッドが肩を鳴らしながら笑う。

「漫画の読みすぎだろ。」

「痛い目見せりゃ――」

そこまでだった。

俺は軸足を力強く蹴り一歩踏み込む。

いや、踏み込むというより、腰を落とした勢いをそのまま前へ流す。

祖父が何千回も反復させた摺り足。

無駄なく間合いを詰める。

「ッ!?」

男の大振りな右拳が飛ぶ。

「無駄な力が入り過ぎ。」

見えている。

首をわずかに外すだけで軌道から外れた。

すれ違いざまに左手で男の手首を制し、重心の不安定な場所へ誘導し体勢を崩す。

そのまま浮いた顎へ、猿臂えんぴ

つまりは、肘打ちだ。

ガァッ!

乾いた音が響く。

男の瞳から一瞬、光が消えた。

膝が折れる。

倒れる前に胸ぐらと襟首を掴み、その勢いを利用して身体を回転させる。

「らぁッ!」

男の身体を長髪へ投げつけた。

「ぐあっ!?」

二人まとめて地面へ転がる。

そして残った金髪だけが、その場で呆然と立ち尽くしていた。

「黄瀬!」

「任せてん!」

金髪の男が舌打ちしながら距離を詰める。

「ガキが!」

右拳が飛ぶ。

黄瀬は飛んでくる右拳を半歩だけ後ろへ下がり、その拳を紙一重でかわした。

「えっと……」

こんな状況だというのに、黄瀬はどこか考え込むように呟く。

「昨日見た動画だと……。」

「まず軸足。」

左足をしっかり踏み込む。

「腰を回して。」

肩が開き、身体がしなる。

「最後に――」

右脚が鞭のように振り抜かれた。

パァンッ!!

乾いた破裂音。

足の甲が男の側頭部を正確に捉える。

「がっ!?」

男の首が勢いよく振られ、そのまま膝から崩れ落ちた。

「……あれ?」

蹴った本人が一番驚いていた。

「入った。」

男は白目を剥き、そのまま動かない。

黄瀬は自分の足と倒れた男を交互に見比べる。

「動画のおじさん、本当だった。」

「……。」

思わず言葉を失う。

(まさか。)

あれはテコンドーの回し蹴り。

初心者が見よう見まねで出せるような技じゃない。

それを、昨日動画で見ただけで。

「朝陽!」

黄瀬が満面の笑みを向けてくる。

「俺、できた!」

「……いや。」

俺は苦笑いを浮かべる。

「普通はできない。」

本作をお読みいただき、誠にありがとうございます。

まだまだ読者の方も少なく、皆様がどのように感じられたか、そわそわとした気持ちでおります。

どのような些細なことでも、また率直なご意見でも大変励みになりますので、一言だけでも感想をいただけますと幸いです。


最後に気に入って頂けたら、ブックマークと評価のほど宜しくお願い致します

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