50話 二人で一つ
「おいおい、なんだそのふざけた戦い方は? ヤケになったか? ははは!」
男が見えない爆弾を起動した。
あちらこちらで爆発が起きて……
でも私は気にすることなく、りおちゃんをおんぶして駆けた。
体が限界を超えないように注意しつつ、しかし、できるだけ速く。
全力に近いくらいに。
風を超えて、音を置き去りにして。
「そのまま潰れろや!」
足に力を込める。
(……大丈夫……)
色々なことが怖いから、早く終わらせることだけを考えてきて。
魔物との戦いもすぐ終わらせたいからスピードに特化して。
そんな私だけど、でも、今はそれを誇ることができる。
(私は……爆発なんかよりも速い)
地面を蹴り、視界が一気に流れた。
「は?」
見えない爆弾がさらに連続して起爆した。
連鎖的に炎と衝撃が広がる。
ただ、それが広がるよりも先に、私はすでにその場を駆け抜けていた。
>消えた!?
>いや走っているんだ!
>速すぎるだろ!?
>複数のドローンでも追いかけきれてないぞこれ!?
爆風の間を縫うようにして走る。
一歩遅れたら巻き込まれる。
ただ、その『一歩』が私に届くことはない。
なにかも。
全部遅い。
「な……なんだよ、それ……!」
男の声が初めて揺れた。
「あ、ありえねえだろ……! くそ、どれだけ速いってんだ……!?」
距離が急速に縮まる。
目の前に迫る私達の姿に男は息を呑んだ。
……私は速いけど、射程が短い。
……りおちゃんは射程は長いけど、動きは普通。
なら二人を足してかけたら?
そんな考えから導き出したのが、この『おんぶ』だ。
私がりおちゃんの足になる。
そして、りおちゃんが火力担当として攻撃する。
その作戦はピタリとハマり……
「りおちゃん!」
「任せて!」
私は、りおちゃんをおんぶしたまま男の眼前に移動して。
そして、二丁拳銃が連続で火を噴いた。
至近距離からの全弾連射。
一発は小さな衝撃だとしても、何十発と喰らえばひとたまりもない。
男は吹き飛んで、壁に叩きつけられて崩れ落ちる。
「く、クソが……! 二人がかりとか、卑怯だろ……ちくしょうっ」
苦し紛れの叫び。
あなたがそれを言うか、と思う。
私達は胸を張り、男の前に並ぶ。
「私とひなちゃんは……」
「二人で一つ……です!」
同時に拳を振りかぶり、
ごんっ!
おしおきのげんこつが二人同時に炸裂したのだった。




