49話 切り札は誰しも持つ
「……なめるなよ」
男は、歪んだ笑みを浮かべたまま言った。
「俺の罠はそんな単純じゃねえ……最高のバズのために、ここで、徹底的に叩きのめしてやるよ」
「ひなちゃん……」
「はい……気をつけないと、ですね」
男の雰囲気が変わる。
とても危険な方向に。
私達は油断なく構えて……
しかし、予想外の方向から攻撃が飛んでくる。
ドンッ!
「えっ!?」
なにもないところで爆発が起きた。
炎が広がり、衝撃が撒き散らされる。
私は反射的にりおちゃんを抱えて跳んだ。
おかげで被害は最低限。
「な、なに今の……?」
りおちゃんが辺りを見回す。
爆弾の痕跡はない。
魔法陣も罠の光も何も見えない。
「ははは! 驚いてくれたか? なら切り札を切ったかいがあるってもんだぜ」
「あんた、なにをしたの!?」
「マジシャンが種明かしをすると思うか? って言いたいところだが、盛り上げねえといけないからな。今回は特別だ……見えない爆弾さ」
男は誇らしげに両手を広げて言う。
「視覚なし、音なし、もちろん気配もなし。無機物だから感知スキルも効かねえ。ついでに言うと、自由に動かすことができて、任意のタイミングで起爆が可能だ……こんな風にな」
ドンッ!
また爆発が起きた。。
今度は私のすぐ横で……
「あぅ……!?」
爆風で身体が弾かれてしまう。
危ういところでりおちゃんに受け止めてもらった。
「ひなちゃん、大丈夫!?」
「だ、大丈夫……ですっ!」
ただ、思っていた以上のダメージを受けてしまい、息が乱れる。
さっきからの戦いでりおちゃんもわりと限界が近い。
でも、男は罠に頼った戦いをしていたから、身体的な消耗は少ない。
魔力は減っているようだけど、時折、ポーションを飲んで回復させていた。
「ざまあみろ、ってやつだな。今度はお前らが逃げる番だ」
ドン、ドン、ドン!!!
連鎖的に爆発が起きる。
床が抉れ、壁が崩れる。
「……ど、どうすれば……?」
りおちゃんが焦りを帯びた声をこぼす。
見えない。
聞こえない。
予測もできない。
焦って当然だ。
「さて……ここらで終わりにするか。お前ら潰すのもバズりそうだなぁ?」
数字のことしか考えていなくて。
そのために人に迷惑をかけることをまるで悪びれていなくて。
……こんな人に負けたくない。
配信者なんて名乗ってほしくない。
だって……
りおちゃんっていう『本物』を知っているから。
「……りおちゃん」
「な、なに……?」
「今度は……私のことを信じてくれますか?」
「もちろん!」
即答。
それが嬉しい。
「ひなちゃんが言うことなら絶対だよ!」
「……ありがとうございます」
「ちっ……まだ余裕ぶってんのかよ。せいぜいあがけよ、その方が面白い」
男は、両手を広げた。
たぶん、見えない爆弾をさらにばらまいたのだろう。
それこそ空間を埋め尽くすほどに。
でも……
大丈夫。
私は一人じゃない。
りおちゃんがいる。
「りおちゃん……私に掴まってください」
「え?」
「……おんぶ、です」
「よくわからないけど、オッケー!」
私はりおちゃんをおんぶして。
そして、駆ける。




