48話 信じるということ
「うっ……くぅ!」
りおちゃんの顔が苦痛に歪む。
きっと動くだけでもすごく痛いはずだ。
「りおちゃん、無理しないでください!」
「無理……するよ! ひなちゃんが、がんばっているのに……私だけ、寝てなんて……いられない!」
「……りおちゃん……」
「……いくよ、りおちゃん」
りおちゃんは右手の銃をこちらに向けた。
「あぁ? なんだ、仲間割れか? いいぜいいぜ、そういうのも大歓迎だ!」
りおちゃんは男の声を無視。
まっすぐに私を見る。
信じて。
そう言っているかのようで、私はしっかりと頷いた。
そして射撃。
銃声。
銃弾がまっすぐに私の方に飛んできて……
しかし、私に当たることはなくて、私を拘束する魔法陣を砕いた。
「……ありがとうございます、りおちゃん」
「うん……!」
りおちゃんと並び立つ。
そんな私達を見て、男は舌打ちする。
「くそが……罠を破るためとはいえ、普通、味方に銃口を向けるか?」
「あ、あなたには……なにもわからないと思います」
「私達は信じているからね!」
「うぜえな……あー、マジでうぜえ! でもな!」
男が指を鳴らす。
床が、壁が、天井が……一斉に光る。
「罠はそれだけじゃねえんだよ!」
拘束系、ダメージ系、状態異常系……複数の罠が起動して、部屋の至るところに配置された。
この人……爆弾使いかと思っていたけど、違う。
罠使いだ。
私が近接戦、りおちゃんが銃撃に特化しているように、この人は罠に特化している。
……厄介だ。
「ちと予定が狂ったが、調子に乗ったガキどもに天誅を下す、ってのもウケるよなぁ? 俺が引導を渡してやるよ!」
「それは私達の台詞だよ!」
「す、好きにはさせません……!」
りおちゃんはポーションを飲んで回復。
両手に銃を構えて乱射。
その援護を受けつつ、私は前に出て拳を……
「甘えんだよ!」
罠が起動して巨岩が降ってきた。
回避に専念するしかなくて後退。
その間もりおちゃんが牽制射撃を続けてくれているものの、決定的な一打には届かない。
私が前に出て。
りおちゃんが射撃して。
そして、男が無数の罠で迎え撃つ。
「……くぅ……!」
攻めきれない。
罠を避ければ距離が開く。
近づけば罠が待っている。
本当に厄介だ。
もう一回、全力で……ううん。
あれは一日にニ度は使えない。
動けるかもしれないけど、動けなくなるかもしれない。
失敗したらそこで終わり。
リスクが高すぎる。
そうなると……
「ひなちゃん!」
りおちゃんが叫ぶように言って、私を見る。
じっと目を見る。
……それだけでわかった。
私はゆっくりと頷く。
「えへへ」
りおちゃんは嬉しそうに笑って。
そして……前に出る。
「なっ……!?」
遠距離担当による真正面からの突撃。
明らかに無謀な突撃に、さすがの男も戸惑いを見せた。
それでも反射が体に染み付いているのか、罠を起動して……
「……今です」
男が動揺した一瞬の間に拾った石を投げる。
魔物なんかと近接戦をしたくない。
遠距離で戦い。
一時期、そんなことを考えていたため、投石の練習をしていたことがある。
りおちゃんはそのことを知らないはずだけど……
ただ、どうにかして『動きを止めてほしい』と期待してくれていた。
私ならできると信じていた。
だから、私はそれに応える。
「ぐっ!?」
男の手に石がヒット。
罠の起動が遅れて……
その間にりおちゃんが接近する。
ダダダダダッ!!!
ゼロ距離射撃。
しかも連射。
男が吹き飛んで地面に転がる。
りおちゃんが不敵に笑う。
「いぇーい!」
「……い、いぇーい……!」
以前より少し大きな声で、軽くハイタッチした。
>可愛い
>可愛いがすぎる
>息ぴったり
>長年の夫婦のよう
コメント欄の視聴者さん達も喜んでくれているみたい。
ただ……
「くそがっ……!」
ふらふらとしつつも、男が立ち上がる。
たぶん、防御力の高い装備を身につけていたんだろう。
りおちゃんの射撃は正確無比だけど、弾丸は普通の魔力弾なので、人相手に効果は薄い。
「むぅ……やるなら全弾叩き込んでおくべきだったか」
「なら、またやればいいだけ……です!」
「調子に乗るんじゃねえぞ……俺の罠はこんなもんじゃねえ!!!」
男の周囲に嫌な気配が広がる。
「さあ、本当のショータイムだ。存分に楽しもうぜ?」




