表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

47/49

47話 本気

「りおちゃん!」


 慌てて駆け寄り、りおちゃんを抱き起こす。


「うぅ……ひな、ちゃん……」


 よかった……ぼんやりだけど意識はあるみたいだ。


 でも……


 左肩のあたりにはっきりとした火傷。

 それと、血。


「大丈夫です」


 声は落ち着いている。

 自分でも驚くくらい冷静でいられた。


 いや。

 あるいは……


「少し待っていてください」


 りおちゃんをそっと床に寝かせて。

 そして、魔物の群れと対峙する。


 魔法陣の輝きはだいぶ薄くなっていた。

 これまでのことを考えて予想すると、残りは二百体くらい?


 ……なにも問題ない。


「パートナーをかばって孤軍奮闘、ってか? いいね、実に絵になるよ。お前、エンタメってのをちゃんと理解してるじゃねえか。その調子でもっとがんばって……は?」


 男は無視。

 まずは魔物だけに集中して、私は前に出た。


「おい……どこに行った? なんで消えた?」


 やっぱり男は無視。

 今は気にしていられない。


 加速。

 加速。

 加速。


 殴りつけて。

 蹴り飛ばして。

 手当たり次第に魔物を片付けていく。


 砕ける。

 潰れる。

 四散する。


 私の『全力』の加速と攻撃に耐えられず、魔物が次々と魔石になる。


 一体、二体、三体……

 十体、二十体、三十体……

 私達の軌道上にある魔物達がことごとく消えていく。


 邪魔をするな。

 私達の邪魔をするな!


>なんだこれ……

>瞬間移動? 分身?

>今までで一番速い

>今まで本気じゃなかったってこと!?


 私は止まらない。

 ひたすらに動いて、魔物を撃破していく。


 前へ、横へ、上へ。

 床を蹴り、壁を踏み、天井すら足場にして、あらゆる方向からの攻撃をほぼ同時に叩き込んでいく。


「は、はあ? なんだよ、これ……」


 男の困惑の声が聞こえてきた。

 でも、今は無視。

 魔物の相手だけに集中して……


「終わり」


 増援を含めて、全ての魔物を殲滅した。


「……」


 男は声がない。


「……」


 りおちゃんも驚いているみたいだった。


「残りは……」

「ひっ!?」


 男を見ると、びくっと震えられた。


「お、おいおい……冗談だろ? 盛り上げるための演出だろ、こんなもん。誰だってやってるさ」

「そんなことは関係ない」

「あ?」

「りおちゃんを傷つけた。絶対に許さない」


 りおちゃん。

 私の大事な友達。

 守ることができるのなら、なんでもする。

 私なんて『どうなっても』いい。


 私は次なる一歩を踏み出して……


「あっ……!?」


 ビキィッ! という感じで全身に激痛が走る。

 神経を直接刺されているような感じで。

 あまりの痛みにまともな悲鳴が出てこない。


 しまった……もうタイムアウトだ。


 さっきまでの『全力』の加速……あれは諸刃の剣だ。


 人間、無意識のうちに体にリミッターをかけている。

 本来はすごい力を出せるけど、でも、そうしたら体が傷ついてしまうから、そうならないように。


 私はそのリミッターを意図的に解除して、いつも以上に『速く』動けるようにした。

 私が持つ切り札の一つだ。


 ただ、長時間は保たない。

 時間切れになると同時に、無理をした反動でものすごい痛みに襲われてしまう。

 今まで使わなかったのもそのせいだ。


「な、なんだ……? よくわからねえが、今がチャンス……ってことか? はは、俺ってツイてるな。日頃の行いがいいせいか?」

「くっ……!」

「ってなわけで……こいつも追加だ」


 男がパチンと指を鳴らした。

 次の瞬間、足元から光の線が走る。


 床、壁、天井。

 一斉に展開される魔法陣が私の体を宙で拘束する。


「なに……これ……!?」

「ははははは!」


 男は腹を抱えて笑った。


「ばーか! 無策で真正面から来るわけねえだろ? こういう保険はかけておくもんだ」

「……っ……」

「ま、確かにてめえは強いな。でも、対人戦の経験は薄いだろ? だから、こういう搦手にはとことん弱い……ははっ、ざまあねえな!」

「うぅううう……!!!」

「睨んでもなにもできなきゃ意味ねえよ。さて……今度こそ『いい絵』だな。もっかい魔物を呼び出して……」

「ひなちゃん!」


 ダンッ!!!


「ぐぁ!?」


 男の腕を弾丸が貫いて、手の平に集まりかけていた魔力が霧散した。


「りおちゃん!?」

「ひなちゃんを……これ以上……」


 りおちゃんはぼろぼろで。

 右手でしか銃を持てなくて。


 そんな状態なのに、とても強く言う。


「やらせない!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ