46話 画面の向こうで叫ぶ声
最初はいつも通りだった。
推しのひなりおコンビ。
二人がイベントに参加することになって、視聴者は大いに盛り上がった。
もしかしたら、あの二人なら優勝するかも?
そんな期待と共に配信を見て、ありったけの応援をした。
>ひなりお強い
>マジでそれ
>ホワイトウイングにも勝つとかありえないだろw
>まあ手加減されてたっぽいけどな
>それでも普通は勝てないだろ
>気に入られてたみたいだし贔屓じゃね?
>アンチ乙
>あの攻撃で贔屓ってなら他の人は地獄だろw
たまに変なコメントが紛れ込むものの、概ね平和だった。
>助けを求めるとか運営でよくね?
>でもひなちゃんなら助けに行きそう
>優しい子
>りおちゃん仕方ないなって顔してるw
>ママみw
>りおママは俺のママ
>俺のりおちゃんなんだが?
>みんなのだ
トラブルが起きた時、多くの視聴者は二人の選択を尊重した。
ただし。
一部の視聴者は『それ』に気づいていた。
>ちょっと待てこいつ見たことあるぞ
>たぶんこいつ迷惑系だ
>ひなちゃんりおちゃん気づいて!
画像が切り替わる。
大量の魔物。
逃げ場のない部屋。
そして……
『ははは、ばーか!』
スピーカー越しに響いた下卑た笑い声。
ひなとりおを罠にはめた配信者……迷惑系ダンジョン配信者だ。
>は?
>なんだこいつ?
>最悪だろ!
>魔物部屋に連れて行くとかクズすぎる!
>二人とも逃げて!
>おい誰か通報しろ!
>もうした!
>でも間に合うのか?
>逃げて!!!
視聴者達が叫ぶ。
ただ、その声が届くことはない。
二人は必死に戦い、コメント欄を見る余裕が欠片もない。
>運営まだか!?
>ひなちゃんりおちゃん真面目にやばい!
>いやわりと耐えているぞ!?
>本当だ
>すごい
>これならいけるか!?
>いけー!
期待が高まる。
しかし、それは打ち砕かれることに。
遠距離からの爆発。
ひなとりおの悲鳴が響いて、コメント欄が再び揺れる。
『ほら、サービスだ』
男が魔力で爆弾を生成して、それでひなとりおを狙い撃ちする。
魔物の対処だけでかなり手一杯。
そこに男からの攻撃が加わり、ひなとりおはどんどん追い詰められていく。
>こいつ最悪だ!
>ふざけるな! いくらなんでもやりすぎだろ!
>やっていいことと悪いこともわからないのかよ!
>人の命をエンタメにするな!
>マジで通報した
直接、男のチャンネルに乗り込む視聴者もいた。
>おいやめろ
>今すぐやめろ
>やりすぎだ!
>人殺しになるぞ
コメントを見た男は鼻で笑う。
「はは。騙されるやつが悪いんんだよ。それにさ……」
男は肩をすくめた。
「上層だろ? 死なねえって。せいぜい入院くらいだろ」
>んなわけねえだろ!?
>こいつ本物のクズだ
>自分がやってることの大きさをまったく理解してない……
>最悪すぎる
画面の向こうで、ひなとりおは必死に戦う。
連携。
フォロー。
それでも数が減らない。
そして、限界が訪れる。
男が笑いながら爆弾を投げて……
爆発。
りおの身体が吹き飛ばされる映像がはっきりと映った。
>りおちゃん!?
>嘘だろ!?
>やめろやめろやめろ!
>ひなちゃん、りおちゃんを助けて!
>ひなちゃんも限界だろ!?
>誰か本当になんとかしてくれ!
コメント欄は阿鼻叫喚だった。
ただ……
それとは正反対に、ひなはとても落ち着いていた。
『りお……ちゃん……?』
『はははっ、いいねいいね! こういうのが俺好みなんだよ。ほら、もっと必死になって盛り上げてくれよ。視聴者に最高のエンターテイメントを届けようぜ? 俺等の合作だ、はははははっ!!!』
その瞬間。
画面越しでもはっきりとわかるほど、ひながまとう『空気』が変わった。
>これ……
>なんだ?
>なにが起きて……
誰かが打つ。
>怒らせた……?




