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45/49

45話 追い詰められて、追い込まれて

 多い。

 とにかく多かった。


「こ、の……っ!」


 地面にしっかりと足をつけて。

 拳を連打。


 迫る魔物の群れにそれぞれ一撃ずつ当てて、撃沈させた。

 魔石に変わる。

 でも、魔物の波が途切れることはない。


「こっちに来るなー!」


 りおちゃんは両手の拳銃を連射して、ひたすらに弾丸をばらまいた。

 相手は百以上の魔物。

 狙いなんてつけなくても当たる。


 それでも。

 やはり、魔物の波が途切れることはない。


「ひ、ひなちゃん……これ、ちょっと多すぎない?」


 りおちゃんの声がわずかに震えていた。


「魔物部屋……ですね。あの人は、ここを事前に突き止めていて……」

「いける、かな……?」

「だ、大丈夫……です! 上層ですし、一体一体は……」


 それが気休めっていうのは、私が一番よく理解していた。


 たとえば、RPGの序盤。

 最初だから強い敵は出でこないし、苦戦することはない。


 でもたまに、弱い敵がたくさん出てくることがあって……

 その時は、一方的に攻撃されるだけで負けてしまう。


 それと同じような状況。

 上層の魔物だから撃退はできるけど、でも、数が多すぎる。

 それに、まだまだ魔法陣から増援が現れ続けていて……


>数やばいぞ

>これイベントレベルじゃないだろ

>迷惑系マジで殺す気か

>ふざけるな

>運営早くしてくれ!


「こ、の……っ!!!」

「えーいっ!!!」


 私が拳と脚で。

 りおちゃんが両手の銃で。

 それぞれ魔物を撃退していく。


「よ、よし……!」


 今のところ、なんとかなっていた。

 魔物の増援は止まらないけど、でも、押し切られることはない。

 体力も魔力もまだまだ余裕がある。


 魔物部屋に現れる魔物は無限じゃない。

 一定時間を耐えれば増援はなくなる。

 そこまで耐えることができれば……


「っ!? りおちゃん!!!」

「え?」


 背中がぞわっとするような嫌な予感。

 私は本能に従い、りおちゃんを抱きしめるようにして、後ろに大きく跳んだ。


 直後。


 ドォンッ!!!


 爆発。

 そして衝撃が広がる。


「おー、今のを避けるか? いいじゃん。マジで褒めてやるぜ」


 そう言う男の手には、輝く光の球。

 魔力を感じる。

 たぶん……あれが男の武器。

 魔力を凝縮して、爆弾を生成しているんだろう。


「なんか、思ってたよりも余裕っぽいからさー。でも、それじゃあつまらねえだろ? 視聴者は、ギリギリのピンチってもんを見たいのさ。だから俺は、エンターテイナーとしてそれを提供する義務がある……ってこと、ほら、サービスだ」


 次々と爆弾が飛んでくる。

 りおちゃんを抱えて回避の連続。


 ただ、爆弾だけじゃなくて魔物にも注意しないといけない。

 こんな状況でも魔物達は襲ってきて……

 でも、その対処に専念することができなくて、どんどん追い詰められていく。


「このっ!」


 りおちゃんが降りて、男に向けて銃撃する。

 ただ、立ち位置が悪く、遮蔽物に阻まれてしまう。


「やめなさいよ! アンタ、最低だよ!」

「ははは! いいねいいね!」

「なんで笑っていられるの!?」

「楽しいからに決まってるだろ? お前らがそうやって苦しむってのは、いいスパイスになるんだよ。それが『ドラマ』ってもんだろ?」

「このっ……!」


 りおちゃんはさらに射撃しようとするけど、魔物が近づいていることに気づいてターゲットを変更した。


 そこに爆弾が飛んできて……


「りおちゃん!」


 私が間に入り、光球を殴り飛ばした。


>ひなちゃんナイス!

>ってか爆弾だろあれ?

>殴れるものなのか?

>ひなちゃんだし

>ひなちゃんだし

>納得w


 コメント欄にちょっと心が安らいで。

 でも、ピンチは依然として途切れず。


 ……けっこう危ないかもしれない。


 どうする?

 どうすればいい?

 この状況を乗り切るためには……


 ……って。

 あれこれ考えていたのがいけなかったのかもしれない。


「……ぁ……」


 魔物と戦い。

 爆弾を回避して。

 そうやってギリギリのところで動いていたけど、それも限界で。


 ……りおちゃんの前に爆弾が。


「りおちゃん!?」

「ひな……」


 ドォンッ!!!


「きゃあああああ!?」


 りおちゃんが吹き飛ばされて、壁に激突して。

 そのまま、ぐったりとした様子で倒れる。


「りお……ちゃん……?」


>りおちゃん!?

>嘘だろ……

>やめてくれよ……

>なんだよこれ!?

>あいつマジ許さねえ!


「はははっ、いいねいいね! こういうのが俺好みなんだよ。ほら、もっと必死になって盛り上げてくれよ。視聴者に最高のエンターテイメントを届けようぜ? 俺等の合作だ、はははははっ!!!」


 ぷつん、と。

 私の中で、なにかが音を立てて……切れた。


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― 新着の感想 ―
あー「パートナーを傷つけられる」という暗い娘共通の逆鱗を踏みつけてしまったか。 この手の陰陽レズップルは普段は明るい娘に引きずられている暗い娘の方が怒らせると危険なんだよね。 天才令嬢、竜の姫、・・・…
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