45話 追い詰められて、追い込まれて
多い。
とにかく多かった。
「こ、の……っ!」
地面にしっかりと足をつけて。
拳を連打。
迫る魔物の群れにそれぞれ一撃ずつ当てて、撃沈させた。
魔石に変わる。
でも、魔物の波が途切れることはない。
「こっちに来るなー!」
りおちゃんは両手の拳銃を連射して、ひたすらに弾丸をばらまいた。
相手は百以上の魔物。
狙いなんてつけなくても当たる。
それでも。
やはり、魔物の波が途切れることはない。
「ひ、ひなちゃん……これ、ちょっと多すぎない?」
りおちゃんの声がわずかに震えていた。
「魔物部屋……ですね。あの人は、ここを事前に突き止めていて……」
「いける、かな……?」
「だ、大丈夫……です! 上層ですし、一体一体は……」
それが気休めっていうのは、私が一番よく理解していた。
たとえば、RPGの序盤。
最初だから強い敵は出でこないし、苦戦することはない。
でもたまに、弱い敵がたくさん出てくることがあって……
その時は、一方的に攻撃されるだけで負けてしまう。
それと同じような状況。
上層の魔物だから撃退はできるけど、でも、数が多すぎる。
それに、まだまだ魔法陣から増援が現れ続けていて……
>数やばいぞ
>これイベントレベルじゃないだろ
>迷惑系マジで殺す気か
>ふざけるな
>運営早くしてくれ!
「こ、の……っ!!!」
「えーいっ!!!」
私が拳と脚で。
りおちゃんが両手の銃で。
それぞれ魔物を撃退していく。
「よ、よし……!」
今のところ、なんとかなっていた。
魔物の増援は止まらないけど、でも、押し切られることはない。
体力も魔力もまだまだ余裕がある。
魔物部屋に現れる魔物は無限じゃない。
一定時間を耐えれば増援はなくなる。
そこまで耐えることができれば……
「っ!? りおちゃん!!!」
「え?」
背中がぞわっとするような嫌な予感。
私は本能に従い、りおちゃんを抱きしめるようにして、後ろに大きく跳んだ。
直後。
ドォンッ!!!
爆発。
そして衝撃が広がる。
「おー、今のを避けるか? いいじゃん。マジで褒めてやるぜ」
そう言う男の手には、輝く光の球。
魔力を感じる。
たぶん……あれが男の武器。
魔力を凝縮して、爆弾を生成しているんだろう。
「なんか、思ってたよりも余裕っぽいからさー。でも、それじゃあつまらねえだろ? 視聴者は、ギリギリのピンチってもんを見たいのさ。だから俺は、エンターテイナーとしてそれを提供する義務がある……ってこと、ほら、サービスだ」
次々と爆弾が飛んでくる。
りおちゃんを抱えて回避の連続。
ただ、爆弾だけじゃなくて魔物にも注意しないといけない。
こんな状況でも魔物達は襲ってきて……
でも、その対処に専念することができなくて、どんどん追い詰められていく。
「このっ!」
りおちゃんが降りて、男に向けて銃撃する。
ただ、立ち位置が悪く、遮蔽物に阻まれてしまう。
「やめなさいよ! アンタ、最低だよ!」
「ははは! いいねいいね!」
「なんで笑っていられるの!?」
「楽しいからに決まってるだろ? お前らがそうやって苦しむってのは、いいスパイスになるんだよ。それが『ドラマ』ってもんだろ?」
「このっ……!」
りおちゃんはさらに射撃しようとするけど、魔物が近づいていることに気づいてターゲットを変更した。
そこに爆弾が飛んできて……
「りおちゃん!」
私が間に入り、光球を殴り飛ばした。
>ひなちゃんナイス!
>ってか爆弾だろあれ?
>殴れるものなのか?
>ひなちゃんだし
>ひなちゃんだし
>納得w
コメント欄にちょっと心が安らいで。
でも、ピンチは依然として途切れず。
……けっこう危ないかもしれない。
どうする?
どうすればいい?
この状況を乗り切るためには……
……って。
あれこれ考えていたのがいけなかったのかもしれない。
「……ぁ……」
魔物と戦い。
爆弾を回避して。
そうやってギリギリのところで動いていたけど、それも限界で。
……りおちゃんの前に爆弾が。
「りおちゃん!?」
「ひな……」
ドォンッ!!!
「きゃあああああ!?」
りおちゃんが吹き飛ばされて、壁に激突して。
そのまま、ぐったりとした様子で倒れる。
「りお……ちゃん……?」
>りおちゃん!?
>嘘だろ……
>やめてくれよ……
>なんだよこれ!?
>あいつマジ許さねえ!
「はははっ、いいねいいね! こういうのが俺好みなんだよ。ほら、もっと必死になって盛り上げてくれよ。視聴者に最高のエンターテイメントを届けようぜ? 俺等の合作だ、はははははっ!!!」
ぷつん、と。
私の中で、なにかが音を立てて……切れた。




