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42/50

42話 負けた方が楽・前編

 すごく強い、って思っていた。

 でも、実際に戦ってみると想像以上だった。


「おらぁ!!!」


 零士さんが持つ大剣が振り下ろされて、衝撃波が地面を走る。

 ちゃんと避けたのに、でも、避けきれていない。

 思っていた以上に威力が強くて、余波で体が浮いてしまう。


「ひなちゃん!?」

「こーら、よそ見してていいの?」


 芹那さんが片手を動かすと、キラリとなにかが閃いた。

 糸だ。


 生き物のように動いてリオちゃんに絡みついた。

 そのまま、ぐいっと引っ張られて……

 それから、ぽーんと投げ捨てられる。


「あわわわ!?」


 りおちゃんは器用に空中で回転して、壁に足から着地。

 ダメージをゼロに抑えることに成功する。


「この!」


 反撃。

 両手の銃を連射した。


 しかし、弾丸が芹那さんに届くことはない。

 その手前で、見えないなにかに当たり弾かれてしまう。


 あれも……たぶん、糸だ。

 一瞬で防御網を構築してみせた。

 ……片手で。

 しかも、その場から動くことなく。


「私、だって……!」


 体勢を立て直して、地面を蹴る。

 加速。

 加速。

 加速。

 重力を振り切り壁を走る。

 さらに天井へ。


 死角に回り込み、直上からの一撃。

 わりと全力の踵落としを零士さんにぶつけるのだけど……


「曲芸師みたいなことしやがるな」

「っ……!?」


 簡単に防がれてしまう。


 タイミングは完璧だったはず。

 なら、足りていないのはパワーとスピード……?


 でも。


 『これ以上』は、本気で危ないと思う。


「俺は、てめえみたいに軽くはねえが……それなりに重いぞ?」


 零士さんは、自分の体ほどもある大剣を軽々と振り回す。


 たぶん、簡単に岩を砕くと思う。

 それでいて、その軌道は変幻自在。

 予測が難しく、回避が……


「ひなちゃん!」


 りおちゃんの援護。

 一点集中の精密射撃で、零士さんの大剣に弾丸が突き刺さり、その軌道を変えた。


 その隙に、私は一度後方に……


「逃さないわよ?」

「ぴゃあ!?」


 ぐん、と足が引っ張られて転んでしまう。

 いつの間にか芹那さんの糸が絡みついていた。


 私は、そのまま宙に吊り上げられて……


「あわわわ!? す、スカートが!?」

「あらあら♪ 困ったハプニングね」

「芹那さん……あんた、狙ってるだろ」


>ナイス!

>ナイス!

>ナイス!

>お前ら……

>りおちゃんも吊り上げてくれ!

>通報しました


 視聴者さん!?


「このっ!」


 体を捻るようにして、ぐいっと回転。

 その勢いで拘束を解いて、近くの壁を蹴り、今度こそ後退に成功した。


「ひなちゃん、連携強化でいこう!」

「は、はい!」


 芹那さん、零士さんはすごく強い。

 りおちゃんと協力して、ピタリと息を合わせないとダメだ。


 でも、私達ならそれができるはず。


 私が前に出て、拳と脚で戦い。

 りおちゃんが後方からありったけの弾丸をばらまいて援護をする。


 対する芹那さんは糸を自由自在に操り、私達の動きを制限する。

 零士さんは大剣を振り回して強烈な攻撃を繰り返してくる。


 力と力。

 速さと速さ。

 技と技。


 色々なものが激突して、競り合い、打ち負かしていく。

 あるいは打ち負かされていく。


 一進一退の攻防。

 まだ十分も経っていないのに、感覚的には一時間は戦っているような気がした。

 それほどまでに精神的な消耗が激しい。


「遅え!」


 零士さんの踏み込み。


 重い。

 速い。

 辛うじて紙一重でかわす。


 でも……


「……ぁ……」


 先に零士さんが割った床の亀裂に足が取られてしまう。


「ひなちゃん!?」


>まずいまずい!?

>相手レベチ

>ひなちゃん下がって!

>逃げろ!

>怪我する前に降参した方が

>十分がんばったよ


 視聴者さん達のコメントが見えて、それに甘えたくなる。


 そうだ。

 ここ負ければ終わる。

 別に死ぬわけじゃないし、それに、注目を浴びることもない。

 それなら、負けた方が楽だと思う。


 なら……


>諦めたらそこで試合終了ですよ

>こんな時にボケるな

>わりとマジだw

>まあわかるw

>がんばれ! いける!

>ひなりおならやれる!


 応援のコメントも流れた。


 こんな私を見ている人がいる。

 こんな私に期待してくれている人がいる。


 なら、私は……

次回更新から、週三回、月・水・金となります。

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