40話 運営は大変です
イベント運営用のモニタールーム。
複数のスクリーンにダンジョン内部の映像が映し出されている。
ドローンだけではなくて、事前に取り付けた固定カメラ。
そして、参加者達の配信映像。
さらに人力による撮影。
ありとあらゆる角度からダンジョン内の様子を確認していた。
「ふむ……今のところ問題なしね」
芹那は、腕を組みながらモニターを眺める。
事故報告、ゼロ。
禁止行為、ゼロ。
妨害はあるがルールの範囲内。
「みんな、ちゃんと大人ね」
少しだけ拍子抜けしたように微笑む。
それから、同じくモニターを監視するメンバーに声をかける。
「みんなの方はどう?」
「異常ありません」
「同じく」
「ダンジョン内の魔力反応も平常値……事故が起きる確率は、今のところほぼゼロです」
「オッケー。ただ、『絶対』なんていうことはないから、気を抜かずにしっかりね?」
「「「はい!」」」
万全の準備を期したおかげで今のところ問題なし。
探索系のスキルを持っている者に監視をさせて。
いざという時に備えて、戦闘に特化したメンバーにも待機してもらっている。
今のところ順調といっていいだろう。
「……さて」
芹那は、とある画面に視線を向けた。
「ひなりおは――」
ちょうどその時。
画面の中で、小柄な女の子が必死な顔で手を振っていた。
『お、おおお、お願いです! 命だけは……!』
次の瞬間、映像がぶれた。
ドローンが追いきれていないのだ。
そして、三人の参加者達が綺麗に床に転がる。
『……あ』
やってしまった、というような顔。
それを見た芹那は、思わず笑ってしまう。
「相変わらずね、あの子」
命乞いしながら瞬殺。
しかも、本人は本気で謝っている。
「零士、今の見た?」
「ああ」
壁際に立っていた獅堂零士が腕を組んだまま答える。
「……あれ、どう見ても異常だろ」
「そうね。でも、本人はまったく自覚なし」
「俺が言うのもなんだが、なんであんな面倒な性格になっているんだ?」
「そこなのよねえ……今度、調べてみようかしら?」
「おい、それは……」
「冗談よ。勝手に人のプライバシーを暴くような真似はしないわ。気になるのは本当だけどね」
芹那は冗談めかしたように笑い。
それから、真面目な表情を作る。
「さて、と……それじゃあ、そろそろ私達も準備しましょうか?」
「ったく……芹那さんも意地の悪いことを考えるよな」
「でも、楽しそうでしょう?」
「……否定はしねえよ」
――――――――――
ダンジョン内のとある場所。
物陰に隠れるようにして、一人の参加者が立ち止まっていた。
(悪くない)
配信画面を開きながら男は口元を歪める。
賞金。
賞品。
どれも魅力的だ。
(ま、そんなもんはどうでもいい。それよりも……)
こういうイベントは最高の舞台。
人が多く、注目も集まる。
(なにか一つ、大きな事件を起こせば……)
男はスマホを操作して、参加者一覧をスクロールする。
登録者数万を超えている有名配信者。
企業案件を簡単に取ってくるようなトップクランメンバー。
(こいつらはダメだな)
手を出せば逆に潰される。
なら、狙いどころは?
「……ひなりお……」
登録者数、急上昇中。
話題性、十分。
「……ちょうどいい」
男は、にやりと笑った。
(片方は新人で、片方はそこそこの人気がある。しかも女二人。注目度は高い……良いエサになってくれそうだ)
男はスマホをポケットにしまい、ゆっくりと歩き出す。
ダンジョンの奥へ。
獲物のいる方向へ。
「さて……面白くしてやろうじゃねえか」
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