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38話 イベント開幕!

 ダンジョンの入り口となるゲート前。


 普段はダンジョン配信者達で賑わう場所なのだけど……

 今日は倍以上の人がいて、異様な空気に包まれていた。


「……ひ、人が……」

「多いねー! すっごーい!」


 りおちゃんは目を輝かせているが、私は真逆だ。

 有名配信者、有名クラン、有名顔。

 私、本当にこんなところにいていいのかな……?


 すでにドローンが宙を舞い、配信者さん達がそれぞれの視聴者に向けて話している。


 トップクラン『ホワイトウイング』によるイベント開催。

 このお祭りに誰もが心奪われて、楽しくわくわくとはしゃいでいた。


 ……私は胃が痛い。


「ひなちゃん、大丈夫?」

「だ、大丈夫じゃないです……帰りたい……」

「諦めよ! もう来ちゃったからね!」


 りおちゃんって、たまに鬼にならない?


「……みんな、今日はありがとう」


 マイクでもよく通る声が響き、ざわついていた周囲が一気に静まる。


 あらかじめ用意されていた壇上に芹那さんが上がる。

 不敵な笑みを浮かべつつ、イベント開催者としての言葉を紡ぐ。


「こうしてたくさんの人が参加してくれて、イベント主催としてとても嬉しく思うわ。改めて、ありがとう。今日は、みんなで協力して、今までにないくらい盛り上げていきましょう。もちろん、ただイベントを楽しむだけじゃなくて、皆、優勝を狙ってほしい。今回はたくさんの企業がスポンサーについてくれたから、賞品が盛りだくさん。MVPもあるし、珍プレイ大賞なんていうのもあるから、色々な方面でがんばってほしいわ」


 拍手と歓声。

 その反応を満足そうに受け止めて、芹那さんはさらに続ける。


「ルールはシンプルよ。上層ボスを誰が一番早く倒せるか? 細かいルールは事前に通達した通り。ただ……ここでもう一度念押しで言うとしたら、妨害はあり、ってところかしら? ボス討伐だけじゃなくて、他の配信者の動向も気にしないとダメよ。ただし……妨害は常識の範囲内で、ね?」


 その笑顔に逆らってはいけない圧を感じた。


「安全管理は、私達、運営が徹底するわ。事故や事件を起こしたら即失格。他にも、私達の判断で失格、あるいは強制的にギブアップにすることもある。そこの細かいところは言語化したらキリがないのだけど、私達は公平で公正な判断をすると約束するわ。あ、そのためにも、リスナーさん達は相手の情報を教えたりしないでね? 普通に話をする分にはいいんだけど、情報を扱うとなると不公平になっちゃうから」


 ……そんな感じで。

 芹那さんの口からイベントについて語られて、ルールの再確認などが行われた。


 皆、しっかりと聞いて。

 そして、絶対に勝つぞ! という闘志を燃え上がらせていた。


 私でも知っているような有名な配信者さん達。

 『ホワイトウイング』ほどではないけれど、かなり有名なクランの人達も参加しているのが見えた。


 一方の私は縮み上がるだけで……


(勝てるわけない……)


「ひなちゃん」


 りおちゃんが私の手を軽く握る。


「一緒にがんばろ?」

「……りおちゃん……」

「だいじょーぶ! 私達ならいけるよ! 優勝しよ?」

「……が、がんばり……ましゅ!」


 噛んでしまった。

 でも、気持ちは伝わったみたいで、りおちゃんは嬉しそうに笑う。


「……さて、長い前置きはこれくらいにしておこうかしら?」


 壇上の芹那さんが奥にいるスタッフさん達に手で合図を送る。


 第三者視点のためなのか、新たに複数のドローンが追加された。

 テレビカメラも回る。

 MCを務める芸能人の人がカメラに向かって喋る。


 ……いよいよだ。


「みんな、準備はいいかしら?」

「「「……」」」


 皆、静かに頷いた。

 私とりおちゃんも小さく頷いた。


 そんな反応に芹那さんは満足そうに笑う。


「ふふ。みんな、良い顔ね。今日のイベントがどうなるか? それはわからないけど……これなら、きっと素敵で、とても楽しいものになると思うわ」


 さらに複数のドローンが飛ぶ。

 それらは光を発してゲート前を彩り、ライブ会場のように盛り上げていく。


 その中心に立つ芹那さんは、不敵な笑みを携えたまま、片手を上げる。


「それじゃあ……」


 会場が息を呑む。


「カウントダウン、いくわよ?」


 ……五。


 心臓が跳ねる。


 ……四。


 逃げたい。


 ……三。


 でも、逃げられない。


 ……二。


 りおちゃんの横顔が頼もしく見える。


 ……一。


 がんばろう。


「スタート!!!」

「「「おおおおおぉおおおーーーーー!!!」」」


 街が震えるような声と共にイベントが開催された。

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