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37話 イベントの誘いは突然に

 その日は、朝から嫌な予感がしていた。


 理由はわからない。

 わからないけど、胃がきゅっと縮んでいる。


「……あの、りおちゃん」

「なにー?」


 ダンジョン帰り。

 配信を終えた後、私達はまた都内のビルに向かっていた。

 目的地は、以前お邪魔したことのある『ホワイトウイング』の拠点。


 芹那さんからお話があるから来てほしい、って言われていた。

 ただ……内容は『ひ・み・つ』というのがすごく怖い。


「またコラボかな? すごく楽しくなりそうだよね!」

「そ、そうですね……」


 りおちゃんはいつも通り元気いっぱい。

 対する私は、たぶん、顔が青くなっていた。


 今度はどうなるんだろう?

 なにが起きるんだろう?

 先のことを考えると、やっぱり胃が痛い……




――――――――――




 エレベーターに乗りフロアに移動すると、相変わらずの光景だった。


 とても広くて綺麗。

 一流企業のオフィスのよう。

 柔らかい雰囲気で仕事をしている人がいて、一方で、配信者さんと思われる人達が真剣な顔で打ち合わせをしているのが見えた。


「やっぱりすごいね。ここに来る度に、すごいなって思う!」

「で、ですね……」

「あら、来たわね。二人とも」


 芹那さんが笑顔で迎えてくれた。

 それだけならいいんだけど……


「ふふ、今日も二人は可愛いわね♪」

「きゃー♪」

「ぴゃあ!?」


 抱きしめられた。

 りおちゃんは喜んでいるけど、私は、まあ……察してください。


「今日は来てくれてありがとう」

「こんにちはー! 芹那さん!」

「こ、こんにちは……」


 芹那さんは私達をソファに座らせて、自分も向かいに腰掛けた。


「さて……今日はね、お願いがあって呼んだの」

「お、お願いですか……?」

「これ、オフレコでお願いしたいんだけど……実は、近々、うちが主催でイベントを開催する予定なの」

「イベント!」


 りおちゃんの目が一気に輝く。


「もちろん、ダンジョン関係のイベントよ。細かいところは、今、詰めているところなんだけど……簡単に言うと、上層ボス討伐のタイムアタック。配信だけじゃなくて、テレビも入れる予定。ここは色々と交渉中ね」

「す、すごいですね……」

「でね」


 芹那さんは、にっこりと笑って言う。


「二人も参加しない?」

「「え?」」


 りおちゃんと声が重なる。


「いいんですか!?」

「そ、そそそ、そんなイベントに私なんかが!?」

「もちろん、二人が可愛いから♪」

「「……」」

「冗談よ?」


 本気に聞こえました。


「一応、誰でも参加できるようにしているけど、こちらから声をかける人は選んでいるわ」

「な、なら、どうして……」

「二人が強い、っていうのがまず一つ」


 強くないので。

 ただ逃げ足が速いだけ。


「それと……んー、これはちょっと二人に申しわけないんだけど、二人の人気に乗っかりたい、っていうところがあるわ」

「「人気?」」

「あら。ひなちゃんはともかく、りおちゃんも知らないの? これ、見てちょうだい」


 芹那さんはタブレットを取り出して、いくらか操作。

 画面を見せてきた。


 SNSの投稿、切り抜き動画、コメント欄などなど。

 それらがまとめられていて……

 その中心に私達がいた。


「今、ちょっと二人はバズっているというか、ダンジョン界隈での人気者よ?」

「……」


 い、いつの間にそんなことに……?

 確かに最近、いきなり登録者数が増えたけど……

 なにかのバグとか気の迷いとか、そんな風に思っていた。


「そんな二人が参加してくれたら、すごく盛り上がると思うの。それに、贔屓はできないけど、二人ならいいところまでいけると思うわ……どうかしら?」

「む、無理です……!? こ、こんな状態でイベント参加とか……」


 絶対に注目されてしまう。

 それを想像したら、胃が死んでしまいそうになる。


「えー!? 面白そうじゃん!」

「り、りおちゃん……?」

「ひなちゃん、出ようよ! 一緒なら大丈夫だよ!」

「だ、だめだよ!? だって、人いっぱいだと思うし、私なんかが出たら……」

「大丈夫!」


 りおちゃんは迷いなく言う。


「ひなちゃん、私のパートナーでしょ?」

「……っ……」

「それにさ……楽しそうだもん。人たくさんとか注目されているとか、そういうことはひとまず置いておいて、ひなちゃんはどう思う?」

「そ、それは……」

「ね? だから、一緒に頑張ろ?」


 りおちゃんの言葉を否定できない私がいて。

 ちょっとだけ。

 ほんのちょっとだけ楽しそうって思っている私もいて。


「……ぅん……」


 私は、すごく迷った末に、こくりと小さく頷いた。


 芹那さんは、そんな私を見て満足そうに頷く。


「決まりね。というか……実は、エントリーはもうしておいたの♪」

「えぇ!? 勝手にしていたんですか!?」

「『絶対』に引き受けてもらう、って思っていたから」


 芹那さんがちょっと怖いと思った。


「詳細は追って通達するわ。というわけで……イベント当日よろしくね、二人とも。」

「よろしくお願いしますー!」

「……よろしく、お願いします……」


 私は、諦めの境地で頭を下げた。


(……胃がもつかな……?)

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