36話 アイドルは今日も汗をかく
私……陽向りおは朝早く、目覚ましが鳴る前に起きた。
勝ち!
「よしっ、いってきまーす!」
気合を入れてごはんを食べて着替えて、家を出る。
まずは学校。
大学進学は考えていないけど、でも、勉強は大事だから高校はがんばることにした。
勉強は苦手だけど、優しい友達が色々と教えてくれるから、なんとか授業についていけている。
そして放課後。
今日はダンジョンはなし。
配信もなし。
でも、休日というわけじゃなくて、『アイドルとしての仕事』はある。
――――――――――
某所。
動きやすいジャージに着替えて、事務所のレッスンルームへ。
「よろしくお願いします!」
「はい、今日もいくわよー」
先生に教わりダンスを学ぶ。
ダンジョン配信系アイドルだけど、でも、ダンジョンばかりじゃなくて……
雑談配信もするし、歌枠も取る。
たまにだけど、ミニライブも行う。
そのためのレッスンだ。
「はいストップ! りお、今のターン、軸ぶれているわ」
「えっ、ほんとですか!?」
「ほんとです」
「がーん!」
先生は優しいけど、ダンスに対しては厳しい。
でも……
「ただ、前よりずっと良くなっているわよ」
「ほんとですか!?」
「ええ。ダンスに関しては、私は嘘はつかないわ」
「やったー!」
やる気がみなぎり、残り時間、全力でがんばる。
そうしてレッスンを終えて……
ただ、すぐに動けるほど体力は回復しておらず、椅子に座ってスポーツドリンクを飲む。
そうやって息を整えていると、マネージャーさんがやってきた。
「おつかれさまです。りおさん、最近、いい感じですね」
「え、ほんとですか?」
「表情も体の使い方も、前よりずっと安定してきたと思いますよ」
「えへへー」
照れる。
「もしかして、ひなちゃ……小鳥遊さんの影響ですか?」
「そ、そうかも……」
こちらもなんか照れる。
「一緒に配信してると、なんていうか……ちゃんと向き合わなきゃ、って思うんです。それから、がんばらなきゃ! って元気をもらえるから」
「いい子ですよね」
「はい! 人見知りだけどすごく優しくて、変なところで真面目で……」
「いっそのこと事務所に勧誘します?」
「えっ」
「ちょっと会議の話題にも上がっているんですよ。小鳥遊さんを迎えて、りおさんとユニットを……という」
「ひなちゃんと……」
想像する。
ひなちゃんと同じステージ。
同じ控室。
同じライブ。
そして、いつかは武道館へ。
「……いい。それ、すっごくいいです!」
「ですよね」
「ひなちゃんと一緒に……ユニット……」
たぶん、私の目は今、キラキラと輝いていると思う。
それくらいひなちゃんのことは好きだ。
ただ……
「でも……ひなちゃん、今はたぶん、受けてくれないかと」
「なんででしょう?」
「えっと……人見知りだから」
「あはは……」
マネージャーさんが苦笑した。
「あと、今はあまり負担をかけたくないし……保留とかできますか?」
「はい、大丈夫ですよ。会議で話題に上がったものの、本格検討とかではないので」
「よかった。いつか……いつか、一緒のステージに立てたらいいな、って思います」
「素敵ですね」
「だから!」
私はぐっと拳を強く握る。
「まずは、私がちゃんとしたアイドルにならないと!」
「はい、その意気です。がんばってくださいね」
「というわけで、ボイストレーニングに行ってきます!」
ダンスの次は歌。
がんばらないと。
夢はまだ遠い。
でも、一歩ずつ進んでいこう。
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