35話 いつもの日常……だったはずなのに?
朝。
目覚ましが鳴って目が覚めた。
「……」
二度寝したい……けど、したら寝坊しちゃう。
「……学校……」
布団の中でもぞもぞ。
できれば学校は行きたくない。
人がたくさんいるから。
「でも……高校くらいは出ておかないと」
将来とか進路とか、正直よく分からないけど……
少なくとも、『高校中退・資格なし・ダンジョン配信者一本』は、さすがに人生詰みそうな気がする。
なので通学。
朝食を食べて、制服に着替えて、鞄を持って、家を出る。
見送りをしてくれるような人はいない。
でも、残してくれたお金はある。
ダンジョン配信で得たお金もある。
だから、ほどほどに生きることができた。
なるべく目立たないようにしつつ、登校。
教室に入り、自分の席に座る。
「……」
なにもない。
いつも通り。
今日も空っぽな一日が……
「ねえねえ」
「ひぇ!?」
いきなりクラスメイトの女子に話しかけられた。
友達じゃない。
そんな人、りおちゃんくらい。
クラスメイトの女子は好奇心のある顔で、スマホを差し出してきた。
「これ、小鳥遊さん?」
画面に映っているのは配信画面。
そこに映っているのは……私。
「ひぃ……!?」
バレた!?
見られていた!?
なんで!?
今までこんなこと一度もなかったのに……!
「やっぱりそうだよね!」
「あ、いえ、その、えと……!?」
「すごいよね、ダンジョン配信とか!」
「……え……?」
「めっちゃかっこよかった!」
「かっ……こ?」
頭が追いつかない。
私、褒められている……?
あれ、おかしいな。
私なんかが褒められるなんてありえないのに。
反射的にいつもの思考が飛び出す。
「ど、どうせ……ざ、雑魚だし……いつか即死するし」
「は? いやいや。あれで雑魚ならみんななんなの?」
「え……?」
「まだ全部見てないけどさ。小鳥遊さん、めっちゃ強いと思うけど?」
その声に反応して周りの席からも声が上がる。
「あ、それ、実は俺も見た」
「俺も。どうやって聞こうかなー、って迷ってたところだから助かるわー」
「私も! あれ、どうやって倒したの? 教えて!」
「同じく知りたい! 速すぎて意味わからないのよね」
「ってかさ、りおちゃんの友達なんだよな? 紹介して!」
「直結かよ、やめろバカ!」
「えー」
私はぽかんとする。
誰も私を馬鹿にしていない。
というか、むしろ褒めているような……?
な、なんで……?
私なんか褒められるような存在じゃないし。
というか……いや、待った。
勝手に、みんなは私を悪く見る、悪く言うと思っていたけど……
それはそれで、とても失礼なことなのでは?
今まで話しかけなくて。
でも、諸用で話しかけたら無視されたことなんてない。
というか、みんなから話しかけてくれたこともあって……
私がそれにうまく答えられなくて。
でも、また別の日に何事もなかったように声を……
(私が……勝手に逃げて、いただけ……?)
バカだった。
なんてバカなのだろう。
でも。
そこで後悔して自分に呆れて見捨てるとか、そんなことをしたら本当のバカだ。
りおちゃんを思い出せ。
先日のりおちゃんは、すごくかっこよくて……
私は、りおちゃんの友達にふさわしい私になろう。
「……あ、あの……」
声は震えてしまうけど、でも、勇気を出して言う。
「私の配信……み、見てくれて……ありがとう」
「……」
一瞬の沈黙。
そして……
「「「可愛いっ!!!」」」
「ぴぃ!?」
「なんか思っていた以上に素直!」
「なんだ、すっごくいい子じゃん!」
「もっと喋ろうよ! 小鳥遊さんのこと知りたいな!」
「放課後、遊びに行かない?」
「だからすぐ近づこうとするなバカ」
「えー」
「……ひぇ……」
とても嬉しい反応なんだけど……
これはこれで胃が痛い。
でも。
逃げない。
今日は逃げない日。
「あ、あの……えっと……」
ぎこちない。
でも、ちゃんと顔を上げて、どうにかこうにか笑顔を作って言う。
「……よ、よろしく……お願い、します……」
憂鬱なはずの学校が、ほんの少しだけ……ほんのちょっとだけ違って見えた。
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