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34話 それでも一緒がいい

「……ご、ごめんなさい……」


 謝罪の言葉が勝手にこぼれた。



>正直りおちゃんだけでよくない? ひなはいらないでしょ



 画面の向こうにあるコメント。

 それは本当にその通りだ。


 だって、ここはりおちゃんのチャンネルで。

 視聴者さんはりおちゃんを見に来ているわけで。

 私なんかを見に来たわけじゃない。


「……わ、私は……」


 声が震える。


「じゃ、邪魔なら……すぐ、消えますから……」


 ……いつものことだ。


 私はいらない。

 私は余計。

 私がいると空気が悪くなる。


 だから……


「ひなちゃん」


 部屋から出ていこうとしたら、りおちゃんが私の手を掴んで止めた。

 その声はいつもと比べると、少しトーンが低い。


「行かないで」

「え……?」

「私はひなちゃんと一緒がいいな」

「で、でも……」

「私が、そうしたいの」

「……」


 どうすればいいのだろう……?


 ここにいない方がいいんだけど。

 でも、りおちゃんの手を振りほどくこともできなくて……


 迷っている間に、りおちゃんがカメラ代わりのスマホに向き直る。


「みんな、ごめんね。みんなの言うことはわかるよ。うん……最近の私はずっとひなちゃんと一緒だったから、それが納得できない、っていう人もいると思う。それは当たり前のことだと思う。本当のところを言うと、マネージャーさんからもちょっと注意されていた。でも……」


 りおちゃんが頭を下げた。


「ごめんなさい。わがままを言わせてください……私は、ひなちゃんと一緒がいいです」


 コメント欄が止まる。


「ひなちゃんはアイドルじゃないかもしれない。同じ配信者だけど、でも、方向性は違っていて……ひなちゃんと一緒にいたら、私は、完璧なアイドルじゃなくなるかもしれない。みんなの期待を裏切っちゃうかも……そのことについては、本当にごめんなさい」


 りおちゃんはもう一度頭を下げた。


 コメント欄は……

 まだ止まったまま。


「でもね」


 りおちゃんが小さく笑う。


「私は、ひなちゃんのことが好き。出会って少しだけど、一番の友達だと思っている」

「……っ……」

「だから、ここで友達を突き放したら……それこそ、アイドル失格だと思う」


 そんな優しい言葉が胸に突き刺さる。


「だから私は、ひなちゃんを切り捨てるくらいならアイドル失格でいい。大事な友達を切り捨ててまで続けるようなものじゃないし……ううん、違うな。私の目指す完璧なアイドルは、そんなことはしない。絶対に」

「……りお……ちゃん……」


 目が熱くなる。


「お願いします」


 りおちゃんは、三度、頭を下げた。

 いつもと違う丁寧な言葉で、礼儀正しいとても深いお辞儀。


「ひなちゃんは私の大事な友達です。一緒に配信したいです。わがままなのはわかってます。でも……どうか認めてください」


 私の心が追いつかない。


 胸がいっぱいで、

 息がうまくできなくて。


 でも、このままりおちゃんだけに押し付けるなんてこと、したらいけないと思って……


 テーブルの上のマイクを手に取り、りおちゃんの隣に並ぶ。


「……ご、ごめんなさい……」


 声が震えてしまうけど、マイクのおかげでどうにかこうにか聞こえた。


「わ、私……ちゃんと考えてなくて、邪魔してたかもで……ごめん、なさい。そこは、ちゃんと……気をつけるべきでした」

「ひなちゃん、それは……!」

「ううん……でしゃばりすぎていた、っていうのは確か……だと思う、から」


 配信者さんのことはよく知らないけど……

 好きな人だけを見たい、っていう気持ちはあると思うし、それは正しいことだと思う。


「その辺り、は……ちゃんと、話します。だから、そ、その……」


 怖い。

 怖い。

 怖い。


 でも、がんばる。

 だって、りおちゃんもがんばったんだから。


「私は、まだ……りおちゃんと一緒に、いたい……です」

「……ひなちゃん……」

「ちゃんと、考えるので……これからも、その、こ、コラボを……させてください。お、お願いします……!」


 なけなしの勇気を振り絞って言い。

 それから、ぺこりと頭を下げた。


 沈黙。

 そして……


>いいよいいよ!

>ダメなんてことはない!

>りおちゃんの言う通り! ってか、ひなちゃんの言う通りでもある!

>二人でもいいんじゃない?

>ちゃんと考えてくれるって言ってるし

>ってか俺らがどうこう言う問題じゃないだろ

>りおちゃんがしたいようにすればいい

>ひなちゃんも好きにしよう!


「……みなさん……」


 ありがとうございます。

 その気持ちを示すように、私はもう一度頭を下げた。



>さっきのコメントは言いすぎでしたごめんなさい

>やっぱり二人一緒がいいと思いました



 そんなコメントが流れてきて。

 私とりおちゃんは笑顔になる。


「ひなちゃん」

「……は、はい……」

「よかったね」

「……ありがとうございます……」


 私のぎこちない笑顔を、りおちゃんは太陽のような優しい笑顔で受け止めてくれた。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

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