33話 一人は無理でも二人なら(たぶん)
「……無理……」
ベッドの上で私は完全に干物になっていた。
さっき見たコメントが脳内で再生される。
『雑談配信とかも見てみたいです!』
「……ころすきか……?」
わりと本気でそう思う。
でも……
がんばりたい、って思うし。
こんな私を応援してくれるなら、応えたいとは思う。
とはいえ、なにもしない雑談なんて本気で厳しくて……
「……りおちゃん……」
私は、震える手で通話ボタンを押した。
『ひなちゃん? わー、どうしたの? ひなちゃんから電話なんて初めてで……』
「りおちゃあああああああん! 助けてぇえええええ!!!」
『え!? た、助け……なになになに!?』
「ざ、ざつだん……ザザザ!? ざつだんが……!」
『落ち着いて!?』
「無理です! 死にます!」
『生きて!』
即ツッコミ。
素直にすごいと思う。
『なにがあったの? 落ち着いて話してくれないかな?』
「えっと……」
かくかくしかじか、と事情を説明した。
『あー、なるほど』
「ど、どどど、どうすれば……!?」
『なら、一緒にやる?』
「いいんですか!?」
その言葉を待っていました。
すごく期待していました。
ずうずうしいというか、姑息な電話でごめんなさい!
『オフコラボ雑談!』
「……」
お、おふこらぼ……?
通話じゃなくて、実際に会って雑談配信……?
それはそれで難易度が……
「うぅ……うー、うー……うううぅ……」
『いや?』
「そんなことはないんですけど……それはそれで、き、緊張が……胃が」
『だいじょーぶ! ひなちゃんならいけるよ』
「そ、そうでしょうか……?」
『だって今、なんとかしようと私に連絡して、がんばっているもん。そんなひなちゃんなら絶対にいける!』
「……」
ここまで言ってくれているのだから、もう答えは決まっていた。
「が……がんばり、ます!」
――――――――――
後日。
家で配信は住所バレの危険性があるということで、カラオケへ。
カメラ代わりのスマホをセットして……配信開始。
「はーい、こんにちはー! 事前に告知してたように、今日はただの雑談配信だよ。それとそれと、特別ゲストが来ています! はーい、どうぞー! ぱちぱちぱちー」
「……こ、こんにちは……」
小さく会釈すると、ダダダ! という感じでコメントが流れる。
>ひなちゃん!
>ひなちゃんが来た!
>やっぱりちっちゃいな
>二人並ぶと可愛い
>小動物巻がすごいw
「……」
胃が、きゅっと鳴いた。
りおちゃんが、ちらっと私を見る。
『大丈夫』
口をぱくぱくさせて、声は出さないでそう言ってくれた。
少しだけ勇気が出て、がんばろう、ってなる。
「一応、ひなちゃんの紹介をしておくと、私と同じダンジョン配信者で、しかも同い年! 残念ながら学校は別なんだよね」
「あ、はい……ども」
「ひなちゃんは近接戦闘が得意で、しかもしかも、すっごく速いの! びゅーん、どかーん、っっていう感じ!」
「あ、はい……びゅーん、です」
「ついでに言うと、私の命の恩人で、大好きな友達! だから最近は、ずっとコラボしているんだー!」
「あ、はい……コラボ、です」
>ひなちゃんBOTになってないか?w
>りおちゃんの語彙力よ
>それがりおちゃんである
>対比がすごいなw
>真逆の二人
>だからこそ噛み合うのかも
「簡単に自己紹介が終わったところで、ダンジョンの話はここまで。今日は雑談だからね。ということで、ひなちゃん、好きな食べ物はなに?」
「え……?」
突然の質問に頭が真っ白になる。
「す……好きな……」
数秒フリーズして、どうにか再起動する。
「あ、甘いもの……とか……?」
「甘い物! いいね、私も好きだよ。具体的には?」
「えっと、えと……ホットケーキ、とか」
「ホットケーキいいよね! 私も好き! そうだ、今度一緒に食べに行こう?」
「私なんかが!?」
「あはは、そんなことないよ。一緒なら、きっとおいしく食べられるよ」
「は、はひ……」
ものすごく緊張する。
でも、りおちゃんが笑顔で引っ張ってくれているから、どうにかこうにか喋ることができた。
その後も、なんてことのない話が続く。
苦手な食べ物。
好きな漫画。
好きなゲーム。
最近見た映画、ドラマ。
嬉しかったこと、驚いたこと……などなど。
りおちゃんにおんぶでだっこだけど、なんとか雑談をこなすことができていたんだけど……
その時、とあるコメントが流れる。
>正直りおちゃんだけでよくない? ひなはいらないでしょ
「……っ……」
画面を見た瞬間、ぎゅっと胸が締めつけられる。
りおちゃんも気づいて声が止まる。
「……ご、ごめんなさい……」
私は……そうすることが当たり前のように。
ううん。
それが当たり前だから、そうしなくちゃいけないから、反射的に謝っていた。
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