32話 休日と勇気をちょっとだけ
今日は祝日で学校は休み。
普段はダンジョン探索に出かけているんだけど、それもお休み。
『ここ最近がんばっていたから、ちゃんと休まないとね!』
なんてことをこの前言われてしまい、お休みになった。
がんばっていた……のかな?
よくわからないけど、でも、確かにここ最近は色々あった気がする。
今日は家から一歩も出ない。
カーテンは半分だけ開けて、部屋にはやわらかい昼の光。
ベッドの上で体育座り。
そのまま積みゲーを起動する。
ゲームの世界は安心だ。
敵は強さが数字で決まっていて、話しかけてくるのはNPCだけで、なにか言われても選択肢を選ぶだけ。
失敗しても、セーブしておけばリトライできる。
ネットゲームはその限りじゃないけど……
そんな恐ろしいもの、私がやるわけがない。
「……」
コントローラーを握りしめて黙々とゲームを進める。
……進めようと思っていたんだけど。
一時停止。
スマホを再び手に取る。
自分のチャンネルを確認すると、一気に登録者数が増えていた。
コメントもたくさんん。
「……む、むり……」
胃がきゅうっと縮む。
胸の奥が、ぞわぞわして、
目の奥が、じんわり熱くなる。
「なんで……」
私、なにもしていない。
逃げてばっかりで、
謝ってばっかりで、
とにかくすぐ終わらせたいという理由で速く動いていただけ。
「……怖い」
それが正直な気持ち。
期待されるのが怖い。
見られるのが怖い。
なにか言われるのが怖い。
……でも。
笑顔でカメラに手を振るりおちゃんのことを思い返す。
『今日は来てくれてありがとう!』
『応援、ちゃんと届いてるよ!』
『いつもありがとー!』
りおちゃんは逃げたことなんてない。
ダンジョンとかきっと怖いはずなのに、でも逃げない。
「……」
息を整える。
辛いことは、いや。
苦しいことは、いや。
それは変わらない。
でも。
「……なにも、ないままなのは……」
ちょっと嫌だ。
だから、ちょっとだけがんばることにした。
スマホを操作して……
「……」
「…………」
「………………」
文字を打っては消して、
消しては打って。
五分くらい悩んで、
やっと短い一文を書くことができた。
『ありがとうございます。がんばります』
送信。
「……」
送っちゃった。
どうしよう?
どうしよう?
どうしよう?
心臓がバクバクと跳ねる。
……そして数秒後。
ピロン♪
ピロン♪ ピロン♪
ピロン♪ ピロン♪ ピロン♪
「ひぃ!?」
通知音の連続に恐怖する。
いいね。
返信。
さらに返信。
「む、無理無理無理……!」
思わずスマホをベッドに落とす。
ホラー。
これはもう完全にホラー。
でも。
ベッドの上で膝を抱えたまま、ちらっと画面を見る。
『返事もらえた!』
『ありがとう!』
『応援しています!』
そんな温かいコメントの数々。
「……」
やっぱり怖い。
でも、それだけじゃなくて……
ちょっとだけ嬉しいな、って思うことができた。
「……ゆっくり……」
全部は無理。
一気も無理。
でも、少しずつなら……
そっとスマホを手に取り、さきほどの画面へ。
そしてコメントを読んでいく。
そうしていると、一つのコメントで視線が止まる。
『ダンジョン配信も好きだけど、たまには雑談配信とかも見てみたいです』
雑談。
ざ つ だ ん !
「……む、無理……」
一人で話すなんて正気の沙汰じゃない。
ちょっとがんばってみようかな? とか思ったけど、さすがにそれは無理です。
でも……ふと思う。
りおちゃんと一緒なら?
もしかしたら……いけるかもしれない。
「ど、どうしよう……?」
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