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29話 可愛い子は勧誘すべし!

「うちに来ない?」


 芹那さんのその一言で私の頭の中は真っ白になった。


>キターーー!

>ホワイトウイングからの勧誘ってマジか!

>しかもマスター直々w

>おいこら、りおちゃんはどうした!?

>あとで二人まとめて、って感じじゃね?


 盛り上がるコメント欄を気にする余裕がない。


「冗談……ですよね……?」

「本気よ」


 にっこり笑顔。

 でも、目が本気だった。


「ひなちゃんは強いわ。そんなあなたがフリーなんて、もったいないと思わない?」

「……い、いえ……」

「もしかしたら、私よりも強いかもしれないし」

「えぇ!?」


 再び叫んでしまう。

 他のお客さん、店員さん、ごめんなさい……


「そ、そんなこと……あるわけ……」


 芹那さんは首を傾げる。


「んー……不思議ね? どうしてひなちゃんは、そんなにも自己評価が低いのかしら?」

「あ、それ私も思っていました! ひなちゃんすごいのに、ぜんぜん認めてくれないんですよー」

「やっぱり? 付き合いの浅い私でさえそう思うんだから、ちょっと……ううん、なんでもないわ」


 芹那さんはその後の言葉を飲み込む。


 気になるけど。

 でも、怖くて聞けない。


「というか……ひなちゃん、すごいよ!」

「え?」

「芹那さんに……『ホワイトウイング』に勧誘されるなんて、宝くじに当たるようなものだよ!? 一気に有名人じゃん!」

「そ、そんなこと……」

「やったね、ひなちゃん! 友達として、私も誇らしいよ!」


 りおちゃんは笑顔だ。


 ……でも。

 その笑顔の奥に少しだけ。

 ほんの少しだけ影があった。


(……ぁ……)


 気づいた瞬間、胸がきゅっとした。


 もしも、私が『ホワイトウイング』に加入したら?

 今までのように自由に動けなくなるだろうし、なによりも、りおちゃんとは一緒に配信できなくなるかもしれない。


 そのことを不安に思っているはず。

 なんでわかるのか?

 だって……私も同じだから。


「私も負けてられないなー! ひなちゃんが有名になったら、私ももっとがんばらなきゃ!」


 明るい声だけど……

 無理、しているよね?


>ひなりお終わりなの?

>やめてくれ……

>ずっと続いていくものと勝手に思っていた

>でもひなちゃんは加入した方がいいだろうし……

>こんなうまい話はないもんな

>嫌だけど応援するわ


 視聴者さん達が優しい。

 だからこそ、私は……


「すみません」


 自然と言葉を紡いでいた。


「すごく光栄で、私なんかにはもったいない話で嬉しいんですけど、でも……私は、りおちゃんと一緒にやりたいです」

「……ひな、ちゃん……」

「だから、ごめんなさい」


 しっかりと言い切り。

 ぺこりと頭を下げた。


 沈黙。

 そして……


「ひなちゃああああああぁぁぁーーーーーん!!!!!」

「ふぎゅ!?」


 隣に座るりおちゃんが思いきり抱きついてきた。


「好き!」

「ぴゃあああ!?」

「嬉しい、好き! 嬉しい! だーい好き!!!」

「わ、わかりましたから……!」


 顔が熱い。

 心臓がうるさい。

 恥ずかしい。


 でも……


(……嫌じゃない、かな……)


「はぁ……尊いわね」

「せ、芹那さん……?」

「あら、失礼」


 なんだか今、すごい顔をしていたような?


「でも……残念。振られちゃったわね」

「ひなちゃん、罪な子」


 冗談めかした声。

 でも、どこか納得したような表情だった。


「今日は、ヤケ食いしないとやってられないわ」

「え!?」

「それくらい、付き合ってくれるわよね?」

「は、はい!」

「もちろんです!」


 りおちゃんが元気よく答えて、零士さんも無言で頷いた。

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