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27話 反省会

 中層にドラゴンが現れるなんて異常事態で。

 思えば、りおちゃんの時のサイクロプスはその前兆だったのだろう。


 原因であると思われるドラゴンは芹那さんが討伐したものの、まだ安全が確保されたわけじゃない。

 ダンジョンだから完全に安全なんてことはないんだけど……

 それでも、理不尽な事故はできるだけ排除するに限る。


 私達はすぐに地上へ撤退。

 事態を説明して、ダンジョンに潜っている人達に緊急連絡。

 同時に、一時的にダンジョンは封鎖された。


 とりあえず、魔石やダンジョン素材などを換金する。


 芹那さんと獅堂さんは、どこか別のところへ。

 すぐに戻ってくるわ、って言っていたから、事の詳細を説明しているのかな?


 換金を終えてりおちゃんと一緒に待っていると、二人が戻ってきた。


「おまたせ」

「あ、いえ……ど、どうでしたか?」

「ちょっとだけダンジョンは封鎖。原因であるドラゴンは排除したけど、念の為の調査を進めて、それから再開、ってところね」

「そっかー……ふぅ、よかった!」


 りおちゃんが安心したように笑う。


「ダンジョンに潜れない以上、コラボもここまでなんだけど……」


 芹那さんが、りおちゃんがつけている配信用のプライベートドローンを見る。


 あ。

 しまった。

 コラボに緊張していたのと、色々とあったせいで、ここまでまったくコメントを気にしていなかった。


 ……って、あれ?


 私、視聴者さんのことを気にしている……?

 今まではそんなことはなくて。

 配信者としての心構えとかどうでもよくて。

 ただ、お金を稼げればそれでよかったんだけど……それだけじゃなくなっている?


>ダンジョンの次は雑談配信しよう

>芹那さんマジお姉さん

>ひなりおは妹かな?

>ただし獅堂てめーはダメだ

>ツンデレってわかったから俺は好きだな


「リスナーさんもこう言っているから、ちょっとコラボを延長しない?」

「はい、ぜひ!」


 あぁ……

 私が断るよりも先に、りおちゃんが引き受けてしまう。


「……」


 獅堂さんはなにも言わない。


(無言=同意?)


 人類のコミュニケーションって難しい。


「決まりね。じゃあ、近くのファミレスに行きましょう」

「ファミレス! 最高!」

「……は、はい……」


 こうして私は、戦いを終えたはずなのにすぐ別の戦場へ向かうことになった。




――――――――――




 ファミレスに移動した私達は、角の席に座る。


 芹那さんがメニューを開きながら言う。


「みんな、今日は頑張ったものね。なんでも好きなものを頼んでいいわよ」

「ほんと!? やったー!」


 りおちゃんが迷いなくページをめくる。


「じゃあ私は、ハンバーグとオムライスと……それと、パフェとケーキ! あ、もちろんドリンクバーも!」

「ふふ、いっぱいね。ひなちゃんも、いっぱいいいわよ」

「えっと、えっと……!?」

「好きなものを頼みなさい」

「……す、好きなもの……」


 頭に浮かぶのは、いつか食べてみたいと思っていたもの。

 でも、それは『いつか』であって、今の私には贅沢すぎるもの。


 パフェとか。

 大きいハンバーグセットとか。

 ああいうキラキラした食べ物。


(私なんかが食べたら罰が当たりそう……)


「ひなちゃん、パフェ食べよ! パフェ!」

「……ぱ、ぱふぇ……」

「ほら、これ! いちごのやつ! かわいい!」

「……かわいい……」


 確かにかわいい。

 キラキラしてて、とても惹かれた。


「いいじゃない。パフェにしましょう」

「えっ、えっ」

「ハンバーグも頼めるわよ。体力回復は大事だもの」

「た、体力回復……」

「決まりね」

「あっ……え、えと……はい、お願いします……」


 今日は、もうちょっとだけ冒険してみることにした。


「零士は?」

「……好きにしろ」

「好きにしろじゃなくて、あなたも頼むの」

「……」


 獅堂さんは少しだけ困った顔をしてメニューを見た。


「……カツカレーの大盛りで」

「ふふ、素直でいいわね」

「獅堂さん、カレー好きなんですね!」

「うるせえ」


 でも、声の棘はいつもよりちょっと少なかった。



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