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26話 真なる強者

 ドラゴン。

 ゲームや漫画ではお馴染みの魔物で……


 でも、現実ではなによりの脅威として認識されている。


 圧倒的な火力。

 鉄壁の防御。

 音を超える機動力。

 全てが完璧であり、完全であり、無欠。


 下層のさらに奥……深層で出現するらしい。


 らしい、という曖昧な言葉を使うのは、正確な情報に欠けているから。

 あまりに出現率が低く。

 そして……あまりに生還率が低いため。


 無敵ではなくて、今までに討伐された記録はある。

 ただ、それ以上に事故率が高く、未だ確かな情報を得られていない。


「これは……」


 ……まずいかもしれない。


 まとう魔力が他の魔物と桁違いだ。

 さっきのボスが子供に思えるほど。


 ただ。


(いけ……る? でも……)


 不思議と恐怖はない。

 戦ったことはないけど、ただ、負けるイメージはない。


 もしかしたらいけるかもしれない。

 でも、失敗は許されないわけで……

 気軽に挑めるわけじゃなくて……


 どうする?

 どうしたらいい?


「ひなちゃん!?」


 私が前に出ると、りおちゃんが悲鳴に近い声をあげた。


 倒せるか?

 みんなを守れるか?


 わからないけど……

 私なんかができるかどうか……


 でも、諦めたくない。

 みんな……死ぬなんて嫌だ。


 だから私は……


「下がりなさい」

「……っ……」


 私を背中にかばうのは芹那さんだ。

 いつもと違う表情を見せていて。

 ちょっと怖い、って思えるほどで。


 思わず震えてしまう。


「せ、芹那……さん?」

「大丈夫」


 芹那さんが振り返り、にっこり笑う。

 あ……いつもの芹那さんだ。


「ここは私に任せて?」

「で、でも……」

「大丈夫」


 もう一度、同じ言葉を繰り返して。

 そして、芹那さんがドラゴンに向かって歩いていく。


 カツカツと足音を鳴らして。

 あのドラゴンでさえ怯むオーラを発しつつ。


「……よくもやってくれたわね?」


 芹那さんが鋭い声で言う。

 刺すように睨みつけた。


 ……あのドラゴンが怯んでいた。


「私のひなちゃんりおちゃんを怖がらせるなんて……」


 芹那さんは両手を構えて、


「あなた……いらないわ」


 糸が舞う。


 生き物のように。

 踊るように。

 魅了するように。


 芹那さんが両手につけているグローブ。

 そこから伸びる糸が縦横無尽に空間を駆けて、ドラゴンの手足、胴体、翼、頭部……ありとあらゆる部分に絡みついて、その動きを封じた。


 いや……封じるだけじゃない。


「グァアアアアア!?」


 芹那さんが指先でくいっと操作すると、絡みついた糸が収縮していく。

 たぶん、魔力を糸に流すことで操作しているんだろう。

 あるいは、個人の特殊能力……『スキル』だろうか?


 ドラゴンは糸から抜け出そうともがくが、完全に拘束されている。

 悲鳴をあげるだけで、なにもできず……


「さようなら」


 全身の骨が折れる音。

 ドラゴンはビクンと、一度、全身を震わせて……

 絶命して、その身を魔石に変えた。


「「……」」


 これが……

 トップクランのマスターの実力。


 私とりおちゃんは、完全に呆気にとられていて。


「……ちっ、相変わらずの化け物だな」


 獅堂さんは悪態をこぼしつつも、でも、どこか誇らしそうで。


 そして、肝心の芹那さんは……


「まったく……ひなちゃんりおちゃんとのデートを邪魔しないでほしいわ」


 なんて、呑気なことを口にしていた。


 えっと……デートじゃないです、コラボです。


 でも、なんていうか……

 そんな風に、『いつも通り』にする芹那さんは、とてもかっこよくて。

 思わずその背中に見惚れてしまって。


(私も……)


 いつかあんなふうになりたいと、そう思った。


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