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24話 理由なんていらない

「……まずいわね」


 珍しく芹那さんの声に余裕がなかった。


「このボス……特殊個体よ」

「特殊……?」


 りおちゃんが息を呑む。


「一定条件で進化したタイプね。出現率は低いけど……でも、事故が多い」

「……っ……」

「それだけ強力な相手、っていうことね。ひなちゃんとりおちゃんは後ろで援護を。あいつは、私達がなんとかするわ」

「ちっ……だからガキのお守りなんて嫌だったんだ」


 獅堂さんが立ち上がり、大剣を構えた。


「特殊個体だろうがなんだろうが、いつも通り倒せばいいんだろ? 大したことはねえ」

「零士、待ちなさい。みんなで協力を……」

「ざけんな!」


 芹那さんの制止を振り切り、零士さんが突撃した。


「こいつは俺がやる!!!」


 大剣が唸りを上げる。


 切る、斬る、叩く、潰す、殴る……ありとあらゆる方法で攻撃を繰り出していく。

 ボスの大きな体に確かなダメージが刻まれていく。


 さすがだ。

 すごく強い。


 でも……

 嫌な予感は消えてくれない。


(……危ない……)


 ボスの動きがどんどん速くなって、獅堂さんの動きに対応していっているように見えた。

 反撃も力強い。

 空間がピリピリと震えるような感じ。


 ……来る!


「零士さん……!」

「くっ!?」


 獅堂さんの大剣が弾かれて体勢が大きく崩れてしまう。

 そこに迫るボスの攻撃。


「「ひなちゃん!?」」


 私は咄嗟に前に出た。

 考えるより先に体が動いていた。


 さっきと同じように、獅堂さんを突き飛ばす。

 同時に、目の前に迫るボスの攻撃に対して拳を右左とニ連打。

 どうにか軌道を逸らすことに成功した。


「なにしやがる!!! 邪魔をするなって……」

「だめです!!!」

「な……」

「今の、直撃したら……死んでました……!」

「……っ……」


 獅堂さんが言葉を失う。


「「ひなちゃん!」」


 りおちゃんが両手に持つ銃を連射してボスの注意を引く。

 芹那さんが糸を操り、ボスの動きを封じていく。


 この間に立て直さないと!


「くそっ……ふざけんな! 俺は一人でやれる、てめえみたいなガキの手を借りるものかよ!」

「ダメです。今は、あいつを倒すことだけを考えないと! 私達が嫌いでも、それは今は忘れてください!」

「そうやって、自分なら力になれるとか、そう考えてるところがムカつくんだよ! うぜえ……思い上がるな! さっきも、俺は一人でなんとかできていた。ってか、俺を助ける理由なんててめえにはねえだろうが!?」

「助けるのに理由なんていりません!」

「……っ……」


 困っていたら手を差し伸べて。

 一緒に頭を悩ませて。

 たぶん、そういうことが大事なんじゃないかな、って思う。


 私なんかがそう言うのは、とてもおこがましいけど。


「私は!!!」


 わからない。

 なにが正しいかわからない。


 でも。


 今ここで、戦うことだけは間違いじゃないはず。

 怖いけど。

 震えるけど。

 胃が痛いけど。


 でも、今でだけは……


「……いきます」


 深呼吸。

 それから『全力』で地面を蹴り、前に出た。


 ボスと密着するほどの距離に移動して、同時に拳を放つ。

 宙に跳んで、回転しつつ踵落としを叩きつける。

 横に回りこんで、肘を槍のように見立てて突き出す。


 攻撃。

 攻撃。

 攻撃。


 両手足。

 己の体全てを武器にして、連続でボスに攻撃を叩き込んでいく。


「なっ……!?」

「速い……!」


 後ろで獅堂さんと芹那さんが驚いているような声。

 でも、確認しているヒマはない。


 とにかく連続で攻撃を続けて。

 ひたすらに速く動いて。


 ……結果、私の分身のようなものができて。

 それらが一斉に攻撃をして。


「りおちゃん!」

「オッケー!」


 ボスがぐらりとよろめいたところで、りおちゃんの両手の銃が火を吹いた。

 ダダダダダッ! と、マシンガンでも使っているような激しい連射。

 全ての弾丸がボスの頭部に突き刺さり……

 そして、ボスは魔石に変わった。


「……ふぅ」


 地面に着地して、吐息をこぼす。

 振り返ると、獅堂さんが唖然とした表情でこちらを見ていた。


「……お前……」

「……はっ!?」


 しまった、やりすぎた!?

 私なんかがでしゃばりすぎた!?


「え、えっと、あの、えと……!?」

「……」

「た……たまたま、です?」


 ……自分でもちょっと無理のある言い訳だな、と思ってしまった。


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