23話 努力の結果でここにいる
俺は、努力してここにいる。
それだけは誰にも否定させない。
俺は、大剣を肩に担ぐようにして持ち、ダンジョンの通路を進んでいく。
隣を歩くのは、『ホワイトウイング』のマスター、黒羽芹那。
そして後ろを歩くのは……
最近、なにかと話題になる小鳥遊ひなと陽向りお。
……正直、気に入らない。
芹那さんが強く言うから今回のコラボに参加したが、失敗だったかもしれない。
(アイドルとか、震えてばかりとか……ちっ、舐めてるのかよ)
俺の家は貧しい。
父親はまともに働くことができず、母親は体を壊しがち。
高校に行く金なんてない。
無償化になったりもしているが、授業料だけでは厳しい。
学校なんてのは他に色々と金がかかる。
だから、中学を出てすぐにダンジョンに潜った。
学歴もない。
コネもない。
死ぬほど努力して強くなった。
ダンジョンでしっかりと稼げるようになった。
才能がある連中に置いていかれないように。
置いていかれたとしても、すぐに追いついて、追い抜かすために。
だから俺は……
「零士、少しペースを落としなさい。ひなちゃんとりおちゃんとあなた、ぜんぜん歩幅が違うのよ?」
「……了解」
ならついてこなければいい、と思いつつも、黒羽さんの命令に逆らうことはできず速度を落とした。
そうして中層の探索を進めること少し。
場の空気が変わる。
「来るぞ」
「は、はひ!」
「よーし、がんばるよー!」
後ろのガキ共がはしゃいでいるが、連中の出番なんてない。
咆哮と殺意を撒き散らしながら巨人……サイクロプスが現れた。
中層にしては珍しい奴だが、俺の敵じゃない。
大剣を両手でしっかりと握り。
床を両足で踏みしめて。
「ふっ!!!」
一気に振り下ろす。
サイクロプスも同時に棍棒を振り下ろしていたが、それを半ばから切り落として。
さらに、その奥の腕も切り落として。
返す刃で首を刎ねる。
断末魔の悲鳴を上げることもできず、サイクロプスは魔石に変わった。
「す、すごい……」
「さすが、『ホワイトウイング』のナンバー3だね……」
当然だ。
これが俺の努力の『結果』だ。
アイドルとか、まともに喋れないような奴とか。
そんなのと一緒にしてもらっては困る。
差を理解したか?
本物を知ったか?
なら、自分の立場をしっかりと理解して、余計なことはするな。
でしゃばるな。
『本物』を気取るな。
「はぁあああああっ!」
さらに現れた魔物達を蹴散らして。
再び大剣を肩に背負い、鼻で笑う。
「まあ、中層だからこんなものか……歯ごたえの欠片もねえな」
小鳥遊と陽向はおとなしい。
これだけ力の差を見せつけてやったから、少しは自覚できたか?
そうこうしているうちにボス部屋に辿り着いた。
中層のボスはまだ撃破されていないらしく、扉は閉ざされたまま。
「さっさと片付けて終わりにするか」
「……零士、油断しないで」
「あ?」
「ちょっと嫌な予感がするわ」
「大げさだろ」
俺は鼻で笑った。
中層ボスは何度も倒してきた。
リポップする度に違う魔物になったり、パターンが変化するものの、慣れた相手。
今更苦戦するような相手ではない。
俺にとっては雑魚だ。
「行くぜ」
ボス部屋の扉を開けた。
そこで待っていたものは……
「ランドワームか」
外観は巨大なミミズ。
鉄を溶かす酸を飛ばしてきて、地中に潜り高速で移動する。
まあ、大した相手じゃない。
酸は厄介だが、それ以外の動作が遅いからいくらでも対処のしようがある。
地中に潜った時も、音で追いかければ出現地点を特定するのは簡単だ。
「叩き潰す」
「待ちなさい、零士。こいつ、いつもの相手と雰囲気が違うわ」
……言われてみると、わずかな違和感を覚えた。
ただ、そこまで大きな違和感じゃない。
個体差によるものだろう。
そう判断して、俺は真正面から突撃して……
「危ない!!!」
「なっ……!?」
なにかが横から突っ込んできて、それと一緒に地面を転がる。
直後。
ゴガァッ!!! という轟音が響いて、ダンジョン全体が揺れた。
ランドワームが己の体を鞭のように使い、叩きつけてきたのだ。
強固なダンジョンの床にヒビが入るほど。
バカな。
ランドワームは酸を主体とした攻撃をするだけで、己の体を叩きつけてくるなんてこと、するわけがない。
それに、速すぎる。
ノロマの亀だと思っていたら兎だったような。
……なによりもありえないのは。
「だ、だだだ、大丈夫……ですか?」
このガキに助けられたことだ。
……くそ。
俺はなにをしてる?
「零士、気をつけなさい」
黒羽さんが俺をかばうように前に立ち、両手を広げるようにして構えた。
その両手に黒い手袋がつけられている。
よく見ると、指先がキラリとたまに輝く。
糸だ。
細く細く細く……そして鋭く。
黒羽さんは糸を操り、戦場を支配する。
「あいつは特殊個体よ」
「ちっ……そういうことかよ」
通常のボスと違い、異常な進化を遂げた魔物。
元の数倍……数十倍の力を持つと言われていて、ダンジョン攻略の中で、もっとも事故率が高い。
とはいえ、特殊個体を相手にするのは初めてじゃない。
何度か対峙して、その全てを討伐してきた。
それなのに、今回の俺は……
(くそ……情けねえところを。俺はなにを見誤っていた?)
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