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21話 見る目がない人達

 国内トップクラン『ホワイトウイング』の拠点。

 ビルのワンフロアを借りて、そこを活動の拠点としている。


 夕方になり、ダンジョンから戻ってきたメンバー達。

 あるいは、日常配信を終えたメンバー達がそれぞれの席でくつろいでいた。


 そんな彼ら、彼女達が話題にするのは、今人気急上昇中の二人だ。


「……でさー、今日来てた子たち」

「小鳥遊ひなと陽向りお……だっけ?」

「可愛かったよな」

「それは否定しない」

「お前、そういう趣味なのか……? さすがに、十以上も歳が離れた相手は……」

「ちげえよ!?」


 あちらこちらでそんな話が飛び交っていた。


「……でもさ」


 誰かが腕を組んで首を傾げる。


「強いか、って言われると……そこのところ、実際どうなんだ?」

「メンバーを助けてもらったのは事実だけどさ……」

「んー……正直、運が良かっただけじゃね?」

「あいつも、帰還途中ってのがなければなにも問題なかっただろうしな」


 一人の疑問がそれぞれに移り。

 そして、うんうんと頷いていくメンバーが増えていく。


「俺もそう思う」

「たまたま相性が良かったとか」

「たまたま攻撃が当たったとか」

「ダンジョンってそういうことあるし、まあ、ビギナーズラックみたいなもんだな」

「初心者、っていうほどではない、ってのはわかるけど……ほんと、そんな感じ」


 ダンジョン配信者の多くは実力主義だ。

 ダンジョンで活躍する=人気を得る。


 そのような図式になっていることが大半なので、実力が曖昧な相手を下に見ることも多い。


「アーカイブ見たけど、正直よく分からなかったしな」

「それな。速すぎてなにしてるかわからない」

「ってか、あの速さはありえないだろドローンが追尾できないとか、聞いたことないぞ」

「編集か?」

「いや、あれ生配信だぞ?」


 意見が割れる中、


「……ふんっ」


 壁際で腕を組んでいた男が鼻を鳴らした。


 獅堂零士。

 『ホワイトウイング』のナンバー3だ。


「運だよ、運」

「運……なのかな?」

「当たり前だろ。見ればわかるだろ? あいつら、まだガキだぞ、ガキ。しかも女。そんなガキが大層な力を持ってるわけねえだろ」

「それはまあ……」

「たまたまいい位置にいて、たまたま運よく攻撃が成功した……それだけだ。ダンジョンじゃよくある話だろう? 運だけで今まで生きてきて……で、そのうち、盛大に事故って終わる敗者だな」


 強い言葉に、周囲が一瞬静かになる。


「零士……お前、さすがにそれは言いすぎじゃ?」

「俺等もよくわからないとか言ってたけど、事故るとか、冗談でもダメだろ」

「うるせえ」


 零士は吐き捨てるように言った。


「アイドル? コミュ障? ふざけんな、って話だ。そんなくだらねえガキ共が、戦う覚悟もねえくせにダンジョンに挑んで、可愛いだのなんだので客集めて……舐めてるだろ」


 誰かが困ったように言う。


「……でもさ、私は、二人はちゃんと戦っていると思うけど」」

「はぁ?」

「小鳥遊さんは……よくわからないけど。でも、陽向さんは銃の扱いもうまいし、上層なら軽く攻略できているし。そこまで言うほどのものじゃないんじゃないですか?」

「……だから何だよ」


 零士は、苛立ったように言葉を続ける。。


「大した努力もせずに、容姿と話題性だけで注目されて……俺は、ああいうのが一番嫌いなんだよ」


 空気が重くなる。


「やれやれ」


 ふと、柔らかい声が場を切り裂いた。


 黒羽芹那だ。

 休憩スペースのソファーに腰掛けて、紅茶を片手に、呆れたように笑っている。


「あなた達……本当に見る目がないわね」

「……は?」


 零士は思わず声を尖らせた。

 他のメンバーも芹那の言葉の意味を理解できず、首を傾げる。


「見る目、って……なにがですか?」

「それ、どういう意味なんです?」


 芹那は静かにカップを置いた。


「強いかどうか見抜くことができていない、っていう意味よ」

「まあ、見抜けていないかもですけど……」

「でも、誰もまだ、二人の実力なんてわからないし」

「はぁ……」


 芹那はこれみよがしにため息をこぼす。


「下層を攻略するとか派手な活躍をして。複数の魔物を相手に華麗に立ち回り。血を流しても一歩も引かずに立ち向かう……あなた達が求めているのは、そんな『わかりやすい強さ』かしら?」

「それは……」

「派手な技、わかりやすい火力、ランキング映えする魅せる戦い方……それらが大事なことは否定しないわ。私達は、なんだかんだで配信者。リスナーがいてくれるからこそ、ってところはあるからね」


 「でもね」と間を挟んで、芹那はさらに続ける。


「本気でやったとして……あの二人に『絶対に勝てる』って断言できる人、ここにどれだけいるのかしら?」

「「「……」」」

「ほら、そこで沈黙。なんだかんだ、みんな、心のどこかで認めているんでしょう? りおちゃんは普通に強くて……そして、ひなちゃんは……まあ、ひなちゃんについては私もよくわかっていないから、詳細な感想はやめておきましょう」

「……ありえねえな」


 唯一、反論したのは零士だった。

 相手がリーダーであることも気にせず、強く睨みつける。


「あんなガキが……浮ついた適当な連中が強いとか、ダンジョンでやっていけるとか、ありえねえだろ」

「どうして言い切れるの?」

「俺の経験だ」

「なら、大した経験は積んでいないみたいね」

「てめえ……!」

「でも……零士の疑問はもっとも。他のみんなの疑問ももっとも。だから……確かめてみない?」


 思わぬ言葉に驚いて、零士は言葉を止める。

 他のメンバーも……いや。

 フロアにいる全メンバーは、いつの間にか芹那の話に聞き入っていた。


「確かめるって……どうやってだよ?」

「簡単なことよ」


 芹那は楽しそうに言う。


「コラボよ」


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