15話 二人なら胃はちょっと平和
『ひなちゃん、今日も一緒に行こー!』
起きてスマホを確認したら、そんなメッセージが届いていた。
再びのコラボ。
私にコラボする価値なんて、道端の小石の欠片ほどもないんだけど……
「よろしくお願いします……と」
純粋に嬉しくて、私はそう返事を返していた。
――――――――――
学業を終えて、放課後。
ダンジョン用の衣服、装備を整えた後、ゲートに向かう。
ゲート前の広場には、すでにりおちゃんの姿があった。
私に気づくと、笑顔で駆け寄ってくる。
(やっぱり、わんこっぽい……)
「ひなちゃん、おはよう!」
「お、おはようございます……?」
「あ、もう昼過ぎだよね。でもでも、今日は初めてだから、やっぱりおはようで!」
「は、はい……」
「今日もありがと! 一緒に伝説を作ろうね!」
「で、伝説!?」
「あははは、冗談だよ。さすがにそこまでは。でも、それくらいがんばる、っていうことで!」
すごい元気だ。
でも、そんなところがりおちゃんの魅力なんだろうな。
ちょっと。
ほんのちょっとだけど、私も見習いたいと思った。
「じゃ、配信つけるね!」
りおちゃんが配信UIを操作すると、コメント欄が一気に流れ始める
>今日もりおひな!
>てぇてぇ
>このコンビ安定してきたな
>ひなちゃん今日も静かでかわいい
>がんばえー
>ひなちゃんのデビューはいつですか?
しません。
――――――――――
「ここは私に任せて!」
りおちゃんが二丁拳銃を構えて魔力弾を連射。
正確な射撃で魔物を次々と倒していく。
ただ、一匹、取りこぼしが出てしまう。
「……っ……」
地面を蹴り、拳を振り抜いて、そして停止。
魔物が魔石に変わる。
>今の見えた?
>無理
>俺の目は普通なんだ
>ひなちゃんって速すぎないか?
>スピード特化なのかな
>特化しすぎだろ
>今のランドタートルを一撃ってのも火力高いぞ
やめて、分析しないで。
私なんかを見ても楽しいことなんてないから。
「やったね、ひなちゃん! 今日、ほんといい感じだね!」
「そ、そうでしょうか……?」
「うん、息合ってるよ!」
そう言われると、なぜか胸の奥が少しだけむずむずした。
りおちゃんが突然、身を乗り出す。
「だから、コンビネーション攻撃を作ろうよ!」
「……は?」
「二人で一つの必殺技!」
>なるほど、わからん
>今日は必殺技回か
>それを言うなら特訓じゃ?
>本当にコンビになるな
>俺はそれでもいい
「む、無理です……!」
「えー!? なんで!?」
「だ、だって私、足引っ張りますし……うぅ、考えるだけで胃が……」
「ひなちゃん、全然足引っ張ってないよ?」
「……え?」
「むしろ、さっき助けられたし」
さらっと言われて、私は一瞬フリーズした。
否定されないなんて、いつ以来だろう?
「それにさ」
りおちゃんは、にこっと笑う。
「一緒にやるの、きっと楽しいよ?」
楽しい?
私なんかと一緒で?
否定材料を探すのだけど。
でも……なぜか見つからない。
「……れ、練習だけなら……」
「ほんと!? やったー!」
「う、うまくいかないかも、ですけど……」
「だいじょーぶ! 最初はそんなものだよ。簡単にコンビネーション攻撃を習得できても、それはそれで燃えないからね。やっぱり、たくさんがんばって苦労して、じゃないと!」
「そういうものなんですか?」
「そういうもの!」
よくわからない。
「でさ、私の中では、もう構想があるんだけど……」
すごくドキドキして。
胃が痛くて。
……でも、ちょっとだけ楽しみにしている私がいた。




