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12話 コンビ結成

 りおちゃんから連絡が来たのは、その日の夜だった。

 迷惑電話以外かかってきたことがないので、スマホを落とすくらい驚いた。


 メッセージを開くと……


『ひなちゃん! 今日ほんとにありがとね!

 明日、よかったら一緒にダンジョン潜らない?

 上層で、のんびり練習みたいな感じで。

 えへへ、ひなちゃんと組んでみたい!』


 組む、っていうことは……パーティーっていうこと?


 パーティ=会話が増える。

 会話=話が弾まないで無言。

 無言=嫌われる。

 嫌われる=終わり。


(……断ろう)


 でも、指が止まる。


 ……りおちゃん、楽しみにしているっぽい。

 断ったら悲しむかな?


「うぅ……うーーー……」


 迷って。

 ものすごく迷って。


『大丈夫です』と、一言返した。


 既読がついて、秒で返事が来た。


『やったーーー!

 じゃあ明日、ゲート前で待ち合わせしよ!

 時間は10時でいい? ひなちゃん朝弱い?

 私、めっちゃ元気!』


(朝弱いとかじゃなくて、会話が弱いです)




――――――――――




 翌日。


 ゲート前の広場は、朝から人が多かった。

 ダンジョンは『仕事場』であり『娯楽』であり『スポーツ』でもあるから、ここは繁華街みたいなものだ。


 私はできるだけ端っこに立つ。

 壁際、柱の陰、人の流れの外……陰キャの定位置だ。


「ひなちゃーん!」


 りおちゃんは今日も元気で、そして可愛い。

 さすが、アイドル系ダンジョン配信者。

 元気に一直線に駆けてくるところは、どことなくわんこを連想する。


「おはよー! 待った? ごめんね……って言いたいけど、たぶん私の方が先に来てた! ちょっとだけ、ひなちゃんのこと観察してた。えへへ♪」

「……お、おはようございます……」


 私はお辞儀した。

 お辞儀は万能だ。

 会話を代行してくれる。


「ひなちゃん。今日私ね、すっごく気合い入れてきたんだ!」


 りおちゃんは、くるっと回って見せた。

 動きやすさ重視の軽装の探索服で、それでいて配信映えもする色合い。

 そして、腰の左右にホルスター……二丁の銃が収まっていた。


 りおちゃんは胸を張った。


「じゃーん! 今日も二丁拳銃!」


 銃系武器は誰でも持てるものじゃない。

 魔力を撃ち出すタイプで、現実の火薬銃とは違うけれど……殺傷能力はある。

 だから、所持には許可がいる。

 適性試験、講習、実技、法令、心理テスト……どれか一つ欠けても落ちるし、全てにおいて満点に近い成績を叩き出さないとダメ、と聞く。


 つまり……銃を持っているだけで一定の評価がある。


「……す、すごい……」

「えへへ。でしょ? 頑張ったんだー。試験、めっちゃ大変だった!」

「ぱちぱち」

「でもね、選んだ理由はね!」


 りおちゃんは、びしっと指を立てた。


「かっこいいから!!」


 私は、なんか変な笑いが出そうになった。


 りおちゃんは本当に夢を見ている人だ。

 夢をちゃんと口に出せる人……ちょっとうらやましい。


「ひなちゃんは……拳で戦うんだっけ?」

「は、はい……魔力をまとわせて、こう……」


 シャドーボクシングのようなことをしてみせる。


「おー、かっこいい!」

「そんなことは……」

「でも、普通の武器は使わないの? パイルバンカーとかドリルとか」


(それは普通の武器じゃないと思います……)


 夢……ロマンが優先なのかな?


「えと……素手なら、いつでもどこでも……あと、使えないし、すぐ構えられるし」

「なるほど! 確かに」

「でも……たまに、アイテムボックスの道具も……使います」

「え?」


 りおちゃんがぽかーんとした。

 すでに配信しているらしく、視聴者さん達もざわついた。


>アイテムボックスってい言った、今?

>え、マジで?

>ボックス持ち!?

>かなりのレアアイテムだよな、あれ!?

>ボックス持ちだけで引く手数多

>トップクランにも所属できる、超々レアアイテム

>売ってもいいぞ。軽く億は超えると思う


 なんでみんな、そんなに騒いでいるのだろう……?

 すごい、って言われているけど、そんなことはない。

 私なんかが持っているくらいだから、ゴミスキルのはず。


「ひなちゃん……アイテムボックスを持ってるの?」

「……え、はい……?」

「すごいよ!? え、レアだよ!? 超レア!」

「そう……なんですか?」


 私の中では、アイテムボックスは『なんかいつの間にか手に入れいた』、という軽い認識だ。

 見慣れない魔物を倒した時、ぽろっと落ちただけ。


「アイテムボックスってね! 下層のボスのドロップで、しかも低確率で! それ持ってる人、上位の一部だけだよ!?」


(下層のボス……?)


 私は首を傾げた。


 私なんかが倒せるくらいだし……あれ、ボスじゃないよね?

 たまたま、ボスに似ていたとか、そんな感じのはず。


「なんか……運がよくて……」

「だいじょーぶ! 運も実力のうちだよ!」


 なにが大丈夫なんだろう?


「よーし! ひなちゃんと一緒なら、やれる気がしてきた! がんばるぞー!」

「……」

「ひなちゃん、ひなちゃん。ほら」

「え?」

「おー!」

「えっと……」

「おー!」

「お……おぉー……」


 笑顔のりおちゃんに引っ張られる形で、私もへろへろと手を空に向けて突き上げた。


 恥ずかしい、胃が痛い。

 でも……

 なんかちょっと、悪い感じはしなかった。

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