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醜い私を唯一愛してくれた親友は、家族を選んだ。だから私は世界を壊す  作者: panpan


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マツ②

マツ視点です。


 あれ以来……ロベリアは私の前から姿を消してしまった。

あちこち心当たりも探したし……ロベリアの写真を見せて人に聞いたりもしたけど……手がかりすら見つからない。

騎士団にも捜索願を出したけど……未だ連絡はない。


---------------------------------


「やっぱりいない……か」


 ロベリアがいなくなってから、私は定期的に彼女の家に赴いて掃除をするようになった。

いつか彼女が帰ってくるかもしれない……そんな根拠もない希望を抱いて。


「……」


 ここに来ると、無意識に思い出すことがある。

走り去ったロベリアを見失ったあの日……。

私は彼女が帰っていないかと1度、家の中に入った。

そこで見た光景は……今でも頭に焼き付いている。

床一面に散乱した料理や皿の残骸……引きちぎられた折り紙のアーチ……そして、破り捨てられた私とロベリアの思い出の写真達。

あの悲惨な光景を一目見た瞬間、私はようやく理解することができた。

ロベリアにとって友達記念日がどれだけ大切な日だったのか……私が来なかったばかりにどれだけ心が傷ついたか……自分がどれだけ無神経な言葉を口にしていたのか……。

自分が、どれだけ愚かだったのかを……。



「……」


 掃除の最中、私は懐から1枚の古い写真を取り出した。

それは出会って間もない頃の私とロベリアが初めて取ったツーショット写真。

初めてできた思い出だと、ロベリアが大切に持っていた写真だ。

それを1度目の掃除の際に、机の下で見つけた。

故意なのか偶然なのかわからないけれど……破られていなかった写真はこの1枚だけだった。

これを見ていると……いろんな懐かしい記憶が蘇る。


---------------------------------


 私は物心つく頃からかなり病弱で、自室のベッドで安静にする日々を過ごしていた。

それ故に私は同年代の友達が作れず、周りにいたのは家族以外は使用人だけ。

そんな私に転機が訪れたのは11歳の頃……。

病弱だった体はようやく人並みに整い、私は両親と共にとある島を訪れた。


『あの人……』


 島主に島を案内される最中、私は人の目を忍んで木の実や薬草を集めているロベリアを見かけた。


『島主様。 あそこにいる方は?』


『あぁ……あれは何年か前にこの島に流れてきた捨て子の亜人です』


『捨て子?』


『なんでも異種族特有の難病に掛かってるようでしてね。

一見老婆のように見えますが、実際の年齢は10歳かそこらのようです。

ですが……あの見た目と人見知りな性格で、島の大人達や子供達は鼻つまみものにしています。

マツ様もあの子には関わらない方が良いですよ?』


『……』


島主様にはそう言われたけど、私は気が付いたらロベリアに話しかけていた。


『こんにちは』


 もちろん初めは、すごく警戒された。

でも私自身のことを色々話していく内に、ロベリアも少しずつ自分のことを話してくれるようになっていき、いつしか姉妹のように仲良くなっていった。


『マツ……元気で』


『……』


 1年後……私は両親と故郷へ帰ることになり、ロベリアと別れの挨拶をした。

だけどロベリアが見せた悲し気な顔を見ると……私はさよならと言えなかった。

もっとロベリアと一緒にいたい……もっといろんな話をしたいと気持ちが強まっていった。

そして私は……決意した。。


『ロベリア、もしよかったら一緒に来ない?』


『えっ?』


『私、初めてできた友達とお別れなんてしたくない』


『私だって……マツと別れたくないよ』


『じゃあ……一緒に来てくれる!?』


『うん!』


 そして一緒に島を出てからずっと……楽しい時も苦しい時も、2人一緒だった。

私にとってロベリアは、かけがえのない友達……いや、家族だ。

なのに私は……そんな当たり前だったことを忘れ、結果的にロベリアの心を深く傷つけてしまった。

だからこそ……私はロベリアに謝罪し、きちんと彼女に向き合わないといけないんだ。


---------------------------------


 ロベリアが失踪してから2ヶ月後……。

私はフィナと一緒にランチを食べに町へと出ていた。


「フィナ、今日は裏道から行きましょう」


「わかった!」


 今日は大通りで珍しい品が並ぶ出店がいくつか立っているため、歩くことすらままならない。

なので比較的人が少ない裏道を通ることにした。


「ふんふんふふーん!」


親子2人で久しぶりの外食……フィナはステップでも踏むように足取りが軽やかだ。


「フィナはもう食べる物は決まってるの?」


「ハンバーグ!」


「そう、あそこのハンバーグはおいしいもんね」


「うん!」


 純真な笑顔を向けて来るフィナに私は笑顔で返す。

でも内心……未だ見つからないロベリアが気が気でならなかった。

せめて彼女の安否だけでも確認できれば良いのだけれど……それすらわからない現状が不安を加速させていく。


「お母さん、どうしたの? お腹痛い?」


 ふと我に返ると、フィナが心配そうに私の顔を覗きこんでいた。

あれこれ考えている内に……不安が顔に出ていたみたい。


「えっ? ううん。 なんでもないよ」


「……そう?」


 とっさに笑顔を作って否定したけど、フィナの顔は少し曇ったままだった。

感情に敏感な子供には、作り笑顔はあまり通用しないみたいね。

せっかくのランチなのに……この子に暗い顔はさせたくない。

そう思った私はフィナを安心させようと、小さな温かい手を優しく握る。


「お母さんは大丈夫だから……ね?」


「……うん!」


 お互いに気持ちを切り替え、歩き出したその時……。


「!!!」

 

 鉢合わせた顔に私は思わず足を止めた。


「ろ……ロベリア!?」


「まっマツ……」


 目の前にいるのは間違いなく……ずっと探していたロベリアだった。


「ロベリア……どこに行ってたの!?

ずっと探してたんだよ!?」


「……」


 無意識に口から出た問いかけにロベリアは何も答えてくれなかった。

ただなんとなく……バツが悪そうな顔をしているように見える。


「お母さん……あのおばあちゃん誰?」


 なんて声を掛けたら良いか頭を巡らせていると、私の手を引いてフィナが問いかけてきた。

そう言えば……フィナにはロベリアのことを話したことはあったけど、ロベリアが嫌がって直接顔を合わせたことはなかったわね。


「フィナ、この人はね? お母さんの一番のお友達なの」


「お友達?」


「そう……フィナにも話したことがあったでしょう?

お母さんのとっても大切なお友達……ううん、家族だよ?」


 フィナと話している内に、少し頭が整理できた。


「ねぇ、ロベリア……時間ある?

今から私達ランチに行くんだけど、良かったら一緒に……」


「……ふっ! 笑わせないでよ」


「えっ?」


 冷笑を浮かべたロベリアの言葉に、私は思わず聞き返した。


「お友達? 家族? 一体どの口がそんな戯言ほざいている訳?」


「ろ……ロベリア?」


「何? 娘と仲良くしている所を見せて、1人で生きている私を……煽ってるの?」


「そっそんなつもりじゃ……」


「私の事傷つけてそんなに楽しい? 私の事苦しめて……そんなに気持ち良い?」


「ごっごめんなさい! 気を悪くしたなら謝るから……本当にごめんなさい」


「もうどうでもいい……」


 立ち去ろうとするロベリアに背を向けられた瞬間、私の中の不安が爆発した。


「まっ待って!」


 私はフィナの手を離し……気が付くと両手でロベリアの右腕を掴んでいた。

このまま行かせてしまったら……ロベリアはもう私の手の届かない所へと行ってしまう。

そんな恐ろしい予感が……私の体と脳を支配した。


「離してよっ!!」


「お願い、ロベリア。 少しで良いから……話を聞いて!」


「あんたと話すことなんて何もない!!」


「うっ!」


 必死にしがみついたつもりだったけど……私はあっさりとロベリアに腕を振りほどかれ、しりもちをついてしまった。


「言ったでしょ? 2度と私に関わらないで!!」


 そう吐き捨てると……ロベリアはそのまま走り去って行ってしまった。


「ロベリア!!」


 名前を叫んでもロベリアは止まってはくれず、急いで追いかけようと立ち上がるも……。


「おっお母さん! 大丈夫!?」


「フィナ……」


 私の身を案じて駆け寄ってきたフィナに足を掴まれたことで、私は足を止めてしまった。

ロベリアを追いかけたい気持ちはあったけれど……泣きながら私の足にしがみつくフィナを置き去りにして行くことはできなかった。


「……」


 せっかく巡り会うことができたのに……私は”また”ロベリアよりもフィナを取ってしまった。

重くのしかかる後悔が……私の中の不安をさらに大きく膨らませ、私に問い掛けて来る。


 ”あなたはロベリアとフィナ、どちらが大切なの?”


 それに答えることは……私にはできなかった。


次話はロベリア視点です。

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