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醜い私を唯一愛してくれた親友は、家族を選んだ。だから私は世界を壊す  作者: panpan


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3/6

ロベリア②

ロベリア視点です。


「はぁ……はぁ……」


 どれだけ走ったか……どれだけ時間が経ったのか、よくわからない。

走ったことで少しは気が紛れたが、マツへの怒りは未だ沸々と心の中で熱を保っている。

私が記念日をキャンセルされてどれだけ傷ついたのかも知らずにヘラヘラと笑って心にもない謝罪を繰り返すあの態度が……お菓子だのケーキだのでご機嫌を取っておこうとするあの浅ましさが……憎くてたまらない。

信じていたのに……大好きだったのに……。


「……」


 ふと気が付くと、私は毎日のように入りびたっている街はずれの古びた書店の前に立っていた。

マツと過ごせない寂しさを埋めたいと思ってあちこち歩きまわって偶然見つけた店……。

ここは物寂しい雰囲気で人が全く寄り付かず、店主の爺さんはいつも店の奥で本を読んでいるか寝ているだけで私が立ち読みしていても注意1つしない。

お金もなく人と関わりたくない私にとっては唯一の憩いの場だ。

マツに心の傷をえぐられ、無意識に足がここに向いたんだ。


「……」


 私はいつものように、書店に入って適当に本を漁り始めた。

小説だの歴史書だの……種類は豊富だが、埃を被ったり表紙が破けていたりと本そのものが古い。

でも内容自体は割と面白いので私は気にならない……読書の間だけ、私は嫌なことやつらいことを忘れて自分の世界に逃げることができる。


「……?」


 何冊かの本を読み終えて、次なる本を探していた時……床の隅で一纏めにされていた古本の束に目が入った。


「失われし錬金術?」


 私は束の上にある置いてある1冊の本を手に取った。

別に錬金術なんて空想じみた実験に興味がある訳じゃない。


『そんな古い本、誰も読まんよ』


 前に書店の爺さんから言われた言葉が引っかかっただけ……誰も読まない本を読みたいというただの知識欲だ。


「……」


 本の内容ははっきり言って眉唾だった。

あらゆる物体を黄金にできる石とか……永遠の命が手に入る水とか……どれもこれも嘘ばっかり。

それでも適当に目を通してページをめくっていき……最後のページを開いたその時、私の目は留まった。


「人体……錬成?」


 そこに記されていたのは、様々な材料を用いて本物の人間を作り出すという今まで目を通していたどの錬金術よりも妄想じみた内容だった。


「錬金術で人間を作る?……馬鹿馬鹿しい」


 もちろん私はこんな妄想話を鵜呑みにはしなかった。

人間を作るなんて……できる訳がない。

私は本を閉じ、元の場所へと戻そうとした……その時。


 ”もしも本当に人間を作れたら?”


「!!!」


 脳裏によぎった”もしも”が本を置こうとした私の手を止めた。

もしも本当に人間を作ることができたら……私だけを見てくれる家族を作ることができたら……。

孤独と言う名の地獄から抜け出すことができるかもしれない。


「なっ何を考えているの? 私……」


 首を振って心の中からふっと湧いてきた願望を振り払うも……マツに裏切られた心の傷が、その願望を大きく膨れ上がらせていく。


「家族……私だけの家族……」


 家族と言う単語を口にした瞬間、脳内に流れるマツの顔。

私にとって唯一の家族だったマツ。

彼女との日々は本当に楽しくて、温かいものだった。

だけど彼女は……私を見捨て、娘を選んだ。


『記念日を楽しみにしていたロベリアには本当に悪いと思ってる。

でもどうかわかって……フィナを放っておくことはできないの』


『そういう訳だから……本当にごめんなさい』


 電話越しに聞いた優しく諭すようなマツの声が脳裏に蘇る。

いつもの優しい声……いつもの心地よい声……。

だけどそれは全部……娘のために言った言葉だ。

私のためじゃない……全部娘のためだったんだ。

どうせ今だって……やっかい者と縁が切れてよかったって夫や娘と一緒に喜んでいるに決まっている。


「……」


 私は再び人体錬成のページをめくる。

マツに捨てられ、私はまた1人だ。

でも……人のぬくもりや誰かと一緒にいる楽しさを知った今の私は1人で生きていけない。

だからといって……他人なんて信用できないし、そもそもこの見た目のせいで私に近づく人間はいない。

このまま孤独に浸って生きるくらいなら……妄想でもなんでもいい。

私は……私だけを見てくれる家族がほしい!


「やる……」


 私は人体錬成と言う名の小さな希望を胸に、無我夢中でページを読み漁った。

これが自然の摂理に逆らう行為である自覚がない訳じゃない。

だけど……私にはもう何も残っていない。

たった1つあった絆は、マツが全てぶち壊した!


「やってやる……」


 もちろん成功する保証は全くないし、そもそも成功例自体ない。

仮に成功したとしても……それが人間と呼べる生き物なのかすらわからない。

だけど……それでも構わない。

私は私だけを愛してくれる存在なら……化け物だろうが幽霊だろうがどうでもいい。

私はマツのように家族を決して裏切らない……。

作り物でもいい……。

私は本当の愛が……本当の絆がほしい。

ただ……それだけだ。

次話はマツ視点です。

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