228 悔しさと独裁
「うう…このパジャマで負けてしまうなんて…」
「ふふ、ミスコン優勝者の花音も私には敵わないみたいね」
「お気に入りのパジャマなのに…」
お泊まりをしている時にどちらのパジャマが可愛いか争った結果、僅差で麗沙が勝利した。それを受けて花音はかなりショックを受けていて、顔を下に向けて明らかに落ち込んでいる。
流石に放置できず、麗沙とその姉の沙奈が励ましの言葉をかける。
「まあまあ。こういうのは時の運とも言うしな」
「そうね。私もたまたま運良く勝てただけよ」
「せっかく柊に選んで貰ったのに…負けてしまうなんて…!」
どうやら花音は負けたことを悔いているよりも柊に選んで貰ったパジャマが選ばれなかったことを悔いているようだった。そうなってくると話が変わってきて、二人もどう慰めるべきかわからなくなる。
「そ、そうだったのか…」
「彼に選んで貰ったのね…」
「柊には可愛いって言われたのに…何がいけなかったんでしょう…?」
「「……」」
二人とも気まずそうに顔を逸らし、同じ言葉を心の中でつぶやいた。
((彼、そんなに女たらしなの(か)??))
彼女持ちの男が他の女の子にそういう発言をしている時点で大分女たらしではある。しかも花音は柊のことを愛しているため、彼の甘い言葉は余計に心に響いているだろう。全く厄介な男だ。
現にこの姉妹は彼のせいでかなり迷惑していて、花音の心を癒すことに苦戦している。
「(これ、どうしたら良いと思う?)」
「(さあ…花音は弟のことになると結構難しい性格だから…)」
「(解決策は今のところ無いか…)」
「うう…もう柊に顔向けできません…」
「「……」」
二人で目を見合わせる。そしてもう手段は選んでられないと判断し、沙奈が行動に出た。
「なあ花音、一つ提案がある」
「…なんですか?」
「明日私たちとショッピングに行かないか?」
「どうしてですか?」
ここで花音の心を震えさせる発言をしてこちら側に引き込もうとする。
「あなたは柊くんに可愛いパジャマ姿を見せたいわよね?」
「それはもちろんです!!」
「せっかくならサプライズで驚かせたくないか?」
「驚かせてドギマギさせたいです!!」
「ならするべきことはわかるわよね?」
「今すぐショッピングに行きましょう!!」
「いやもう閉まっいてるだろ…」
普段はお淑やかで気品のある子だが、弟のことになると急にバカになる。まあそれも彼女の可愛いところではあるけれど。少し厄介なので弟離れはいつになるのかと待ち望んでいたりもする。しかし花音が弟離れする未来は全く見えないからもう諦めた方がいいかもしれない。
まあいずれにせよとりあえず彼女の機嫌を取り戻すことができたので良しとして、一旦パジャマの話題はどこかに放り投げて別の話を始めることにする。
「細かいことは後で決めるとして、とりあえず何かしない?トランプならあるわよ」
「ババ抜きしたいです!」
「決まりだな。ちなみに最下位の罰ゲームは?」
「そうね…一位の人の言うことを聞く、とかはどうかしら?」
「いいですね!」
「面白そうだ。俄然やる気が出る!」
「決まりね。じゃあ準備するわ」
一旦パジャマのことは忘れて三人はトランプを始めた。
ちなみにこの中で一番頭が良いのは花音なのでこの日の夜は花音の独裁政権が始まったらしい。知らんけど。




