226 花嫁として
柊との関係が順調に進んでいる中、佳奈美は母にあるお願いをした。その内容とは__
「花嫁修行をしたい?」
「うん」
そう、結婚前に良い嫁になるために色々学ぶやつだ!でもそれは逆に疑問の種にもなりうる。
「え、ということはもしかして…もう結婚するの__!?」
「しないよ?」
「あれ?じゃあ結婚する予定が?」
「それはあるけど。だからお願いしてるのっ」
とりあえず事実を説明してあげた。しかし彼女は今年最大の驚きを露わにした。
「え!!??もうそこまで進んでいるの!?」
「そうだけど?」
「そ、そうなんだ…。ちょっと待って。頭を整理させて…」
かなり困惑しているようだ。でも家では彼女から訊かれない限りは彼との事を話していないから仕方ない。しかし理解してもらわないと話は進まないためひとまず彼女に理解するための時間を与えることにした。
「佳奈美はその…柊くんと結婚したいの?」
「うん!!」
「凄い笑顔…。そんなに彼のことが好きなんだ」
「好き…とはちょっと違うかな?」
「え??」
ここは自身の正直な気持ちを伝えておく。
「私は柊を愛してるから♡」
「…どうやら本気みたいだね」
「もちろん♡」
ちょっと引かれるんじゃないかと思っていたけど想像より彼女はすんなり受け入れてくれた。これが親というものなのかな?いや楓が特別恋バナ好きなだけかも。現に彼女は目をキラキラさせているし。でも親のこだわりなのかちゃんと威厳みたいなものを保とうとしている。
「そっか。佳奈美が選んだ人なら私は反対しないよ」
「ふふ、ありがとう♪」
「それにしても、まさか本気だったなんてね」
「え、もしかして遊びだと思ってたの?」
「まあ信じてはいたけど、やっぱり心のどこかでは心配してたんだ。彼に遊ばれてたらどうしようとか、一時の思いだけで将来を決めちゃわないかなとか」
親として真っ当な意見だと思う。高校生の娘が急に「彼と夫婦になりたい」とか言ってきたら心配にもなる。それは体育祭の後なので数ヶ月前の話だが、それから時間が経った今も気持ちが変わらないのなら信用できるということだろう。彼女なりに気持ちの整理をしてくれた結果だと思う。
でも不満は湧いて来る。それは今まで信じてくれていなかったという信頼の低さに対してだ。佳奈美はそれを表情と言葉で表した。
「私は最初から本気だもん」
「ごめんね。私もちゃんと最初から信じてあげればよかったのに。佳奈美を信じてなかったわけではないんだよ?」
「それは…わかってるけど」
「でもね、親はどうしても子供のことになると色々考えてしまうの。将来の事とかは特にね」
「……」
楓の言葉は佳奈美の魂に響いた。それは佳奈美自身も子育ての経験があるから。
佳奈美も前世では一人で娘を育て、導いてきた。その中で楓と同じように心配になることも多く、それは親として仕方のないことなのは知っている。なので佳奈美は小さく笑みを浮かべて楓のことを許してあげることにした。
「うん。それは…ありがとう」
「ううん。親として当然のことだよ。それに私、今はとっても嬉しいんだよ?あんなに小さかった娘がお嫁さんになるって言ってるんだもん」
その気持ちは痛いほど知っている。そしてこの後親がどういう行動を取るのかも知っている。
「だからね…今日から気合い入れて花嫁修行するよ!!」
「うんっ!!」
こういう時、親は何が何でも子供の願いを叶えようとする。つまり楓は佳奈美を最高の花嫁にするために本気になっている。それに佳奈美が共鳴すればそれは最強になる。
「まずは料理!彼の胃袋を完全に掴むよ!!」
「うんっ!!」
既に掴まれている柊の胃袋はどうなってしまうのか。それは神のみぞ知る。




