215 弟の不安
【さて、次にお邪魔するのはこちらのお店!あの大人気クレープ店の__】
「………」
「おはよ」
「おはよ〜。ご飯もうすぐできるからね〜」
「ああ…」
「………」
次の日。朝起きてリビングに入ると、ソファにボーッと座る花音の姿が目に入った。
朝起きて花音に挨拶をされないなんていつ以来だろうか。考えてみると数年前花音が高熱で寝込んだ時以来な気がする。
それを踏まえると今の状態は正常ではない可能性が高く、柊は瞬時に状況を察して花音の隣に腰掛けた。
「おはよう、姉さん」
「…あ、おはようございます…」
やはりこちらに気づいていないようだった。
花音がそこまでボーッとしてしまうなんて明らかにおかしい。流石の柊でも心配の心が湧いてくる。
「大丈夫か?もしかして調子悪い?」
「え、いやその…」
言いにくそうに口を塞いだ。
しかし姉が体調不良なのを放置するわけにはいかないので何とか聞き出しにかかる。
「姉さん。調子悪い時はちゃんと言ってくれ。じゃないと心配で学校どころじゃなくなるから」
「そうよ〜。私たちは家族なんだから遠慮しなくていいのよ〜?」
「…そう、ですね…」
沙也加がキッチンから援護をしてくれたおかげで花音が折れてくれ、少し気まずそうにしながら少しずつ話し始めた。
「実は…体調が優れなくて…」
「そっか。今日は学校休むか」
「そうね。今日はベッドで眠っていましょうか」
「ごめんなさい…」
二人の頭には?が浮かぶ。
「何で謝るんだ?」
「そうよ。最近色んなことがあってちゃんと休めていないのだから仕方ないわよ」
「ちょうど良いし今日明日ぐらいはちゃんと休んだ方がいい。てかそうしてくれないと心配で授業が頭に入らなくなるから頼む」
「それはいつものことじゃないの?」
「何で知ってんだよ」
「佳奈美ちゃんから聞いたわ♪いつも授業聞いてないって」
「…ごめんなさい」
「次のテストでいい点を取ったら許してあげる♪」
「ありがとうございます」
「…ふふ」
親子で会話を楽しんでいると花音もそれに感化されて笑みを浮かべた。そしてようやくいつもみたいな綺麗な声を聞かせてくれた。
「わかりました。柊のためにも今日はお休みしますね」
「ああ」
「後で学校に連絡しておくわね〜」
「ありがとうございます」
「いいのよ〜。それより柊、朝ごはん出来たわよ〜」
「腹減った〜。姉さんは食べるか?」
「いただきます」
「りょーかい。柊、お皿持って行って〜」
「はいはい」
とりあえず花音の体調不良が判明し、学校を休ませることに成功した。
だがしかし多少の不安は残る。今回花音は恐らく最近の夢のせいで体調を悪くしているのだが、もし体調不良の最中にまた同じような夢を見たらどうなるか。考えるだけでも怖くなってくる。
でも今ここで不安になったところで柊にはどうすることもできないため、ひとまず今できることだけは済ませておく。
「ちゃんと薬飲んであったかくして寝るんだぞ?最近寒いから身体冷やしたら余計に悪くなるし」
「はい。ちゃんと体調治して、またどこか遊びに行きましょうね」
「ああ。またカフェとか行きたいなー」
「そうですね。次の休みに行きましょうか」
「りょーかい」
「そのためにも、まずはご飯を食べて栄養を蓄えましょ〜」
「『食って寝れば大抵のことは何とかなる。』ってお父さんよく言ってるよな」
「ふふ、そうですね。じゃあたくさん食べてたくさん眠って、今日中に復活しますね!」
「やる気ね〜」
病は気から。心が少しでも明るくなれば苦しみも和らぐし治りも早くなるはずだ。今の柊にできることは少しでも花音の笑みを生み出すことで、家を出てからのの回復に賭けるのみだ。
しかしこれほど気持ちの強い人ならこんなことしなくてもどうにかしてしまいそうだからあまり意味はなかったのかもしれない。
いや、家族の笑顔に意味なんて必要ないか。花音が笑っていられるのであればそれ以上なんて存在しない。
そんな気持ちを抱きつつ、柊はいつも通りに学校に向かうのだった。




