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隣の美少女が元嫁にしか見えない  作者: くじょーさん


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213/229

213 父親とは…?


 彼の温かさに包まれる。その瞬間は記憶にない父親の心の温かさに守られているように感じられた。


(お父…さん…?)


 存在しないはずの記憶が頭に浮かぶ。自身の父親は雄一(ゆういち)以外いないはずなのに魂がそれを否定してくる。


 頭の理解が追いつかない。まだ夢は始まっていないはずなのに知らない誰かの記憶が浮かんでくる。


【お母さん、お父さんってどんな人だったの?】

【え?どうしたの急に】

【私ももうすぐ結婚するから、こういう話を聞けるのももうなくなっちゃうのかなって思って】


 結婚??そんなの全く経験ないはずだけど。

 でも夢の中にいる花音(かのん)の魂を宿した少女の口は本気でその言葉を告げていた。


【結婚式の時とかも、お父さんにちゃんと感謝したいから。そのためにも、お父さんのことたくさん知っておきたいな】

【ふふ♪あなたもお父さんの魅力に気づいちゃった?♪】

【そもそもあんまり知らないんだけど…】

【じゃあ早速!あなたのお父さんについてみっちりお話ししてあげるね♪】

【お手柔らかにお願い…】


 亡くなった父の話になるととても楽しそうに笑う母。


 いや、そんな母は知らない。沙也加(さやか)以外の母親なんて存在するはずがない。そもそも父親は今も生きている。

 でもその記憶は妙に説得力があって、花音の脳に母が直接語りかけてくる。


【お父さんはね…とっても優しい人だったんだよ♡色んな気遣いをしてくれるし、私の小さな変化にも絶対に気づいてくれるんだ♡】


 知らない父を語る母は楽しそうで、どこか懐かしそうで。でもその瞳の奥に悲しさが紛れているからどれだけ彼のことを愛していたかは容易に想像できた。


【例えば、新婚旅行に行った時ね♪私が旅の疲れで体調不良になってたんだけど、その時もすぐに気付いてくれて予定をずらしてくれたの♪そして早めに宿に連れて行ってくれて色々尽くしてくれたんだ♡あの時のお父さんはカッコよかったし頼りになったな〜♡】


 多分そういう惚気話が聞きたかったわけではないと思うのだけれど。でも母が楽しそうなのを見て自然と笑みが溢れる。


【もう、そういうのじゃなくて。お父さんはどういう人だったのかって訊いてるの】

【そう?ん〜…どういう人、かぁ…】

【一言で言うと?】

【そうだねぇ…温かい人、だったな〜】


(…!!)


 花音は目を開いた。


 それは夢の少女が聞いた温かさを現実で感じ取ったから。見上げてみるとそこには愛おしくて仕方なかった思うの顔があった。弟として可愛がって来た彼の背中には、夢で見た知らない父親の姿が重なってしまう。


(しゅう)…あなたは一体…)


 愛した弟には誰も知らないような隠し事があるのかもしれない。


 そんな憶測が浮かんできて、一人で不安になってしまう。


(やっぱり私、全然あなたのことを知らないみたいですね…。ずっとそばにいたのに…)


 全く確信はない。でもこの時だけは柊が遠くにいるように見えた。間違いなく隣にいるはずなのに。


 次第に柊の事がわからなくなって、気づけば手が震えていた。


(だめ…これじゃあ柊が怖いみたいじゃないですか…!私の柊は愛おしくて可愛くて守るべき存在なのに…!)


 心ではわかっている。でもどうしても知らない父のことが忘れられなくて、こちらが柊に守られる存在なのではと考えてしまう。そう、まるで柊の娘のような気持ちだった。


(柊…しゅう…おとう、さん…?)


 彼の名を呼ぼうとするが、もう何が何だかわからなくなってきた。


 そして気づけば彼の顔も見えなくなっていて、視界は徐々に暗闇に包まれていった。


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