211 前世の夢
「姉さん以外の誰かになる…?」
花音が悩みを打ち明けた直後、柊と沙也加は頭を悩ませた。
「それって毎日同じ人なの?」
「はい…」
「じゃあ偶然ではなさそう??」
「そうねー…。そんな話は聞いた事がないわ」
この中で一番人生経験豊富な沙也加ですらこんな話は聞いた事がないらしい。ならより一層花音の抱える悩みは疑問が増していく。
しかし解決をするには少しずつ疑問を解消していく必要があるので質問を重ねることにする。
「ちなみにどんな人?」
「ごく普通の母子家庭に生まれた少女、ですね…。亡くなった父のことをこよなく愛している母のもとで、普通の暮らしをしていました」
「なるほど…」
「情報が足りないな…。他に何か覚えてないか?」
「すみません…あまり覚えていなくて…」
「ん〜…」
あまり記憶がないのであれば原因などの特定は難しい。でも問題を解決しないわけにはいかない。これは思ったよりも難しいところである。
「でもその、同じ母が出てくるのは覚えていて…。同じ子の夢を見ているのは間違いないはずです」
毎日同じ女の子になる夢。それは現実的に考えたらあり得ないような話ではある。言うなればこれはファンタジー。普通では起こり得ない、まるで異世界の話だ。
柊はそういう幻想的な出来事に覚えがある。だって彼自身が前世の記憶を持ってこの世に生まれて来たのだから。それに恋人の佳奈美も柊と同じような境遇でこの世に生まれ、二人は結ばれた。
こんな絶対あり得ないようなことが現に起こってしまっている今、花音の話しは無碍にできない。むしろこれはある種のサインなのではという推測が浮かんでくる。
(もしかして俺みたいに前世の記憶が…?いやでも俺とは少し状況が違うな…)
柊は生まれた瞬間から前世の記憶を持っていたが、花音は高校生になってからだ。それに柊は鮮明に記憶を持っているが、彼女の記憶は曖昧だ。完全に同じパターンと断定するには相違点が多い。
しかしそもそも前世の記憶がある時点でかなりおかしいので人生の途中で前世の記憶が蘇って来ることもあり得る。
(断定するには早い気もするが…ほぼ間違いなく俺らと同じパターンだろうな…)
佳奈美だけに留まらず姉の花音にまで前世の記憶が与えられるとは。
(一体どうなってんだこの世界は…?)
柊の身近な人物が前世の記憶を持っている。つまりそれは柊の中に眠る魂に何かある可能性があるということ。
まあでもそれを考え出したらキリが無いので考えはしないが、一応頭の片隅にはお家解くことにする。それよりも今は困惑を抑えきれない花音本人に声をかけることにする。
「今の状況で原因を特定するのは難しそうだな…。まあでも、あんまり気にしすぎない方がいいと思うぞ?夢がどうであろうと姉さんは姉さんだし」
「柊…」
「いいこと言うわね〜♪」
柊も前世のことを考えすぎて自分を見失いそうになった事がある。その経験から花音を少しでも励まそうとする。
「それにその夢自体が悪いってわけじゃ無いんだろ?なら深く考えずに上手く付き合っていく方法を一緒に考えようぜ」
「…そうですね。考えて解決できるような問題でもなさそうですし、ポジティブに捉えるようにしますね」
「ああ」
一旦はこれでいい気がする。しかし少しずつ情報を集め、花音の前世について探ることにする。
もしかすると彼女もリオの身近にいた人物の可能性があるから。




