206 バレる夜事情
先生に言われた通り二人は生徒指導に向かった。
「し、失礼しまーす…」
恐る恐る扉を開いてみる。すると中から女性の声が聞こえて来た。
「来ましたね。二人ともそこの席に座ってください」
担任の女性教師が対面に座っている中、柊と佳奈美は彼女と対峙した。
「はい…」
「今回はどういった要件で…」
呼び出された瞬間は理由が理解できなかったが、今なら彼女の意図が理解できる。だがしかしまだ誤魔化せるチャンスはある気がするので一応とぼけておく。
でも現実はそんなに甘くは無くて、彼女は少し頬を赤くしつつ首筋の絆創膏に指を差して来た。
「その首、どうしたんですか…?」
少し気まずそうに指摘してくる。やはり教師もこの指導はどうすべきか迷っているのだろう。だがしかし遅刻して来たことは指導しないといけないのでかなり難しい立場だ。
まあでも二人からすれば彼女の悶々はあまり関係無いので指導を受け入れることにする。
「まあ色々ありまして…」
「色々というのは…?詳しく教えてください」
あれ。なんか彼女の目に好奇心が現れ始めたぞ。この人本当に指導する気あるのだろうか?
その答えはすぐにわかった。
「二人が昨日の夜ナニをしていたのか早く教えてくださいっ!!」
「……」
この人マジか。本当に教師か?
そう疑いたくなるが、これがまた本物の教師なんですよねぇ悲しいことに。
完全に自分の好奇心のために生徒指導室に呼び出されたことが発覚して柊は心の中でドン引きをするのだが、なぜか隣に座る恋人は真逆の反応を示していた。
「そ、それはその…色々です…」
「そこを詳しく…!!」
「無理ですヨォ…」
顔を真っ赤に染め、目線を明後日の方向に逸らしながら小さく答える佳奈美。普段なら余裕の笑みを浮かべながら会話を弾ませる彼女が珍しく恥ずかしそうにしている。
そんな普段とのギャップを見てつい心がドキッとしてしまうが今は彼女にドキドキしている場合では無い。とりあえずこの雰囲気をどうにかしないと。
「先生!!こんな話をするために俺らを呼び出したわけじゃないですよね!?早く本題に__」
「そうですよ?」
「え__」
よく聞こえなかったな。もう一回訊いてみようか。
「遅刻したことを注意するためじゃ__」
「ないですね」
「…まさか__」
「二人の熱い夜の話を訊く為に為に呼び出しました」
「……」
一旦牢獄に入って来て欲しい。
それぐらいの呆れが心に湧いて来た。しかし流石に教師相手にそんなことは言えないので黙って彼女らの言葉を待った。
すると数秒後に顔を真っ赤に染めた佳奈美が口を開いた。
「私たちの関係…やっぱりそういうことをしているように見えるんですか…?」
「はい」
「即答かい…。てかそんなにわかりやすいですかね…?」
「まあその首を見れば…」
「あー…」
どうやら佳奈美は不特定多数に柊との夜を知られるのが恥ずかしいみたいだ。だからこうして他に誰もいない時に教師に確認をしているわけだが、彼女は普通に肯定して来たので佳奈美は先程より恥ずかしそうに顔を隠し始めた。
「うう…もうお嫁に行けないよぉ…」
「俺が佳奈美を貰うから大丈夫だよ」
「柊…!!」
こんな状況でもイチャイチャを開始する二人。
流石の教師もビックリである。
「あなた達…それでバレないと思ってるんですか…?」
「え?」
「そんな簡単にイチャイチャできるカップルがそういう行為をしていないわけがないんですよ。誰でも気づきますよそれぐらい」
「〜〜っ!!??」
「……」
クラス、いや学校全体に全てが知れ渡っている可能性があることを知り、このバカップルは二人揃って赤い顔面を隠して恥ずかしさを露わにした。




