はちゃめちゃめします
◆◇◆◇◆
アミューズ1に行った次の日、私は登校していた。ちなみに私が通うのは、七里ヶ浜にある爽波高校。
「私、知ったんだよね――」
私は、ノートパソコンで、恋愛ゲーム『はちゃめちゃメモリーズ』を起ち上げる。
私は江の島電車に揺られながら、ノートパソコンの電源を入れた。
窓の外には視界いっぱいの水平線――今日も七里ヶ浜の海は、光の粉に輝いて、サーファーが遠くに見える。
秋の空は、昂く澄んでいた。
「こういう、男性がやる恋愛ゲームをプレイすれば、女の子とお出かけできるんだよ。そして恋愛レベルで女の子をデレさせられるなら、友達をデレさせるとか余裕っしょ!」
はちゃめちゃメモリーズは、メイド喫茶が舞台のゲーム。
登場する女の子と仲良くなると、一緒に出かけられる。女の子と遊びに行けるゲームとか、最高か?
「これで友練も完璧!」
え、「友錬ってなんだ?」って?
友達と遊びに行くシミュレートをする練習!
という訳で友錬開始!
「あっ、千代田 澪ちゃん~」
今日も私は、澪ちゃんに日本円を注ぐ。
今日の課金は、ビタンのバッグ。
これをあげると、澪ちゃんと、よくお出かけできるんだー。
『わぁーーー、鈴咲さん、嬉しーーー! こんなに高い物いいんですかぁ~?』
あっ、なるほど、プレゼントを貰ったらこんな風に反応したらいいのか。
あっ、選択肢が出た。
⇛もちろんだよ。
君の笑顔に乾杯。
やっぱ返して。
「流石に返しては無いから・・・ここはカッコよく、君の笑顔に乾杯」
『あははっ、鈴咲さん、おもしろーい!』
やった喜んでもらえた!
でも、今回はお出かけイベントは無しかぁ。もっと好感度を貯めないと。
と、ここで車内アナウンス。『次は七里ヶ浜、七里ヶ浜で御座います――』あっ、降りなきゃ。
さて、ここからがコミュ障にとっての血と汗と涙の時間――学校に裏門から入って教室へ、
「・・・・お、おはよう」
私が言いながら、教室に入ると緊張感が走る。
・・・う。
私ってば、配信者として、妙に有名人だから〝配信者様〟みたいな特別扱いなんだよね。
クラスの特殊枠で、なんかクラスメイトとの距離が遠い。
まあ私が、人間怖くて、近づけないっていうのも大いにあるんだけど。
人間ってお化けみたいに怖いんだもん。人を取って食うじゃん、あの生き物。
それでも、挨拶くらいはする。
だめだ空気が重い。
「涼姫、おはようございます!」
私がMPをガリガリ減らしていると、後ろから声。――私の友達が来てくれた! 助かった!
私、コミュ障だけど友だちがいるんです! フェイテルリンクのお陰でボッチは卒業したんです!
そんな私の友達の1人がこの方、八街 アリス! そう、一色 アリスの中の人!
イギリス生まれで、金髪、碧眼。モデルをやってる美人さん。
その美人の様相を例えるなら、青空の下で陽光に輝く、満開の金木犀。
そろそろ海開きも終る時期で秋だし、昂い空がよく似合いそう。
「アリスぅ」
人間が怖いコミュ障にとって、教室という人間の詰め物は、最早お化け屋敷。
私は、心のなかでクラスメイトに失礼をかましながら、不安からアリスに泣きつく。
今日はアリスが剣道部の朝練で、一緒に登校できなかったんだ。
寂しかったよぅ。
私が抱きつくと、アリスがなでなでしてくれた。
「涼姫は毎日、大変ですねぇ」
アリスが、窓際の席まで手を引いてくれる。
窓の外は海と空で青一色。今日は雲一つない快晴。この辺りは海に浮かぶ島も無いから本当に、青一式。
この学校、景色は良いんだよなぁ――ただ立地条件が、ステータスを輝きに全振りしてるせいで発生している問題がある。すなわち陽キャが多すぎ問題。
アリスが、私の前の席の子(今は廊下側で友達と談笑している)に「天瀬さーん、椅子、借りていいですかー?」と尋ねる。
流石のアリスの心遣い。教室に自分の席しか場所のない私みたいなボッチは、自分の椅子を勝手に使われると行場を失い、さすらいの旅にでないといけなくなる。天瀬さんには友達いっぱいいるけど。
ジュースとかを買いに――てかもう、椅子の使用料としてパックジュース代くらい置いといて・・・・そしたら私が朝いなくて、椅子を借りていいか聞けなかった感じでも、旅費にするから。
天瀬さんから「いいよー」という返事が返ってきた。
アリスが「ありがとうございますー」と返したので、私も会釈でぺこり。アリスが椅子を借りたのは、私と話すためだから、私もお礼を言わないと。
私が視線をアリスに戻すと、アリスが〈時空倉庫の鍵〉という、どっか別次元と繋がっている道具袋から何かを取り出した。ちなみに〈時空倉庫の鍵〉の本体は透明な腕輪型。
「あっ、涼姫これ、体育館土産の爽やか炭酸です」
どうやら渡り廊下の自販機で、炭酸ジュースを買って来たらしい。
ちなみに以前、この学校がこの炭酸ジュースの宣伝CMの撮影で使われたから、このジュースが自販機に追加された経緯がある。
CMの主演は眼の前の八街 アリス――つまり一式 アリス。私はCM撮影で彼女を見て、心を射抜かれた。高校生になって、アリスと私が言葉を交わす前のできごと。
んで、私がフェイテルリンクの世界でパイロットしてたら、アリスが「スウさん、操縦技術が凄すぎます!」って友達になれた。――でも、あの頃の私は、友達になっての告白で「OK」を貰わないと友達になれないって思い込んでたから、友達だって気づいてなかったんだけど。
アリスがCMに出てたこのジュースは、私の大好物。
そうだ、丁度プレゼントを貰ったし、アレをやろうかな。さっき澪ちゃんに教えてもらった、プレゼントを貰った時の話術。
「わぁーーー、八街さん、嬉しーーー! こんなに高い物いいんですかぁ~?」
アリスが頭上に「?」を生やし首を傾げた。
「あははっ、八街さん、おもしろーい!」
アリスが、少し慌てた。
「あ、あの・・・・どどど、どうしたんですか?」
「あ・・・・あれ?」
何か違うみたいだ。




